神話再臨:イミテーション・ゴッズ
予約投稿しようと思っていたらなぜか小出ししたみたいになってしまいました。
読みづらかったら申し訳ありません。
「報酬はともかく、その話、受けてもいいと思っている」
「本当に!?」
黒く澄んでいる瞳を輝かせ、嬉しそうな表情で幼女神はこちらを見てきた。そんな年相応(?)なリアクションを見ると、どうしても幼女神(黒)に幼女神を重ねてしまう。
「とりあえず頑張ってはみるが、魔王を倒せる保証はないぞ。あいつと同等の強さだったらもう倒せないだろうからな」
「あぁ、それなんだけど、教皇を除いて魔王が最低でも3体はいるんだ」
「え、そんなに?ってか最低でも?」
「私がここから下界の様子が分からなくなってから500年以上は経っていてね。私が指示をしていた50年間だけでも魔王が3体に増えていたんだ。流石に500年も経てばもっと増えているんじゃないかな?」
これは新手の詐欺か何かなのだろうか。言質は取ったから何が何でもやってよね、というやつだ。いくら何でも無理ゲー過ぎる。
「いや、君なら多分すべて倒せるんじゃないかな?」
「多分って言っている時点でもう無理じゃね?」
被告が神という前代未聞の訴訟を起こすしかないのか。あぁ、被告人なのだから被告神か。マジ笑える。
「そ、そんなことないっ。絶対いける!絶対!!」
「慌てて言ってももう遅いだろ」
まずは生き残ることが第一だな。生きていれば訴えることはできるわけだし。死んだらゾンビになって復活するか、死ぬ前に人を辞めてアンデッドになっておくか………。
「諦めないでほしいんだけど!君ならいけると思った理由はちゃんとあるんだ!!」
「ふーーん、一応聞いておこうじゃないか」
よし決めた、術式も楽だしアンデッドになろう。
「聞く気ないよね!?私の世界には、君のいた世界と違って“ステータス“、そして”レベル“というものがあるんだよ!!」
ふーん、たしかゲームでそんな感じのシステムがあったな。俺の記憶によると、ステータスは自分の強さを示すもので、レベルは上がれば上がるほど強くなるものだった気がする。
あれ?レベルを上げれば魔王討伐とか余裕じゃね?
「おぉ、聞いてくれた……!!そう、君のいた世界では魔王が強くなるのを防ぐために、レベル制を排除していたようだけど、私の世界ではあえてそれを採用しているんだ」
「じゃあ魔王も強くなっちゃってるじゃん。魔王ってどれくらいのレベルなんだ?」
「私が最後に確認できた魔王でもLv.500は超えていたかな?」
あれ、俺の知ってるゲームじゃない。流石に高すぎないか?
「そう、不老不死である妖精族や精霊族、魔族たちでも必要経験値が多すぎてLv.300くらいまでが限界だったはずだよ」
「じゃあどうやってLv.500になれと?アンデッドになっても無理じゃないか」
「1体でも魔王を倒せばLv.500になれると思うけど」
「だから魔王を倒すこと自体無理なんだって」
そもそもレベル制を採用したこと自体失敗ではないのだろうか。
「そこで、ステータスの出番というわけ。ステータスというのは、自分の能力を示すものなんだけど、正確に言えばその人の権限を示している者なんだ。私の与えた権限で私を超えることはできない。つまり、神の座まで永遠にたどり着けないというわけさ」
「そういう問題じゃなくて___」
「いや、だからこそ君に希望を感じたんだよ」
「………」
「君なら魔力さえあればあれが使えるだろう?確か______
“神話再臨”だっけ?」
「………神はどこまでもお見通しってわけか」
「神だからね」
またしても残念女神特有のドヤ顔を披露する幼女神(黒)。
あれ?でも幼女神(黒)は自分の世界のことを知ることはできないと言ってなかったか?ってことはほかの世界のことも知ることができないはず。
「………」
目を合わせようとしたらものすごい速度で目をそらされたんだが。
「まさかとは思うが幼女神(黒)、俺の記憶を覗いたなんてことはないよな?」
「………えへへ」
「いや、えへへじゃなくて」
「いや、記憶を覗いたと言っても死んでから3日くらい前までしかさかのぼれなかったから安心してほしい」
そういうわけじゃなくて。
「俺の記憶を覗いたのならわかると思うが、あれは大量の魔力を必要としていて______」
あれ、幼女神(黒)の世界には大量の魔力があるんだっけ。それにレベルアップで保有する魔力の量も増えるということは。
「そう。恐らくLv.100に到達すれば使えるようになるはずだよ」
「………いける、のか?」
「だから言ったじゃないか。まあ、とりあえず君の体を再構築して下界に送るから、そこでいろいろ試してよ。あっ、そうだ。ギフトという形で1つスキルか称号を授けることができるんだけど、何がいい?本来であれば、それぞれの魂の本質で勝手に獲得するものなんだけど、君は特別だからね。好きなのがあれば言ってほしいんだ」
スキル?称号?なにそれ??
