予選ー6
待ち合わせのコーヒーショップには時間より少し早く着いたので、私は先に店の中に入り、キャラメルマキアートをオーダーした。
出来上がるまでに、店の中に入っていると連絡を入れておき、出来上がったそれを受け取った後、少し奥のソファ席に座り、冷たくて甘いこの飲み物を飲みながら、朱美が来るのを待っていた。
(いつ渡そっかなぁ……)
ふふっと一人でにやけていると、急にパシッと誰かに頭を叩かれた。
「いたっ!!」
「キモいな、お前」
振り返ると、そこには友人の結斗の姿があった。
「キモいって失礼ね」
ムッとした顔で答えると結斗の後ろから、朱美が手を振りながら、真也と一緒にお待たせ、と言ってやってきた。
「葵早くない?」
朱美が笑いながら言う。
「まぁね。だって、家にいても暇じゃん?」
それもそっか、と朱美がまた笑う。
「でも、なんで結斗までいんの?」
ジトッとした目で私は結斗を見ながら言った。
「まぁ、ほら。なにかと物騒じゃん?」
肩を竦めながら結斗が言った。
「朱美と葵だけじゃ心配だったから」
真也が続けて言うと、朱美は目を潤ませながら、真也に嬉しい!と抱きついた。
「お前だけなら心配いらねーんだけどな」
ククッと笑って結斗が言うので、私は彼の足を思い切り踏んづけてやった。
「いって!おま、何すんだよ!?」
思わずその場に屈みこむ結斗を無視して、私は飲み終えたカップを片付けに席を立ち、ほら、早く行こ、と何事もなかったかのように、すたすたと入り口の方へと歩きだした。
***
「うそ、まじで!?」
カラオケについて、部屋に入ったところで、私は持ってきていたプレゼントを朱美に渡した。
中を見て良い?と聞かれたので、もちろん、と笑って答えると、入っていたチケットを見て、目が取れるんじゃないかというくらい大きく目を見開いて、朱美は私に抱きついてきた。
「ありがとー!葵、愛してる!」
私も、と朱美を抱き返す。
「でも、なんで学校で当たってるって言ってくれなかったの?」
朱美が不思議そうな顔をして聞いてきたので、私がニカっと笑って、サプライズ?と答えると、大成功だよ、このヤロウ、と彼女はバシバシと叩いてきた。
「マジですげぇな、お前」
結斗が感心したように言う。
「これ、だってすっげープレミア状態じゃん?お前と真也以外で当たったって言ってるの聞いたことねーし。ネットでもみんな外れたって呟いてるのがほとんどだったぞ?」
「まぁね」
ドヤ顔で私が言うと、こればっかりは素直にすごいと思うわ、と結斗は悔し気な表情を浮かべた。
「これで一緒に行けるね!」
朱美の言葉に、真也が朱美の頭を撫でながら微笑みながら頷いた。
そう、実は真也もチケットが当たっていたのだという。
「丁度よかった、Muskaのコンサートでデートだね!」
そう言うと、朱美は嬉しそうに頷いた。