第1話 好きな子が死んでしまう!?
数ある作品から本作品を見ていただき本当にありがとうございます。
初連載作品です。
よろしければ読んでいただければ幸いです。
「恵那・・・助けられなくてごめんね・・・・。私もそっちに行くね・・。」
ここは学校の屋上。目の前で女の子がフェンスの向こう側に立っている。次の瞬間視界から消えた。その直後嫌な音が聞こえ、悲鳴などの叫び声が聞こえ始めたと思ったら視界が暗転する。
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「は・・・・!!」
「どうした?」
目を開けると目の前に健吾の顔があった。そうだ今は放課後だ。クラスの皆はもう帰ったようだった。健吾だけが俺を待ってくれていたようだった。
「・・・なあ健吾。好きな女が将来死ぬと知った時、命を懸けて助けようとするか?」
「助けるな。」
「即答か。相変わらずかっこいいなあ・・・。」
俺は自分の机に突っ伏す。健吾はサッカー部のエースだ。ファンクラブもあり、よく告白されている。サッカーに集中したいからと断っているようだが。なんでそんな奴が俺の友人でいてくれているのかは不明だ。
「それで?詩織に何か危機が迫っているのか?」
「別に工藤さんの事だとは言ってないんだけど・・・・。」
工藤さんはとても美人で学校で知らない人はいない。セミロングの黒髪。モデル並みのスタイル。人当たりもいい。大企業の社長の娘でもあり皆の高嶺の花だ。実は俺も片思いしている。
「見ていればわかるさ。お前、彼女が危ない目に会わないように動いているだろ。どうやって察しているのか知らないけど。」
「なんで知っているんだ!?」
思わず顔をあげる。気付かれているとは思わなかった。健吾は楽しそうに笑っている。
「詩織もなんとなく気づいているよ。タイミングよく現れて、助けてくれるって。」
「まじかよ・・・。というか詩織って・・・。付き合っているのか。」
片思いがあっさりと潰えたので悲しくなる。だが同時に納得してしまった。健吾と工藤さんが並んでいると美男美女のカップルだと誰もが思うだろう。だが健吾は笑顔で首を振った。
「安心しろ。幼馴染だよ。幼稚園から一緒だったんだ。」
「・・・・・そういうのって恋に発展しないのか?」
「俺達は親友って感じなんだよなあ。申し訳ないけど俺の好みじゃないし。余計な噂をたてたくないから学校では接点をもたないようにしているし。」
以前聞いたことがあるが、健吾は巨乳派らしい。工藤さんもそれなりにあると思うが、健吾にとっては不足らしい。間違ってもファンクラブの人間には健吾が巨乳好きだとは聞かせられない。しかし2人が付き合っていないと聞いて、安堵してしまった自分が嫌になる。
「そっか・・・・。」
「だから安心して詩織を狙いな。まずは距離を詰めるところから始めるのがいいと思うけど。」
「余計なお世話だよ・・・。」
アプローチできる度胸があればとっくに告白している。彼女もファンクラブがあるとの話だし、よく告白されている。全て断っているらしいが。俺なんかが付き合えるとは思っていない。
「それで?詩織が死にそうというのはどういうことだ。」
さきほどとはうってかわって健吾が大真面目な顔でこちらをみる。そしてそのまま俺の向かいの席に座った。
「詩織は大事な幼馴染みだ。そいつが死ぬかもと聞いて放置するわけにはいかない。」
「いや、それは例え話で・・。」
「いいや。おまえはそんな悪質な例え話はしない。」
「・・・・・」
健吾が真剣な顔つきでこちらをみる。口が滑った事をここまで信じられるとは思わなかった。だが巻き込むわけにはいかない。
「わかった。俺が1人で何とかするから大丈夫だ。健吾を巻き込みたくない。」
「馬鹿言うな。」
健吾がコツンと俺の頭をこづく。そして嬉しそうに笑った。
「さっきのは自分一人で抱えきれずに思わず出た言葉だろ?だから俺は嬉しいんだよ。お前が抱え込んだものの負担を軽くできることが。」
