2nd resulted
机の上に置いてあったスマホは、他の証拠品と同様に、証拠保管袋に入れられた。
現場では、まだたくさんの鑑識員達が、犯人の痕跡を調べていて、調べ終わるにはまだまだ時間がかかりそうだった。
「おい、終わったか?」
遠くから眼鏡をかけた50代くらいのおじさんが若い20代半ばくらいの男性に声をかけた。
男性は短く、はい、とだけ答えた。
「次はそっちを頼む」
わかりました、と答えて、男性は鑑識キットを持って場所を移動した。
袋に入れられた赤いスマホが、ブルブルと震えた。
だが、現場の話し声や物音に、それはかきけされる。
赤いスマホの画面に、1通のSMSが届く。
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タイトル
『選考委員会より2ndステージ通過のお知らせ』
本文
2ndステージ無事通過、おめでとうございます。
貴殿におかれましては、次のステージへと進んでいただくことが可能です。
もし、次ステージへの昇格を辞退される場合は、お手数ではございますが、本メール受信1時間以内に、本メールへご返信をお願いいたします。
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「布施、至急向かってほしい現場がある」
「殺しですか?」
もしやまた?と、脳裏に浮かんだのは連続殺人のことだった。
「いや、現段階ではわからない」
上司の答えに、俺はホッとしたものの、あからさまに嫌そうな顔をしてしまう。
今は連続殺人の事件を追っていて、しかも未だに解決の糸口は何も見つかっていない。
そんな中で、他のことになど手を煩わせたくはないという思いが、少なからずあった。
「強盗と思われる事件があったらしい」
「強盗、ですか?」
強盗は一課の管轄ではない、と思いきり眉を顰める布施。
「幸いなことに、住人は生きてる」
「なら、うちの管轄じゃないでしょ」
そう答えると、上司は頭をガシガシと掻きながら続ける。
「そうなんだが……被害者がな、この間爆発事故のあった学校の生徒なんだよ」
その言葉に、俺の動きは止まった。
「話によると、どうやら家の住人は薬を飲まされて意識を失ってる状態だったらしくてな。タイミングが遅ければ、もしかしたら強盗に殺された可能性もあるかもしれないって話なんだよ」
「押し込み強盗だったかもしれない、ってことですか?」
俺が聞くと、上司は小さく肩を竦めた。
「その可能性も、あるって話だ。正直、薬を使って昏倒させて、しかも縄で縛ってたらしい。その時点で、殺す必要性はないから、殺すつもりはなかったって意見も出てはいるんだが」
「……何か引っかかってるんですか?」
俺の言葉に、上司は難しそうな顔をした。
「いや……まぁ、なんつーかな、ここんとこ、普段ならないようなデカさの事故やらが立て続けに起こってるだろ?そこにきて、今回の事件で、しかも被害者がどっちにも関係してるってなると、な?」
「刑事の勘、ってやつですか」
俺は小さくため息をついた。
「まぁ、関係はないとは思うんだがな。念のため、行ってくれないか」
「わかりました」
普段なら、確実に無視するであろう、他人の『刑事の勘』。
だが、流石に、今回に限っては、俺も偶々だろう、で済ます気になれなかった。
「刑事の勘、ね」
俺は場所を聞くと、難波を呼びつけてそのまま部屋を出て行った。




