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すれ違い

「「…………………」」

 どこから会話がかみ合わなくなったんだ?

とりあえずこれまでの会話を整理してみるも、どこからおかしくなってしまったのかが全く分からない。若葉さんも同じように感じたのか、考えている俺と目があった。

よし、とりあえず怪しくなってきたところからもう一回話してみるか。

「えーっと、実はこいつらに、人を連れてくるように言ってたんだけどね?そしたら最初、何を連れてきたと思う?」

「おばけサソリを連れて行ったんですよね?」

「うん」

「じゃあ、その次は?」

「はい、おばけライオンですよね?」

「次は?」

「はい、おばけ鳥ですよね?」

「次」

「おばけ牛」

「で、最後に」

「さっきおばけいぬを倒しましたよね?」

「うん」

「よかった。モッ君とモーちゃんはちゃんと連れていけたんですね」

「ん?どーゆーこと?」

「あれ?違いましたか?」

「いや、あっているけど」

「「……………ここ(です)か!!」」

 お互いが会話のずれを見つけたことで、この問題は解決した。それと同時に、本来は会話で得ようとしていた気まずさをどうにかするという目的も、ともに問題に立ち向かったことでそれ以上の友情に近いものが芽生え、そちらも解決した。

「俺は若葉さんの「あれ?違いましたか?」を今までこいつらが連れてきた魔物が、合っているのかどうか確かめてると思ってた」

「やっぱりそうでしたか。私はあなたの目的が私の考えている目的と違ったのかと思って、その質問をしたんですよ」

「なるほど。で、その目的って?」

「はい。黒龍と戦うことですよね?」

「いや、違う」

「違うんですね……………」

「「…………………」」

 若葉さんとも自然に話すことができて打ち解けたと思ったら、共通の会話がないと話が続かないレベルの薄っぺらい関係性しか形成できていなかった。

 そして結局、二匹のスライムが俺にタックルしてくるまでその沈黙は続いた。



「で、こいつらが若葉さんに会いに行ったとき、俺が黒龍を倒そうとしていると勘違いしたのか」

「はい」

 今回の会話のすれ違いは、俺が二匹に人を探しに行ってもらった時、若葉さんのもとへ二匹がたどり着いた。そして、それを見た若葉さんが、俺が黒龍と戦う方法を教えてほしくて二匹を使いによこしたと勘違いしてしまった。というのがすべての始まりらしい。

「黒龍と戦うには、私が森の主として定めた五体の魔物を倒す必要があるんです。なので、この子たちにそれを教えていったのですが……………」

「うーん、なるほど」

 おばけ○○という名前は正直どうかと思ったし、分からないことだらけというか、聞きたいことだらけというか。

「でも、偉いですね、この子たちは」

「ん?」

「この川に来るのも、この子たちに案内されませんでしたか?」

「確かに、そうだけど」

 俺がぐいぐい来る二匹を見たときに、ついに人を見つけたんだと思ってついていったら、なんかよくわからない川に連れてこられてびっくりした。俺は久しぶりに魔法で作った水以外で体を洗えることに喜んで、何だかんだ二匹を誉めまくったんだよなぁ。

「多分この子たちが五体の魔物をミサキさんのもとへ連れて行った理由は、私と合わせるため、だと思います」

「え?」

「魔物であるこの子たちは自由に出入りできますが、私はあの五体の魔物が倒されるまでこの森から出ることが許されていませんし、逆にミサキさんもこの川から内側に入ることもできません」