「ちょっと待て。スキルとか称号とかそこら辺ちゃんと説明してほしいんだけど」
「う~ん、見てもらったほうが早いかもね。頭の中で、ステータスって念じてみてよ。そうすれば出てくるから」
ステータス?
ミサキ
Lv.0
種族:霊魂
称号:世界を■■者 悲■の勇者
スキル:
よくわからないまま念じてみると、頭の中に文字が浮かんできた。
「慣れてくれば念じるだけで出てくるんだけど、最初のうちは声に出したほうが___」
「なんか出てきたんだけど」
「え?ほんとだ。普通はそんな簡単にできるものじゃないと思うんだけど」
ゲームというよりは、あれに似てるな。レベルは視れなかったけど、前の世界で解析魔法を使うとみることのできるやつ。
「そんな高度な魔法まで使えるとは。流石、世界を救っただけはあるね。ちなみに、解析魔法を使うと人や魔物のステータスを確認することができたり、さらに、スキルや称号に解析魔法を使うとそれについて知ることができたりするから。覚えておくといいよ」
なるほど、便利そうだな。積極的に使っていこう。
「さて、君のステータスは…………………って何その称号?」
「いや、俺もよくわからん。なんか文字が欠けてるけど、幼女神(黒)にはちゃんと見えているのか?」
「私にも文字が欠けて見えるし、どんな効果もわからない。多分、解析魔法でも視ることはできないんじゃないかな………っていうか、かっこ黒まで言うんだね君、ただでさえ幼女神の時点で失礼だというのに」
なんだ、俺の称号が分からないとか神も大したことないじゃないか。
「ねえ、いくら温厚な私でもそろそろ怒るよ?」
「それより早くスキルと称号の説明を頼む」
「もうやだ泣きたい……………」
「そこはまあ、信頼があるからこその冗談ってことで」
この一瞬で俺の信頼を得ているのだ。さすが幼女神(黒)。
「そ、それならいいかな……??」
ちなみに俺は騙された恨みを忘れていないからな。
「うっっ、あ、謝らないからね!称号っていうのは、常時発動しているスキルみたいなもので、1つの称号で複数の効果を持つものが多いから、強力なものが多い!スキルはそのまま、習得した技術や魔法のこと!説明終わり!!ほかに質問はないねっっ!!」
「………なんとなくわかった。下界に降りて確認するからもういいや」
「はぁ……やっぱり君は習うより慣れろ派だったか。そう思ったから下界でいろいろ試せばって言ったんだけどね。それで、そろそろどういう能力が欲しいか決めた?」
「あぁ。知らない言葉を理解できるような能力が欲しい」
前の世界では言葉を覚えるだけでかなり苦労したからな。地球のように使用言語が多すぎて本当に大変だった。
「なるほど、結構苦労していたんだね………。たしか称号で言語理解というのがあったはずだから、それを授けておくよ」
「ああ、ありがとう」
「なんか、素直にお礼を言われると恥ずかしいね」
急に照れだした幼女神(黒)。ちょろすぎだろ。本格的にこの世界が心配になって来たんだが。
「余計なお世話だよ!!」
文句を言いながらも冗談だとわかっているのか、幼女神(黒)は笑った。
「いろいろと確認も終わったし、もう下界に送ってもいいぞ」
「うん、そうだね………」
先ほどまでの笑顔はどこに行ってしまったのか、幼女神(黒)は急に表情を暗くしてしまった。
「どうした?何か他に俺に隠していることでも?」
「違うよ………いや、違わないのかな。」
幼女神(黒)はうつむいて黙ってしまった。そんな暗い空気を振り払うためにも励ましの言葉を探してみるが、何も思いつかない。
「ごめんね。私の事情に巻き込んでしまって」
黙り込んだと思えば急に謝るものだから混乱してしまったが、よくよく考えれば彼女が俺に謝る理由など、俺をだまして下界に送ろうとしたことくらいしか______。
