表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Luck TesT  作者: まきろん
5/36

予選ー4

その後、緊急の全校集会が行われ、校長先生の短い説明と長い眠くなる話、黙祷のあと、鬼クマ先生(生活指導)からの話で締めくくられ、そのまま今日は休校ということで、生徒は全員、自宅に帰るように言われた。


「やっぱさ……まぁ、そうだよねー……」


教室でかばんを手に取りながら、朱美に言うと、朱美はうんうんと頷いていた。


「こんなことがあったらね。今日はとりあえず休校って、鬼クマせんせ、言ってたもんね」


今日一日は、念のため自宅待機と全校朝礼で校長先生が言っていた。

それと、あくまでも、容疑者候補として、家出クンは名前があがっているだけだと校長は言って、みんなに黙祷もさせた。


鬼クマ先生は、レポーターがうじゃうじゃいるから、余計なことは何も言わず、さっさと家に帰って、自習をしなさいって言っていた。

くれぐれも、推測や憶測で、特にテレビやインターネット上で発言をしないようにと、皆に注意喚起もしていた。


「家出くん、ホントに殺したのかなぁ」


ぽつりと言うと、突然、後ろから、「そんなはずない!」と女の子の叫ぶ声がした。


「え……?」


振り返ると、そこにはツインテールにした愛らしい顔の女の子が、目に涙をためて立っていた。両脇には、別の女の子が2人「大丈夫?」と言いながらその子に付き添っていた。


「渡辺くんのこと、なんにも知らないくせに……!」


そう言って、いきなりつかつかと近寄って来たかと思うと、パアンといい音が廊下にこだました。


「った!え、ちょ、何、いきなり!?」


私は頬に平手打ちを食らった。

突然のことに、避けることすらできなかった。


「だ、大丈夫、葵!?ちょっと、あんたいきなり何すんの!」


朱美が彼女を思いきり睨みつけながら怒鳴る。

私はひりひりと痛む右の頬を、そっと左手でさする。


「渡辺くんは、そんなこと、するような人じゃなかったもん!」


そう言うと、わぁっと泣きながら廊下に飛び出し、走って行ってしまった。


「あ、かえでちゃん!?」


両脇にいた女の子の片方が、慌てて彼女を追いかける。


「あんた、何も知らないくせにテキトーなこと言って、最低なんじゃない!?少しは考えてモノ言いなさいよ!」


もう片方の女の子が吐き捨てるようにそう言うと、ギロっと私を睨んで、そのまま2人の後を追いかけて行った。


「……え、なんだったの、あれ」


彼女らの言動を総合して考えると、なんとなく、理由というか、自分がなぜ叩かれたのは想像がついた。

が、だからといって、叩かれたことに対して納得ができるかと言われれば、それは全く別の話で。

茫然と立ちつくしていると、遠くの方で誰かが怒鳴っているのが聞こえてきた。


「……おい、お前たち何してる!さっさと帰らないか!」


声の主は鬼クマ先生のようで、校内を見回って、まだ教室内に残っている生徒を追い出しに来ていたようだった。


「こら、本郷!お前も……っておい、どうした!?」

「へ?」


驚いた顔をした鬼クマ先生は、慌てて私を職員室へと連れて行った。


「ほれ、これで冷やせ」


鬼クマ先生は、冷蔵庫の中から保冷剤を取り出すと、ぽいっとそれを投げて渡してきた。


「あ、どうも……」


側にあったデスクの上にあった鏡をちょっと借りて、自分の顔を見てみると、見事に綺麗な紅葉型で、頬が赤くはれ上がっていた。


「うっわぁ……」


私は思わず頬を引きつらせた。


「何があったんだ?」

「あー、いやー…………別に?なんでも」


鬼クマ先生に聞かれて、私が答えると、思いきり怪訝な表情をされる。


「お前……その頬でなんでもないってことはないだろ」

「いや、まぁ……なんではたかれたのかは正直なとこわかんないんですけど。多分、あの子が切れるようなこと言ったんだと、思うんで」


もしかして、家出クンと付き合ってた彼女だったりしたら、そりゃ、人を殺したんだろうかと邪推している人間がいたら、怒るのも無理はないのかもしれない、とは思ったから、私は庇うわけじゃないけれど、なんとなく、言葉を濁した。


「……まぁ、子供の喧嘩に、いちいち大人が首を突っ込むのもどうかとは思うから、お前が大丈夫だっていうんならお前の言葉を信じるが……」


まるでやくざのような見た目と雰囲気とは裏腹に、意外とやさしくて、ちゃんと話を聞いてくれる鬼クマ先生に、私はやっぱこの先生、好きだなぁと思いながら笑った。


「大丈夫だよ。別にいじめとかそんなんじゃないし」


言うと鬼クマ先生は、まだ少し納得していないような表情ながらも「そうか?」と呟く。


「うん、ほんとになんかあったら、先生にちゃんと相談するし」

「……必ずだぞ?いいな?」


私がそういうと、先生は少し安心した様子で答えた。


「うん、絶対。ありがとね、先生。心配してくれて」


言うと、ははっと笑って先生は職員室から見送ってくれた。


「さっさと帰るんだぞ。寄り道せずに、まっすぐにな!」

「はぁーい。せんせ、保冷剤ありがとね!」


私は先生に手を振りながら、職員室を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