「そうなの?」

 確かにこの川をぐるっと回ってみたり川に入ってみたりしたが、一度も向こう岸に行ってない気がする。やっぱり何か魔法をかけられてたのか。

「はい。なので、二匹はミサキさんと私を会わせるために頑張っていたんだと思います。特に、最後のおばけいぬなんて見つけることはほぼ不可能なのに……………」

 そう言って、若葉さんは二匹のスライムの頭(?)を優しくなでた。二匹に触ることができてうれしかったのか、微笑んでいる。

「そうだったのか」

 俺は二匹のことを精一杯頑張るけど全部空回りしちゃう子どもみたいなものだと思っていた。それが、実はこんなに優秀で、こんなにも頑張っていたなんて。

 申し訳ない気持ちと、嬉しい気持ちでいっぱいになった俺は、腕を大きく広げた。

「ありがとう、モモ」

 それを見た若葉さんに撫でられていた二匹は、俺の胸に飛び込み、俺は後ろに倒され、二匹は跳ね返った。

いつもよりちょっと強かった。

「そうだ、いろいろ聞きたいことがあったんだ」

 俺は何事もなかったかのように立ち上がり、会話を続けようとする。若葉さんはちょっと寂しそうに手を眺めていたが、俺の言葉に視線を俺に送った。

「えーっと、なんだっけ?」

 だが、聞きたいことが沢山あるが、どれから切り出せばいいのかが分からない。とりあえず大雑把に聞いてみるか。

「若葉さんって、何者なの?」

 これが最も聞きたいことであり、恐らくこれを聞けば大体の概要が分かる質問だった。

「私は、この森全域の管理を神から任されている亜人です」

 だが返ってきた答えは答えになっていたが、さらに疑問が深まるものだった。こういう場合、大体話が長くなってその大体が理解しなくてもいいものになる場合が多い。

 となるとここは。

「そこからの話はちょっと理解できないそうもないから、簡潔にお願いしていい?」

 魔法の言葉を使うのが正解だ。

「え、わ、わかりました。えー、わかりやすく言うと、魔王、特に黒龍の封印をしたり、黒龍と戦う権利を与えたり、他にもいろいろ……………あ、あと亜人です」

「…………………」

 さっきの答えでもかなり簡潔だったが、それよりも簡潔さを目指して支離滅裂な答えになってしまっていた。だが、必要なことはなんとなくわかった。

「そ、その……………分かりましたか?」

「あぁ、ありがとう。なんとなくわかったよ」

 ここまでくればあとは簡単。さっき聞いた説明から自分の欲しい情報を選び、質問していくだけだ。

「この森って、全部?」

「はい、全部です」

「なるほど、すごいね」

「え、ありがとうございます」

「神から任されたって、どれくらい?」

「えっと、五百年くらいですかね?」

「なるほど、すごいね………五百年!?すごいね!?」

「あ、ありがとうございます」

 考えもしなかった数が出てきたことに驚いてしまった俺とは対照に、若葉さんは俺に褒められたことを素直に喜んでいた。

「え………俺ずっとため口だったんですけど、すみません」

「あ、いえいえ!大丈夫です!!それに、昔を思い出して嬉しかったですし…………」

 “昔”、か。そういえば、どこかの会話ですでに出ていた気がする。まさかそんな昔とは思わなかった。せいぜい五年前くらいだと思ってたよ。百倍じゃん。

「あ、あとその…………また若葉って呼び捨てで読んでほしいのですが……………」

 なぜかもじもじしながら俺に呼び捨てを求める若葉さん。俺に御年五百歳の方を呼び捨てにしろというのか?様づけにしないといけないと思ってたところなんだぞ。

「なにせ、人と会話するのは二百年ぶりくらいなので…………………」

「…………………分かった。じゃあ、これからもため口で行かせてもらうよ」

 二百年ぶりとか言われると流石に断れない。なんでさっきからそんな上からでかい数字を叩きつけてくるの?

「!ありがとうございます!!」

「じゃあ、俺のこともミサキで、あとため口でよろしく」

「え、そ、その……………照れます、じゃない照れるますぅ…………」

 急にどうしたというのだろうか。そういえば、人と会話するのが二百年ぶりとか言ってたな。俺も前の世界で裏切られた時しばらく人と関わることが無かったから、その気持ちは分からんでもない。

あれ?なんだか俺も悲しくなってきたんだけど。

「ほら、よろしく、若葉」

 うん、見た目が若いし子どもみたいにおどおどしてるからあまり忌避感はないな。

「よ、よろしく、ミサキs…………」

 今ミサキsって言ったぞミサキsって。

 まあでも、ここから慣れてもらうしかないだろうな。

 俺は、前世で初めて幼女神(黒じゃない方)と喋ったときのことを思い出す。これと同じように、最初はお互いの距離感が分からなかったんだよなぁ。

 一瞬だけ懐かしさに浸るが、罪悪感という胸の痛みに邪魔されてそれはすぐに消えてしまった。

そういえば、あの時はお互い握手をしたっけ。

「はい」

 俺は若葉に手を伸ばした。

「あ、これ知ってま……る。握手で……だ……よね?」

 それを見た若葉は目を輝かせて噛みながらもそう言った。

「あぁ。こっちには握手の文化はないけど、日本人から教えてもらったのか」

「はい!二百年前に!!」

 そう元気いっぱいに答える若葉を見て、俺はとても悲しくなった。

 手を伸ばしたりひっこめたりする彼女の手を、俺は強引に掴み、ちょっと強めに握る。

「!!」

 すると、若葉はそれに驚きつつも両手で俺の手を包み込み、上下に激しく振った。

 握手ってこういうものだっけ?間違って伝えてないよね?

「えへへ…………」

 だが、嬉しそうな彼女を見て、そんな疑問はすぐに消えてしまった。

 俺も彼女の手を両手で握り、一緒に上下に振る。

「「…………………」」

 しばらく沈黙が続いたが、今までとは違ってそんな居心地の悪い沈黙ではなかった。


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