「神話再臨。それは魔力を強制的に神の力に変える、いわば奇跡の力だろう?」
「詳しく説明すると時間がかかるが、そんな感じだ。どんなに相手が強かろうと、神でないものには勝てない」
場合によっては神に勝てるほどだ。
「ちょっと身の危険を感じたんだけど………。」
それだけ強い技なんだよ、ということをアピールしたかったのだが逆に怯えさせてしまったようだ。
「安心しろ、ここには魔力がないからな」
「まぁ、それなら………。じゃなくてっ!その、君の記憶を覗いたと言ったよね」
「あぁ」
「私が君の記憶を見た限り、君は、かなり短い時間しか神話再臨を使えなかった。それから推測するに、それは人には使えない技なんじゃないかな?」
「………」
「神の力は絶対に人には使えないものであり、だからこそ人は魔力を使っている。だから君はその力を使うために、“少しでも神に近づくために”犠牲を払っているんだよね?」
「………そうだ」
まあ、犠牲を払っているというより払わされていると言った方が正しいんだがな。
「そう、君は自身の記憶を犠牲にすることで神に匹敵するその力を使っているんだろう?私が思うに、犠牲に捧げるならほかにももっと選べたんじゃないかな?でも、君はその中で記憶を選んだ。それは何故だい?もっと別のものを犠牲にしようとは思わなかったのかな?」
「俺の断片的な記憶でよくそこまで考えついたな。だが、俺は犠牲にするものを選べなかったし、正確に言うと記憶だけを犠牲にしているわけじゃない」
「それはどういう………?」
「まあ、記憶を犠牲にしていることに変わりはないんだ。難しくて長い話を聞きたいわけじゃないだろう?」
「………そうだね」
「それに、俺に謝る必要もない。死んだ俺にもう一度チャンスをくれるんだ。逆に感謝したいくらいだよ」
「………それならいいんだ。でも、下界に送る前に謝らなくちゃいけないと思ってね」
「ははっ、幼女神(黒)は優しいな。こんな優しい神に呼ばれて俺は嬉しいよ」
「そっか………。私も嬉しい」
優しそうに微笑む幼女神(黒)だが、こちらを見つめる黒い瞳は彼女の本心を代弁するかのように静かに揺れていた。
不滅の存在のくせに、そんな儚げな表情をしないでほしいものだ。
「さて、もう一度世界を救ってきますかね!」
俺が暗い雰囲気を吹き飛ばすために勢いよく立ち上がると、顔を真っ赤にして幼女神(黒)は顔をそむけてしまった。
そうか、俺裸だったわ。最初に何も反応しなかったから大丈夫だと思ったのだが、羞恥心はあったらしい。
「い、いきなり立ち上がらないでほしいんだけど………」
幼女神(黒)は恥ずかしがりながらもチラチラ俺を見ながら文句を言ってきた。
隠さない俺も大概だが、俺を裸の状態で呼んだ幼女神(黒)も悪いと思う。しょうがなく俺は後ろを向いた。
「世界を救ったらまた会おう」
「うん。勇者ミサキ、君の未来が明るく、幸せなものとなるようにここからずっと祈っているよ」
「おいおい、神が何に祈るってんだよ?」
ずいぶんとありがたい応援に俺は顔だけ振り返り、笑いながら言葉を返す。
「ふふっ、そうだったね。…………行っていらっしゃい」
「ああ、行ってくる」
幼女神(黒)が目を閉じ、祈るように胸の前で手を握った。
「君の体を創るのに少し時間がかかる。少しの間眠っていてくれ」
急に俺の体が輝きだしたことに驚きつつも言葉を返そうとするが、声が出ない。どうやら俺の体がゆっくりと消えているようだった。まるで天国にいるかのような心地よい感覚に身をゆだねながら、思考を放棄する。
あぁ、ここって天国じゃなかったんだっけ_________
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