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【1章完結】過去と未来を視ながら君を助ける  作者: 川島由嗣
1章 好きな子が死んでしまう!!
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第7話 討伐

数ある作品から本作品を見ていただき本当にありがとうございます。

初連載作品です。

よろしければ読んでいただければ幸いです。

「私は先日、柳に報告を受けました。恵那の状況は悪くなる一方で、このままでは命も危ないと。」

「そうだね。ここ数日で体調が急変している。私も心配しているし手を尽くしている。」

 工藤さんのお父さんも頷く。その顔が一瞬だけ辛そうな顔をした。あれが本来の彼の顔なのだろう。工藤さんは柳さんを睨みつけた。


「その件で柳の方に治す伝手が見つかるかもしれないかもしれないと言われました。」

「・・・本当かい?柳。」

「・・・はい。」

「ただ、それは裏家業の伝手だと。代償が必要になると。」

「代償?」

「相手は裏家業の人だから、覚悟が必要だと。その・・・私の身体を要求される覚悟もいると。」

「・・・・・・。」

 工藤さんのお父さんはその言葉に怒りもせずじっと工藤さんを見つめた。そして柳さんに視線を移す。

「っ!!」

 健吾が怒りで叫びそうになるのを手で抑える。やはり昨日言わないで正解だった。健吾が制御できなくなったら終わりだ。


「柳・・・。そんな報告は私は受けていないが。何か申し開きはあるかい?」

「はい。確かに私はそのような話をお嬢様にしました。細部は異なりますが・・・。ですが、お嬢様の身体を差し出せとは言っておりません。どんな事があるかわからないとお伝えしたのみです。」

「そんな!!私には!!」

「詩織。黙りなさい。今は柳の話を聞いている時間だ。公平に意見を聞かなければ意味がない。続けなさい。柳。」

 工藤さんが反論しようとしたが、工藤さんのお父さんに一喝されて黙らされる。


「はっ。旦那様に報告をしなかったのはお嬢様に話をしたうえで旦那様に一緒に提案させていただこうと思っていました。」

「ふむ・・・。まあ順番が誤っているのは責めるべきだが・・・。詩織。その言葉だけで柳を罰することは出来ない。わかるね。言った・言わないでは意味がないんだ。もっと柳が悪だという証拠が必要だ。それは何かあるか。」

「・・・・ありません。」

 工藤さんが辛そうに俯く。その時柳さんの口角がわずかに上がった。勝ったと思ったのだろう。工藤さんのお父さんが深いため息をついた。


「それなら」

「証明できますよ。」

 工藤さんのお父さんの言葉を俺が遮る。全員の視線が俺に集まる。ここからは俺の出番だ。


「君は・・・時見君だったね。柳とは初対面だったと思うが。」

「こちらにも独自の情報網がありましてね。そのために本日私がきたのです。まずは私の話を聞いていただけませんか?公平に意見を聞く必要があるんですよね?」

 さっき自分で発言した手前、否定することはできないのだろう。工藤さんのお父さんは苦々しく頷いた。


「・・・・聞こう。」

「ありがとうございます。まず私がお話しするのは工藤さんのお話を支持するものではありません。」

「どういうことだ?」

「工藤さんと柳さんは2人きりで話したはずです。その内容について追及しても同じように言った・言わないという話になるので証明は不可能です。」

「それでは君は何を証明するんだ?」

「柳さんが悪事を働いている事の証明です。まず前提です。工藤さんの妹さんは難病とのことですが、そもそもすぐ亡くなるような病気でしたか?」

「いや・・・・そんなことはなかった。だが体調が急変することはあるだろう。」

「そうですね。ではもう一つ。妹さんに医者からの薬を渡していたのは誰でしょうか?」

 工藤さんのお父さんがハッとして顔をあげる。柳さんの方を見る。


「柳・・・。恵那に薬を渡していたのは誰だ。」

「・・・・・・私です。」

「その時に体調を崩すような薬を渡して飲ませたらどうなるでしょうね。」

 俺以外の全員の顔色が変わる。特に柳さんの顔が強張っている。


「それこそ証拠なんてない!!冤罪です!!」

 柳さんが声をあげて叫ぶ。工藤さんのお父さんもじっとこちらを見つめてきた。圧がどんどん強くなっている。正直言って本当は逃げたくて仕方がない。だがここで逃げたら工藤さんが一人ぼっちになる。その時に健吾が俺の肩をポンと軽く叩いた。思わず健吾を見る。健吾は笑っていた。一気に力が抜ける。自分が1人でないというだけでこんなにも心強い。俺は落ち着くように一度深呼吸をした。


「・・・・・そこまで言うのなら証拠はあるのかい?」

 俺は頷き、片手を工藤さんのお父さんに向けて上げ、指を3本たてた。

「もちろんです。3つの証拠があります。1つ目。妹さんにここ最近薬が変わったかを聞けばいいんですよ。」

「・・・・それはそうだが、正直今の恵那に薬の違いが判るとは思えない。特に錠剤となったら見分けつかないだろう。」

 それはそのとおりだ。彼女にとっては薬を飲むのはいつものことだ。色々な薬を処方されていただろうから、見せてもわからないだろう。


「そうですね。では残り2つで証明しましょう。10分もかかりません。まずは皆で柳さんの部屋に行きましょう。柳さん。もちろん問題ないですよね?柳さんにとっても否定されているのですから。ないという証拠にもなりますし。」

