未知との遭遇
応募が31日までのため、急ぎ足で投稿させていただきます。
俺は自身のレベルを見て、これまでの苦労を思い浮かべてしまったが、その思考を遮り、先ほどまでオオカミがいた場所を眺めた。
「血、おいしかったなぁ」
最初は血を飲むことに抵抗があったのだが、吸血鬼の亜人だからか血がおいしく感じるため、今ではもう抵抗はなくなっている。
ちなみに、味は変わらないけど、結晶よりも血のまま飲んだ方がお腹がいっぱいになるので、どちらかというとそのままの方が好きかなぁ。
「………………………噛まずに舐めとけばよかったか」
それでもレベルを上げる効率を考えると、やはり結晶にするべきなのだろう。
“真祖”の称号の能力の一つである、血と魔力を操る力は、自分だけでなく、倒した魔物にも効果があるようで、血の翼を操り、凝縮する要領で先ほどのオオカミのように小さい結晶にすることができるようになったのはこれまでの生活の中で大きな発見だろう。
それによって、本来飲み切ることのできなかった血を飲むことに加え、体すらも血の結晶にできるため、吸収する魔力が大幅に増え、レベルを上げやすくなったのだ。
吸血鬼という種族でなければここまでレベルを上げることはできなかっただろうし、幼女神(黒)の言っていた通り称号というのは強力なもので、“真祖”の称号には相当助けられてきた。
もし元の体でこの森で生活するとなると、もっと苦労をしていたと断言できるほど、強力な称号だ。
「…………………………そもそもこの体になって無ければ森で生活する羽目になってないか」
バシャバシャと水を意味もなくかき回す血の翼を収める。そしてそろそろ岸から出ようとするのだが。
あれ、何しようとしてたんだっけ?
何かしようとしていたことがあった気がして俺は動きを止めた。
「………………………あ、変態仮面」
そして本来の目的を思い出した俺は仮面を外そうと仮面に手をかけたが、何やら森の中から足音が聞こえてきたため、仮面を外すのを再び諦めることになってしまった。
「はぁ、今日は敵がよく来るなぁ…………」
俺はまた戦わなければいけないことに辟易しつつ、血の翼を出す準備をして音の聞こえる方へと顔を向けた。
すると、川に囲まれた方の森の中から、二匹の赤いスライムと、緑色の髪をしたアンと同じくらいの年齢の少女が出てきた。
「「!?」」
俺は魔物ではなく人が出てきたことに驚き、少女は俺の格好に驚いて顔を赤くしてしまっていた。そして俺が驚いたのにももう一つ理由がある。
顔を見たとき、一瞬だけ幼女神(黒)に似ていると思ってしまったからだ。
だが、よくよく見ると美少女ではあるもののあまり似ていないことに気づく。いや、似てるのかな?
俺がそんな考え事をしていると、目の前の少女はさらに顔を赤くしてしまった。
別に同性なんだから裸をそこまで気にしなくても______いや待て。同性?俺はもともと男じゃないか。
俺は裸を見られても動じずに彼女にかける言葉を考えていたのだが、思いとどまった。
異性に裸を見られたんだぞ。体を隠すべきじゃないのか?それとも、悲鳴の一つでもあげてみたほうがいいのか?
だが、初めてのことが多すぎて何をするのが正解なのかわからず、俺は混乱していた。そして混乱している間も、目の前の少女はさらに顔を赤くして手で顔を隠してしまう。
このままではまずい。早急に次の行動を決めなければ……!!
そう思った俺は、結局悲鳴を上げるという選択肢を選び、恐らく人生初であろう悲鳴を上げようとしたのだが
「き______」
「な、なんて格好をしてるんですか!?」
目の前の少女の叫びにかき消されてしまった。
「………………え?」
「早く服を着てくださいっ!!!」
「………………え??」
これ、俺が悪いの?どちらかというと、そっちが覗いてきたみたいな状況だと思うんだけど。
「えっと………………ごめんなさい???」
俺は少女の発言に納得がいかなかったものの、結局謝ることにした。多分、裸を見られたはずの俺より見たほうの少女の方が顔を赤くして照れていたため、ちょっとだけ申し訳ない気持ちになってしまったからだと思う。
でもやっぱり納得はできなかった。
「その…………さっきはごめんなさい!!」
俺が服の形にした血の翼を纏ってしばらくしてから、さすがにさっきのは自分が悪いと思ったのか、少女は俺に謝った。
「あーうん、別にいいよ。俺にもちょっと悪いところがあったし」
俺に悪いところはなかったはずだが、やはりここまで謝られるとこっちも悪かった気がしてきてつい俺も悪かったみたいな言い方になってしまった。
「あの………その…………………」
目の前の少女は人見知りなのか緊張しやすい性格なのか、何かを言おうとしているものの、言い淀んでしまっていた。
まさか、俺が血の翼を纏っただけで結局のところ裸であることを指摘したいのだろうか?
