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第十五話 全とは何か ④

 トゥリオの背を見送ったフランは自然(ありのまま)の世界を目に、思惟の世界へと落ちる。

 絶えず形を変え流れゆく雲、そよぐ風になびく草木。小虫を(ついば)む鳥、それを目掛けて茂みから飛び出す小型の肉食獣。獲物を咥え走り去るその姿を無慈悲にもゴクリと一飲みにしてしまう巨大な魔物。目の前に広がる光景はまさに弱肉強食であり、自然の、世界の必然――即ち理だった。


 フランの思考は巡り続ける。


 自分は何故、魔物を退治したのか?

 それは人々()に危害が及んだから。


 何故危害が及んだ故に魔物()を退治したのか?

 それは人々が生き残る為。


 では何故、人は生き残りたいのか?

 それは種を存続させる為。


 何故、種を存続させたいのか?


 加速した思考はフランに、とある話を思い出させる。

 勇気ある三人の魔術師の伝承。彼等は、彼等こそが平穏を取り戻し、かつての平和を世界に取り戻した人間()。彼等が居なければ、技術が受け継がれていなければ現状(いま)は無い。


 では今、人と言う種の存続が出来なくなってしまったら、この世界はどうなるのか?

 フランが自身に禁じている魔術の発動――それには壊魔粒子(ロット・マナ)を発生させるリスクが伴うが、必須であるマナの整流が周囲にもたらす恩恵は大きい。勿論、自身が使用する魔術に要するだけのマナを整え、魔力へと変換する高度な技術を持つ魔術師も存在するが、大半の者は不発や発動失敗で大量にロット・マナを発生させる危険性から必要量よりも多いマナを整える。


 そしてそのあぶれたマナが与える恩恵の一つに、微生物の成長を促す効果がある。

 マナによって成長した微生物は、整流されたマナとは比較にならないほど自然界に、いや世界に恵みを与える。


 それらによって植物は成長し、草花を糧とする生物が繁殖し、生き物を喰らう肉食獣が、魔物がまた成長し繫栄する。

 やがて肉を喰らうモノや魔物は、人を始め様々な生命を“脅かす”それに抵抗する為に、魔術が使われる。


 すると何が起きるか――

 食物連鎖、生命の円環――それこそが理。


 フランはハッとし立ち上がり、気づく。

 全とは何かに対する“己の在り方”


 機を伺っていたかを思わせるタイミング……トゥリオがフランへ歩み寄る。


「そろそろ帰るぜ」


「はい!」


 確と大地を踏み締めるフランにトゥリオは尋ねる。

 答えは出たか?彼の言葉にフランは足取りで答える。


「言葉は要らないってか?まぁいいや、セシィも待ってるぜ」


 トゥリオの言葉はフランの足を急がせた。

 大した距離ではない筈だが、永遠にも感じる村への帰路を走り切ったフランを笑顔が出迎える。


「セシィ、迷惑を掛けました」


 深々と下げられた頭を抱き寄せ、返す。


「掛けたのは迷惑じゃなくて心配だよ……でも信じてたからね」


「セシィ――」


 潤む瞳が重なった時、フランの腹が喚く。同時に一帯は笑み声に包まれる。


「取敢えずメシにするか!」


「はい!」


 楽園へと踏み入れる為、欠かす事の出来ない“己の在り方”の認識を叶えた佳日、豪勢な食事をと行きたい所だが生憎ここは良くも悪くも平凡な村。一行は素朴な料理を腹いっぱいに収める。


「――では、明日出発と言う事で良いですね?」


「もちろんだよ!」


「構わないぜ」


 三人の気持ちに相違と揺るぎは無い。

 遂に迎える旅の目的一つの達成を前、一番に必要となるのは休息。逸る心を押さえつけ、一行は寝床へ身を預ける。

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