翼
それからというもの、俺はレベル差に苦労して魔物を狩り、お腹がタプンタプンになるまで血を飲むという効率がいいんだか悪いんだか分からない方法を使ってレベル上げをしていた。
だが、そんな生活も3日もすれば限界を迎える。
「もっと効率的なレベル上げの方法があるのでは?」
一度豪華な生活を送ると、もう二度とそれ以下の生活に戻れないだけでなく、それ以上を求めてしまう。悲しい人間の性が、ただそこにあった。
血を飲むことに抵抗が無い、というか最初に血を飲んだ時から血を飲みたいという衝動が芽生えてしまったことに加え、この体は人とは味覚が違うらしく、血を美味しく感じてしまうため、血を飲むことについては何も問題はない。
だが、自分より体の大きい魔物を倒し、常にタプンタプンになっているお腹は戦う際の大きな足かせになっていた。ある程度レベルも近づいてきたとはいえ、魔物との戦いはいまだにギリギリのところがある。魔力で体を強化しても彼らの一撃を受けられる防御力はないため、避けられるような身軽さが要求されるのだ。
「おかげで何度吐きそうになったことか。せめてもう少し戦闘が楽になればいいんだけどな…………………」
1日中戦闘をするよりも、吸血できそうな魔物を倒し、お腹いっぱいになるまで血を飲むのを3回繰り返した方が効率はいい。だが、戦い方を考えればもう少し効率を上げられるはず。
そうと決まれば、俺は血を消化するのを待っている間、これまで役立っている吸血鬼特有の力、特に“真祖”の称号について模索することにした。
自身の魔力を血に、自身の血を魔力に変換する能力。
そして、自身の血を操る能力。
「眷属どーのこーのはこの際無視するとして、この2つは戦闘に役立ちそうだな」
俺はその二つの力の使い道を確かめるために、自身の血を操作することに専念した。練習し始めの頃は体内の血の流れを早くしたり遅くしたりすることしかできず、魔力を血に変換しようとしてもどうもうまくいかなかった。
「ふうぅぅ_________」
ある時は太極拳もどきやヨガもどきでさらなる技術の向上を狙ったり、ある時は血の流れを止めすぎて酸欠みたいなことになってしまったり、結局何だかんだ血行が良くなって健康になったりした。
「ん?なんだこれ?」
だが、それを極めていくうちに、腰らへんに魔力が流れるのを拒むかのような引っかかるものを感じた。
これはまるで_______
「何かが収納されてるみたいだな」
尾てい骨よりの少し上にあるため、位置的に尻尾ではない。
だが、その少し上に何かが埋まっているような違和感があった。
「そういえば、血の味を美味しく感じるのもそうだし、吸血鬼だから体のつくりが違うのかもしれないな」
恐らく、そこに人とは違う器官、若しくは内臓があるのだろう。
そう考えた俺は、新党に魔力の通り道を確認しつつ、ゆっくりと魔力を通していく。
そして、その器官の隅々まで魔力が通ったころ______
「……………………………羽じゃん」
_______黒い翼が生えてきたのだ。
「吸血鬼だから蝙蝠っぽい羽が生えると思ったけど、意外と鳥っぽいんだな」
俺は羽ばたかせたり手で触ったりして神経が通っているのかを確認すると、痛覚も神経もないため、腰にある翼を生成する器官によって生み出された翼の形をした魔力と考えるのが正解に近いということが分かった。どうやって体の一部を生成することができるのか疑問だったが、真祖とか関係なく吸血鬼固有の器官だと納得するしかないだろう。
というか、そもそも俺以外の吸血鬼はこの世界に存在しないため、真実を誰も知ることはできない。
「意外と小さいから、飛べなさそうだな……………いや、魔力の通りもいいし、いけるか?」
俺は翼に通った魔力で操作し、大きく、早く羽ばたかせたが、体と翼のサイズ的に羽ばたくだけで飛べそうもなかった。だが、魔力を流したり魔法と併用したりすることで空を飛べそうだった。
「うおおぉぉおおおお!!」
一日くらいそれで楽し____いろいろ実験して試したのだが、どうやら大量の魔力を翼に通すことで空気をつかむような、空中に翼しか触ることのできない足場?取っ手?のようなものができ、羽ばたくことによって空を飛べるということが分かった。その気になれば走るよりもはやい速度で移動することができるのだが、一回羽ばたくごとに魔力を消費してしまうため、今の魔力すべてを使っても100回ほどしか羽ばたくことができない。とはいえ、魔力の籠め方によって一度の羽ばたきでかなりの速度、距離を移動することも可能だし、羽ばたかずに空中にとどまることができるなどかなり工夫ができそうではあった。
「そのためにも、レベルを上げて魔力量を増やさないとな」
そして最終的にその考えにたどり着いたとき。
「…………………………あれ?俺こんなことしてる場合だっけ?」
予期せず翼を見つけてしまったが、そもそも称号の効果を確かめなくてはいけないのでは?
そのことに気が付くと同時に、いろいろなところに飛びすぎて完全に迷ってしまったことにも気づいた。
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