俺は今、血の翼を森に入ったときの装備の形にしているのだが、その装備は何処にいったかというと、もともと穴が開いていたこと、そして、度重なる連戦でボロボロになってしまったことによりすでに現役を引退してしまっている。
つまり、今の俺は着る服がない状態というわけだ。
これで文句を言われてもこれ以上着る服がないのだが、どうしよう。
目の前の少女と俺がおろおろしていると、少女と一緒にやってきた二匹のスライムがピョンピョン跳ねてこちらにアピールしてきた。
「おぉ、どうしたモモ」
俺はそれに応えるように、腕を広げる。
すると、その二匹のスライムは同時に俺の胸へと飛び込んでくるが、俺はその勢いを止めることができず後ろに倒れてしまい、スライムたちも跳ね返って後ろに飛んで行ってしまった。
それもそのはず、このスライムたちは俺の膝の丈ほどもある巨大な個体であり、純粋な体重ならば二匹合わせた方が重いからだった。こいつらとはこのやり取りを何十回もしているのだが、奴らは一向に吹き飛ばされるから加減しようとかの学習をしようとせず、毎回力の限りぶつかってくる。もはや吹き飛ばされるまでがあいさつみたいなものだと学習してしまっているのかもしれない。
前の世界にもスライムはいたが、こんなにアホというか馬鹿というかなんというかその______頭が悪くなかった気がする。
「やっぱりこの子たちとはお知り合いだったんですね」
やっぱり?
少し引っかかることがあったが、まあ一応先に答えておこう。
「まぁ、そんな感じかな」
「モモちゃんっていうんですね…………どっちがモモちゃんなんですか?」
どっちが?
「いや、右がモッくんで、左がモーちゃん。二匹合わせてモモだ」
ん?どっちがどっちだっけ?まあいいか。
俺はどっちにしろ、スライムに理解できるわけがないと見分けるのを諦めたが、俺の紹介を聞いた二匹は、ピョンピョン跳ねながら場所を入れ替わっていた。
「…………………………」
前言撤回。こいつら結構頭がいいのかもしれない。
「もしかして、こいつらがここにあなたを呼んだの?」
「直接ではないですが、一応そうです」
そうか、こいつらにはずっと人間を連れてきてほしいとお願いをしておいたが、ついに人間を連れてくることに成功したのか。
俺は感謝の意を込めて二匹の頭(?)をぽよぽよする。
すると、二匹は嬉しそうに体を震わせた。
「かわいいですね…………………あ、忘れてました。私、若葉と言います」
「あ、俺の名前はミサキ、よろし_____若葉?」
「!?は、はい!何でしょうか!?」
俺は若葉という日本語に違和感を覚えたので聞き返してしまったのだが、どうやら若葉は名前を呼ばれたと勘違いしてしまったらしく、驚きながら照れていた。
「いや、そうじゃなくて、その名前って日本語?」
「!?日本語を知っているのですか!?」
やはり気のせいではなかったようだ。もしかして彼女は日本人なのだろうか。そうだとすると____________
あまり関わりたくないのだが。
「……………………もしかして、若葉さんは日本人なんですか?」
「いえ。昔、私に名前がなかった頃、一人の勇者がつけてくれたんです」
「なるほど………………違ったか」
俺はそれに安堵したが複雑な気持ちにもなった。
「こちらこそ、期待させてすみません…………」
「いや、こっちこそ、呼び捨てにしてごめん」
ため口でしゃべっているのに今更呼び捨てもないと思うのだが、若葉さんにはなぜか親近感がわき、ため口で話しかけてしまう不思議な魅力がある。
「「………………………」」
お互いがぺこぺこしていると、その後にはただ静寂の時が待っていた。
親しみやすいのに、どこか気まずい。そんな不思議な魅力(?)もある人だった。
「実はこいつらにずっと、人を連れてきてほしいって言ってたんだけどね?」
この沈黙は気まずい類の沈黙だと感じた俺は、無理やりスライム二匹をダシに会話をしようと試みる。
「そしたら最初、何を連れてきたと思う?」
実は、めっちゃでかいサソリを引き連れてきたんだよー。
そう続けようとしたが。
「あ、おばけサソリを連れて行ったんですよね?」
「え?」
なぜか若葉さんに答えられてしまい、会話が途切れてしまった。
いや、会話という点においては相手に答えてもらうのも正解なのだが、予想外の反応に俺の脳が一瞬フリーズした。
「え、じゃあ、その次は…………?」
「はい、おばけライオンですよね?」
「………………………次は?」
「はい、おばけ鳥ですよね?」
「……………………次」
「おばけ牛」
「………………」
なぜ知っている。
俺主体の会話が目的だったのに、主導権が奪われてしまった。
「あ、あとさっき連れて行ったおばけいぬも倒しましたよね?」
「え………………う、うん」
しかもさっきの戦いのことまで知っているのか。
ん?犬?連れてきた?
「よかった…………………おばけいぬは気配をほぼ完全に消しているので見つけるのが相当難しかったはずですが、モッ君とモーちゃんはちゃんと連れていけたんですね」
「ん?どゆこと?」
「あれ?違いましたか?」
「いや、あっているけど……………?」
なぜだろう。会話がかみ合わなくなってきた。
「では、そろそろ行きましょうか」
「ん?どこに?」
「え?もちろん黒龍のもとへ、です」
「え?」
「え?」
「「…………………」」
どこから会話がかみ合わなくなったんだ?




