通報者
110番の通報があり、新米警官である私は現場へ向かった。
壁に激突したためか、乗客は即死。車はぺしゃんこだ。カーブが急な場所であるからだろうか、スピードを出しすぎて曲がりきれなかったのだろう。
通報者は、派手なオレンジ色のワンピースを着た、若い女性だった。顔とスタイルが良く、まるで女優のような人だった。
「美しい・・・。」
「はい?」
「すいません、なんでもありません。それで、どういった状況だったのでしょうか?」
「日課の散歩をしていて・・・それでここを通りがかった時に・・・。」
状況を聞く限り、事件性はほとんど感じられなかった。運転手の不注意で起きた事故に違いがないが、ただ、謎のモヤモヤが私にはあった。目撃者であり、通報者である、その女性の、異様に慣れたような対応に。
「それでは、あなたのお名前と電話番号を。」
「めどう・・・さとみ。」
「すいません、書いていただいてもいいですか?」
「・・・はい。」
なるほど、目堂里美〈めどう さとみ〉さんか…特徴的な名前だな。しかし、やはり気になるのは、事情聴取の、このテンポの良さである。何一つ戸惑う様子がない。警察の対応に慣れている。
「これで事情聴取は終わりですよね?」
「ええ、まあ・・・はい。」
「何か言いたげですがどうしましたか?」
「いえ、その・・・何でもないです。」
「分かりました。それでは!」
振り返り歩みゆく彼女から、金木犀の香りが漂ってきた。
ーーーーー
署に帰って、調べてみて驚いた。
私の違和感は合っていた。今までに同じ場所で3回同じ事故。通報者も同じ、目堂里美。
なんか怪しい。何かがおかしい。何かを私は見落としているかも。ただの事故ではなく、これは事件の匂いが・・・。
もう一度、目堂里美に会って話を聞こうと思い立ち、翌日、電話で連絡をとり、例の場所で待ち合わせることにした。
ーーーいた。
あの日と同じ格好。オレンジ色のワンピースを着て、曲がり角に立っている。
こっちに気がついて手を振っている。それにしても、なんて綺麗なんだ。見とれてしまう。仕事に支障が出てしまうほどの美しさ。
ーーーーあ、左右に振っている両手を下ろした。
ーーーーワンピースの裾を掴んで・・・。
ーーーーめくった!?!?!?!?!?
美しい彼女の大胆な行動に、もう、私は視線が離せなかった。
微笑む彼女が何か喋っている。
ーーーーま
ーーーーえ
ーーーーま
「え?ま・・・え・・・前!?」
「ドン!!!」
気がついた時にはもう遅かった。
熱い体。閉じる瞼。漂ってくる金木犀の香り・・・。
読んでいただき、ありがとうございました。