「・・・・・ええ。問題ありません。ですが、このような言いがかりに旦那様を付き合わせるには」

 工藤さんのお父さんは柳さんの言葉を手で遮った。

「構わん。10分もかからないのであれば問題ない。」

 柳さんの顔が強張ったが、すぐに平静な顔にもどり頷いた。


「では皆さん移動をお願いします。護衛の方は万が一にも柳さんが逃げないようにしてくださないね。工藤さん。柳さんの部屋に案内してくれるかな。」

「え・・・・ええ。」

 工藤さんを先頭に、皆で柳さんの部屋の前に移動する。そして皆で柳さんの部屋に入った。部屋は使用人の部屋というには広く、中のものも綺麗に整頓されていた。潔癖症と言われても納得するぐらいの綺麗さだ。恐らく執事としてはかなり優秀な部類なのだろう。


「それで残りの2つの証拠というのはどこにあるというのでしょう。貴方はここに入るのは初めてだと思いますが。」

 歩いている間に余裕を取り戻したのか、柳さんは平静を保っている。だが俺はにやりと笑った。

「残念です。ここに連れてきたのを許可した時点で貴方の負けは決まっているんですよ。」

「!!」

 そう。未来を辿る時に柳さんの部屋に来るまでの道のりが一番苦戦した。


「さて、証拠をお出しします。まず護衛の方私が何をしても柳さんが邪魔をしないように腕をつかんでいていただけますか。」

「・・・・・」

 護衛の2人は判断を仰ぐように工藤さんのお父さんを見る。工藤さんのお父さんは俺をじっと見ていたが、一度ため息をついて頷いた。


「私としては柳を信じたい。だが念のためだ。腕を抑えておけ。」

「「はっ」」

 護衛の2人が柳さんの腕を掴む。柳さんは抵抗をしなかった。信じたいと言われて抵抗するわけにはいかなかったのだろう。俺は柳さんが拘束されたのを確認すると、部屋の奥にある机に向かい、机の一番下の引出しを開ける。そして中に入っていた金庫を取り出した。柳さんの顔が再び強張る。


「何故それを!!」

「こちとら工藤さんの助けができないかずっと調査をしていたんでね。」

 そう呟いた後、慌てて思わず口を抑える。口を滑らして未来に言ってない事をつぶやいてしまった。未来は変わっていないのを確認して安堵する。それ以上余計なことは言わず、ボタンを入力し金庫を開ける。中には複数の鍵が入っていた。


「何故番号を知っている!!」

 柳さんの仮面が完全に剝がれている。俺はそれには答えず、金庫の中から2本の鍵を取り出した。そしてそのうちの一本を机の一番上の引出しの鍵穴に差し込む。誰も理解が追い付いていないのか一言も発さなかった。俺は開けた引出しから小さな紙袋を出し中身を出す。中身は錠剤だ。


「これの成分を調べれば毒性があることがわかります。妹さんにこれを見せてもいいでしょう。これが証拠2です。」

「・・・・わかった。あずかろう。」

 薬を工藤さんのお父さんに渡す。柳さんは顔面蒼白になっている。だが工藤さんのお父さんはまだ渋い顔だ。未だに信じたくないのだろう。


「これに毒性があったとしたら、問題だが、恵那に渡したとは言えない。」

「毒性と妹さんの症状を医者に見せれば確実でしょう。」

「確かにそれはそうだが・・・・。もう一つの証拠はなんだ。」

「そうですね。それを見せるのが確実ですね。それは柳さんの日記です。」

「!!!」

 もう全て知られていると確信したのだろう。柳さんの顔色が完全に変わって暴れだした。護衛が2人係で必死に抑えつける。それを横目に、俺は壁際にある本棚に近づき、本棚の一部を横に動かす。


「「「!!」」」

 そこにはもう一つ金庫が置かれていた。俺は持っていたもう一本の鍵を金庫に差し込んで開ける。金庫の中には数冊のノートがおいてあった。

「これです。ここに、柳さんの日記があります。多少ぼかして書いているのもあると思いますが、後で確認していただければ。妹さんに毒を渡していることも書いています。これが証拠3です。」

 工藤さんのお父さんは金庫にあるノートを開きペラペラとめくる。そして深い溜息をついた。


「・・・・・柳。何か申し開きはあるか。」

「一つだけ・・・・教えてください。」

 柳さんは絞り出すようにつぶやいた。そして俺を睨みつける。


「貴方は・・・いったい何者なんですか?」

 皆も同じ疑問を持ったのだろう。全員の視線が俺に集まる。俺は肩をすくめる。

「情報収集が趣味のただの高校生ですよ。」

「ふざけたことを・・・。一介の高校生がこんなことができるわけない・・・。」

「別に俺1人でやったとは言ってませんよ。ただの高校生と思ったのがあなたの敗因でしょう。」

 全ての事を話す必要はない。勝手に妄想してくれた方がこちらの方が都合がいい。柳さんはがっくりと肩を落とした。諦めたのだろう。それを見て工藤さんのお父さんも深いため息をついた。


「柳には詳しく事情を聞く必要がありそうだ。拘束して別の部屋に軟禁しておけ。」

「「は!!」」

 護衛達は柳さんを連れて部屋を出ていった。それを確認すると工藤さんのお父さんは俺の方に向き直った。

「君達にはお礼と少し話がしたい。客間に戻ってもいいだろうか。」

「ええ。」

 頷く。とりあえず妹さんの危機は去ったので安心だ。

読んでいただきありがとうございました。

他にも短編を投稿しておりますので、よろしければ読んでいただければ幸いです。

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