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【1章完結】過去と未来を視ながら君を助ける  作者: 川島由嗣
1章 好きな子が死んでしまう!!

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第3話 お願い

数ある作品から本作品を見ていただき本当にありがとうございます。

初連載作品です。

よろしければ読んでいただければ幸いです。


 健吾が電話して20分後、教室の扉が開き工藤さんが教室に入ってきた。

「お待たせ。ごめんね。時間がかかっちゃって。」

「いいよ。全然急いでないから。」

「急にどうしたの?って時見君?2人して何かあったの?」

 名前を覚えてくれていたのは嬉しかった。だがそれを噛み締めている暇はない。これから工藤さんに信用してもらわないといけない。


「ああ。実は翔のやつが詩織に話があってね。」

「ごめんね。急に呼んだりして。」

「それはいいけど・・・・。あ、せっかくだから話の前に時見君にお礼が言いたいな。」

「お礼?」

「うん・・・。いつも私が怪我しそうになった時や、危ない目にあいそうな時に助けてくれてありがとう。」

 工藤さんは俺に向かって頭を下げた。俺は手を振る。


「いいんだ。俺が勝手にやった事だから。気にしないで。」

「本当はもっと前に言いたかったんだけど、休み時間は時見君いつも寝ていたから・・・・。」

「そうだね・・・。ごめん。」

 休み時間は大体他人の過去・未来を視ることに使っていた。後は健吾と話すくらいだ。工藤さんが話しかけられないのも仕方がないだろう。


「それで話って?」

 工藤さんが不思議そうに首をかしげる。ギリギリだが説得できる未来は固定できた。後はそれを辿るだけだ。失敗は許されない。気合を入れる。


「唐突に変なことを聞いてごめんね。工藤さん、妹さんの事で窮地に陥ってない?」

「!!」

 工藤さんの表情が強張る。そして俺らから数歩後ずさった。いきなり自分のプライベートの事に踏み入れられたのだ。怖がるのも仕方がない。

「断っておくけど、工藤さんの事を嗅ぎまわっているわけではないよ。ちょっと独自の情報網を持っていてね。それで偶然知ったんだ。妹さんが難病でこのままだと長くないって。」

「・・・・・・」

 工藤さんが不安な目で健吾を見る。信用できるか判断できないのだろう。健吾は力強く首を縦に振った。


「こいつは詩織を付け回すとかするような奴じゃない。馬鹿正直にお前を助けたいと思っているだけだ。俺が保証する。」

「健吾・・・。」

「先に一旦俺の話を聞いてほしい。信じられなかったらそれでいいから。」

「・・・・わかったわ。」

 工藤さんが不安そうに頷く。とりあえず聞いてもらえる事になった。


「工藤さんは、先日妹さんの難病の件で、貴方の執事からある取引を持ち掛けられた。」

「!!なんで知っているの?」

 工藤さんの顔が再び強張る。それはそうだろう。2人きりで話していたはずの内容を知っているのだから。ただ素直に未来を視ましたと答えるわけにはいかない。


「ごめん。それは独自の情報網で知りえたから企業秘密で。重要なのは、2点。妹さんの命のリミットが近い事。そして執事の言う取引は嘘だということ。」

「・・・・どうして断言できるの。」

「こちらの情報網では、今回の執事の取引は貴方の身柄を手に入れるためのものだ。貴方が取引をしている間に妹さんは間に合わず亡くなることになる。だから妹さんが亡くなる前に助けたい。」

 工藤さんが怪しげな顔でじっとこちらを見ている。信じていいのか悩んでいるのだろう。俺は健吾をちらりと見る。それで察したのか健吾は力強く頷いた。


「繰り返すが、俺はこいつを信用している。だから俺の言葉だと思ってくれていい。」

「その情報網に健吾は関わっているの?」

「いや。俺もその情報網に何度も助けられたんだ。詩織もそうだろう?怪我しそうになった時や、危ない目にあいそうな時にこいつが助けてくれたことがあったはずだ。」

 思い当たるふしがあったのだろう。工藤さんの表情が少し柔らかくなった。


「確かにそうだけど・・・。その話が本当だとして私は・・・貴方に何をすればいいの?」

 不安そうに瞳が揺れている。助ける代わりに見返りを求められると思ったのだろう。俺は首を振ってできる限り優しく微笑んだ。


「何かを求めているんじゃない。俺は工藤さんを助けたい。ただそれだけなんだ。」

「え?」

 意外だったのだろう。工藤さんは呆気にとられた顔をしてこちらを見ている。だがこれは未来を視れるとは関係ない。俺の本心だ。好きな人には笑っていてほしい。ただそれだけなのだ。


