予選ー5
教室に戻って机の隣にかけていたカバンを手に取ると、中にしまっていたスマホを取り出してチェックする。
案の定、アプリに数件のメッセージが届いている通知が表示されていたので、私はアイコンをタップして、アプリを開き、中を確認した。
『ほんとに顔、大丈夫ー!?あれ、なんだったんだろね…まったく!
なんか鬼クマせんせに連れてかれてたけど大丈夫だった?
とりあえず、なんか帰れって先生達が言ってるから、私先に帰るね!
また連絡ちょうだい!』
可愛いウサギがぷりぷりと怒っているスタンプと、一緒に送られてきていたメッセージの内容を確認し、私はあはは、と笑いながら、返信した。
『ごめんね、心配おかけしましたー☆
鬼クマせんせは保冷剤くれたよ。やっぱいいやつですわ、あいつw
とりあえず、私は今から帰りまーす』
シュポン、とメッセージが送信される音が教室に響く。
「さて、さっさと私も帰るとしますか」
小さく呟くと、私は教室を後にした。
学校を出た後、道端にレポーターと思しき人影がちらほら見えていたので、私はできるだけ速足で家へと向かった。
(……ほんとに彼が何かやったのかな)
スマホを取り出してネットで検索をしてみる。
「……なんか、どれが正しい情報なのか、ぜんっぜんわかんないんだけど」
殺された人と最後に会ったのが彼だったって記事もあれば、彼が目撃者だって記事もある。中には、彼が殺したのでは、ということを書いているサイトまであった。
「うわ、これ、思いっきり晒されてんじゃん。こっわ……」
とあるサイトに、彼の実名と顔写真が思いきり掲載されていた。
「……どういう関係とか、何もわかんないのに、こんな風に個人情報晒されて……えっぐ」
ちょうど家について、玄関のカギを開けていると、朱美から電話がかかってきた。
「はいはいー、どしたー?」
明るく電話に出ると、朱美の元気な声が聞こえた。
『あ、もう家帰った?今いい?』
「うん、大丈夫」
家に入って鍵をかけ、自分の部屋に戻って鞄をベッドの上に放り投げながら答える。
「なんかあった?」
聞くと朱美は別に?と答えた。
『暇だからさぁ、遊ばない?てお誘い』
言われて私はオッケィと答えた。
「いいね、カラオケでも行く?」
チラリと机の上のラッピングされた包みを見ながら聞く。
『いいね!んじゃあ1時に駅前のフタバに集合ね』
「了解、じゃまた後でね」
そう言って、私は電話を切ると、私服に着替えて、机の上に置いておいたプレゼントを忘れずにバッグに入れて家を出た。