3rd Stageー3
「少し前に、予選通過ってメールがきたんです」
あの爆発事故のあと、最初のSMSが届き、次に学校の爆発事故の後に2通目がきたこと、また、結斗のところにも、似たようなメールがきたことを伝える。
「悪いが、こいつは暫く預からせてもらうぞ」
そう言って、布施さんは近くに居た男の人から、透明なビニールの袋を受け取ると、私の返事を聞くことなく、スマホをその中に入れて封をした。
「こいつの解析を最優先でやってくれ。悪いが、大至急だ」
そのまま袋をもらった男の人にスマホの入った袋を渡すと、彼は分かりました、と頷いて、バタバタとその場を出て行った。
「……悪いな。今はどんな手がかりでも欲しいんだ」
険しい顔つきで言う布施さんに、私はふるふると頭を振った。
「かまいません。それで何か……朱美のこととかがもし分かるのなら。いくらでも調べてください」
ぐっと唇を噛みしめながら、私はそう返した。
難波さんに送ってもらって事故現場に戻ると、お父さんとお母さんはまだ警察の人と話をしていた。
空は少しずつ明るくなってきていて、ほとんどなかった人通りも、ポツポツと増えはじめている。
事故で燃えていた車は真っ黒になって、まだ道路にその存在感を示しながら残っていて、改めて、巻き込まれずに済んでよかったと、私はブルりと体を震わせた。
「とりあえず、今日の昼に一度、警察署まできてくれ。もし解析が終わってたら、スマホはその時に返却できるように手続きしておく」
そう言って、彼は胸ポケットから名刺を一枚取り出して、私に渡してきた。
「受付で捜査一課の布施と言えばつながる」
布施さんに言われて、私は小さく頷いた。
「……気を付けろ」
その言葉に、少し不安を覚えながらも、私はまた、こくりと頷いた。
警察から解放された両親と共に家に帰ったときには、すでに陽ものぼりきっていて、辺りはすっかり明るくなっていた。
「お母さんとお父さんは仕事があるからこのまま支度して出かけるけど、葵はゆっくり休むのよ」
疲れた顔の母は、そう言って小さく笑顔を作った。
「うん。お母さんも気を付けて会社に行ってね」
私が言うと、母はそうね、と苦笑しながら頷いた。
「……あ、そうだ。私のスマホなんだけど、警察の人が確認するのにって昨日持って行っちゃっててさ。戻ってくるまでLIMEとかつながらないと思う」
「あら、そうなの?まぁ、結斗くんのお家に忘れちゃったから、証拠品になるかどうか確認しないと返してもらえないとか、そんなところなのかしらね」
頬に手を添えて小さく首を傾ける母に、私はそうだと思う、と答えた。
「一応、早かったら今日のお昼には返してもらえるかもって言ってたから、お昼からちょっとっ警察署の方に出掛けてくる。もしスマホ返してもらえたら、すぐにLIMEするよ」
「わかったわ。葵も気を付けて行ってらっしゃいね?」
言われて私は小さくうん、と頷いた。
「それにしても、葵の携帯なんて関係ないのにね。直前まで葵が持ってたわけだし。まぁ、すぐに返してもらえるでしょ」
そう言って笑う母に、私も「だよね」と笑った。
父と母を見送ったあと、私は部屋に戻るとそのままベッドに倒れ込んだ。
(だめ、眠い……)
家に帰った安心感からか、それまで張り詰めていた緊張の糸が切れたからかはわからなかったけれど、私はすぐにうとうとしはじめた。
(お昼になったらスマホ返してもらって、それから結斗の様子を見に行って……あぁ、スマホ返してもらえなかったらどうしよう。その時はどうやってみんなと連絡とれば……)
あれこれ考えていたが、眠気がどんどん勝り、ついには全身を支配する。
(LUCK TESTも調べてみないとだし、朱美の行方も……身元が分かった人……)
そうしてそのまま、微睡みの中から完全に意識を手放した私は、深い眠りへと落ちていった。




