魔法の言葉
上司に言った。
「この会社、辞めます。」
上司は眉間にシワを寄せた。
「辞めたいっていわれても・・・人が少ない現状を見て何も思わないの?もっと周りのことを考えてよ・・・。」
「・・・分かりました。」
それから丸一年。自分以外に4人、職場の人が辞めた。しかし、誰も新しい人は入ってこない。結果的に、自分一人の負担が増えるばかりだ。
上司に言った。
「さすがに手が回りません。自分だけではないです。負担が増えすぎて体調を崩す人もいるんですよ。人員をひとりでも増やしてほしいです。」
上司は頭を抱えた。
「人を入れたいのは山々なんだけど、厳しいんだよね・・・。今は働き手がいない時代だから。・・・この人数で、やるしかない。」
「やるしか・・・ない。でも、このままだと現実的に考えて本当に厳しいですよ?」
「・・・うん、やるしかない。」
仕事終わりに、いろいろたまった愚痴を話すついでに、職場の先輩に聞いた。
「よく、この状況で文句言わず働けますね?」
「ハハッ。まあ、やるしかないからね。」
トイレでたまたま出会った、今となっては数少ない同期に聞いた。
「人が少ない中、何でそんなに頑張れるの?」
「え?・・・やるしかないから。」
やるしかない。人を動かす原動力。魔法の言葉。でも、俺には・・・。
その日、意図せずに涙が流れた。
このままじゃ、精神も体もどうにかなってしまう・・・・と、東京に出かける。
しかし、休めたものではない。駅、ショッピングモール、普通の道路。どこに行っても、人。人。人。
通行がままならないほどに、いっぱいいる。
「これが少子化?働き手がいない時代?嘘だろおおおおおお!!!うんざりするほどいるじゃんかよおおおおお!!!」
心の中で叫んで、その日は終わった。
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「早く辞めたいなあ。」
体の節々が痛い朝、また思った。
「とりあえず今日は、やるしかない。」
そうして、また、出勤していく。
読んでいただき、ありがとうございました。




