予選ー2
つまらない学校の授業が終わると、私はすぐに雑貨屋へと急いだ。
たくさん棚に並んでいる色とりどりの包装紙やリボンの中から、朱美の好きそうな色や柄のもの真剣に選び、お会計をすますと、さっさと家に帰り、買ってきたラッピング用紙で、綺麗にチケットを包んだ。
(朱美、きっと驚くだろうなぁ)
わくわくしながら、私はああでもない、こうでもないと、リボンを何度も結びなおした。
「葵、ごはんできたよー!」
「はぁーい!」
母が階段下から声をかけてきたので、私は返事をすると、完成した例のものを、そのまま机の上に置いて、部屋を後にした。
「今日のご飯、なに?」
聞くと母は、はい、といい匂いをさせるお皿を渡してきた。
「やった、カレーじゃん!」
「お父さんの分も、並べておいてね」
「はぁーい」
一緒に渡されたお皿を、私は机の上に置いていく。
「あら、なんだかご機嫌じゃない」
「え、そう?別にいつも通りだけど」
母に指摘されて、そんなことないよ、と私は答えた。
(あっぶな!うっかり母さん経由で朱美に話が行かないとも限らないんだから、気を付けないと)
ぺちぺちと頬を叩きながら、今度はスプーンを机に並べていると、まるで見計らっていたかのように、玄関がガチャガチャと開く音がして、『ただいま』と父の声がした。
『いただきます』
ちょうど準備が終わると同時に、部屋着に着替えた父がリビングにやってきたので、いつものように、家族3人そろって食卓を囲んだ。
父がテレビをつけ、ニュースが流れる。
「あ、私見たい番組があるから、天気予報終わったらチャンネル変えるから」
私がそう言うと、父ははいはい、と答えてリモコンを渡してくれた。
『本日未明、○○区で若い男性の遺体が発見されました。遺体には…』
ニュースを見て、母が少し、嫌そうな顔をする。
「いやだ、また死体が発見されたって。今月に入ってもう何件目かしら」
ため息をつきながら、お箸を置いた。
「葵も母さんも、気をつけるんだぞ。最近は物騒なことが多いからな」
父が言うのを聞いて、私は笑った。
「大丈夫だって。確かに最近、ちょっとこの手のニュース増えてるけど、ぶっちゃけ、そうそう身近に起こるわけないって。お父さんってば、心配性」
『次のニュースです。○○市の川に、アザラシの…』
さっきまでの死のニュースから一転して、明るい話題に変わったので、私たち家族の話題も、その話題に切り替わり、遺体のニュースのことはすっかり頭から消えていく。
夕食を終え、見たいテレビを見終わった後、お風呂に入り、私はいつものようにベッドにもぐりこむ。
(いつもと変わらない毎日が、今日も終った)
私は目を閉じ、そして、深い眠りについた。