「見返りなんていらない。ただ助けたいんだ。」

 工藤さんは意外そうな顔をして健吾を見ている。健吾は苦笑している。

「こいつはこういうやつなんだよ。馬鹿正直でお人好しなんだ。」

「失礼な。助ける人間は選んでいる。俺が助けるのは健吾と工藤さんだけだ。」

「どうして・・・・私を。」

「それは・・・妹さんが助かったら教えるよ。」

 貴方が好きだからなんて言えるわけがない。健吾がこちらを見てにやついているので殴りたくなるのを必死に我慢する。工藤さんはまだ少し不安そうだったが、妹さんを助けたいのだろう。決心したように一度頷いた。


「えっと・・・。それじゃあ妹を助けてください。お願いします。」

 ぺこりと工藤さんが俺に向かって頭をさげた。ほっとして力が抜けそうになるのを必死に耐える。

「うん。こちらこそ信じてくれてありがとう。」

「それで・・・・私は何をすれば。」

「まず、工藤さんに取引を持ちかけた執事を直接見たい。こちらの情報網の網にかけたいんだ。今日迎えに来させることとかできるかな?」

 執事の『履歴書』を取得できれば、一気に情報の幅が広がる。そこから執事を取り押さえる未来を見つけ出すのだ。


「できるけど・・・。それだけでいいの?」

「ああ。それで俺の情報網を総動員して調べる。そして明日中にけりをつける。」

「恵那を治すことができるの!?」

 工藤さんが期待した目をこちらに向ける。だが俺は静かに首を振った。


「いや、期待させて申し訳ないけどそれは無理だ。妹さんの病気は難病だ。1日、2日でなおるものじゃない。」

「だったら・・・・。」

 意味ないのではと言いかけた工藤さんを手で制す。

「だが、彼女の命を奪おうとしているものを止めることはできる。」

「「!!」」

 工藤さんだけでなく健吾の顔も強張る。


「最近妹さんの体調が急激に悪化しただろう。」

 工藤さんはハッとしたように顔をあげる。

「まさかそれが!!」

「そう。仕組まれたものだ。早く防がないと妹さんはあと1カ月のうちに亡くなる。それを防ぐ。」

「いったい誰が!?」

 工藤さんが一気に距離を詰めてくる。再び手をあげて彼女を制す。


「悪いけど、下手に教えて警戒させたくない。辛いだろうけど明日まで待ってくれ。間違っても執事さんとかメイドさんにカマをかけたりしないでくれよ。」

「そんな・・・・。」

 自分の周りにそんな悪意をもった人間がいると思わなかったのだろう。泣きそうな顔になる。


「すまない。だがここで相手を逃がすわけにはいかないんだ。元凶を取り除かないと意味がない。一つずつ解決させてくれ。だからまずは執事さんを呼べるか聞いてみてもらえるか?」

「そうね。わかったわ・・・。」

 工藤さんは頷いて携帯を取り出し、どこかに電話し始めた。少し会話して通話を終わらせる。


「裏門に来てくれることになったわ。」

「ありがとう。警戒させたくないから俺は校舎から執事を見る。」

 執事の『履歴書』をストックするためには直接この目で執事を見ないといけない。だがそれで警戒させるわけにはいかないのだ。今は会わないほうがいいだろう。工藤さんに帰宅の準備をしてもらいつつ、俺らは裏門を見える位置に移動し始めた。

読んでいただきありがとうございました。

他にも短編を投稿しておりますので、よろしければ読んでいただければ幸いです。

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