「どうして・・・・。」
「あの日俺を助けてくれたろ。お前が助けてくれなければ俺は一生サッカーができない人生を生きなければいけなかった。あの日から、お前は俺の恩人であり親友だ。何があろうとな。」
健吾は昔を思い出すように窓から外を眺める。そうか。そんな風に思ってくれていたのか・・・。
「健吾・・・。」
「さあはけ。一人で背負うな。約束する。何があろうと俺はお前の味方だ。」
健吾は真剣な表情で俺の目を見る。それを見て、これは逃げられないなと理解した。思わずため息をつく。
「ならその前に1つ俺が隠していた事を聞いてくれないか。それを信用できるのならば、工藤さんの事を話す。」
「わかった。話してくれ。」
「即答か。こっちは友人を一人なくすかもしれないと戦々恐々なのに。」
これから話すことは中二病と馬鹿にされても仕方がないものだ。ほとんどの人間が頭がおかしくなったと思われ俺から離れるだろう。健吾が友人でなくなってしまうのは悲しい。
「そんなことを心配しているのか。アホらしい。」
「アホ・・・!後悔するなよな・・・・・。」
半分やけになって俺は自分の秘密を健吾に話し始めた。
「俺には特殊な能力があるんだ。大まかに分けると3つ。視た人の個人情報の取得、視た人の過去・未来を観察、そして未来の書き換えだ。」
「それは・・・。予想以上な内容が出てきたな。」
「聞くのをやめるか?」
俺の問いに対し健吾は首を横に振った。真剣な目で俺を見つめる。
「想定外だったが、信じると言っているだろ。だが1つずつ聞かせてくれ。まず視た人の個人情報の取得だったか。」
「あ・・ああ。他人を視る事でその人の個人情報・・・名前、住所、電話番号だけじゃなく携帯のロックや金庫の番号までわかるんだ。」
「それは・・・すごいな。ということは視るだけでその人の事を丸裸にできるのか?」
俺は首を横に振る。視るだけで全てがわかれば楽なんだがそう簡単にはいかない。
「丸裸には次の能力、視た人の過去・未来を観察する能力を使う必要があるんだ。」
「どういうことだ?」
「例えば、健吾の昨日の夜ご飯が何かってのは視ただけではわからない。実際に前日の過去を視ないとわからない。ただし一度視ることができれば個人情報に追加される。」
「なるほど・・。基礎情報しか視ることができないから、過去・未来を視ることで補填するのか。過去・未来が視えるってどんな風に視えるんだ?映画みたいにか?」
「どちらかというと背後霊みたいに対象の人の周辺に漂って視える感じかな。」
過去・未来を視ている時、対象の周辺に漂いながら、周辺の様子を見たり、対象の人の会話等を聞くことができる。
「視ている時はそれに集中しないといけないのか?目をつぶってからじゃないとできないとかじゃないととか。」
「いや、脳に負担がかかるが、頑張れば片目側に映して視ることができる。もちろん集中した方が脳の負担は少ないが。だから会話しながら視ることも可能だ。」
「へー便利なことだ。じゃあ俺の事や詩織の事はそこから知ったのか?」
「・・・・・ああ。」
「どうして俺と詩織なんだ?」
「ぐっ。」
その言葉に俺は思わず呻く。本当は言いたくないが、健吾の目がさっさと話せと語っていた。諦めて口を開く。
「健吾は初めて声をかけた時に関わり続けると決めた。工藤さんは・・・・ずっと気になっていたから。」
「ああ・・・・なるほど。」
健吾はこちらを視てにやにやと笑う。俺は顔が赤くなるのを隠せなかった。俺の意図と微妙に違うのだが、そこをわざわざ訂正する必要はないだろう。
「悪いかよ・・・・。」
「いいや。思春期の学生らしくて俺は嬉しいよ。追加でいくつか聞かせてくれ・・・。」
「構わないよ・・・・。」
俺は健吾の質問に答えていった。
読んでいただきありがとうございました。
他にも短編を投稿しておりますので、よろしければ読んでいただければ幸いです。