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Luck TesT  作者: まきろん
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2nd Stageー11

私は、結斗の家のソファーに座って泣いていた。

あの後、すぐにたくさんのお巡りさんたちがやってきて、それと同時くらいに、救急車も到着した。

まったく目をさまさない結斗達は、早く病院へ連れていった方がいいとそのまま救急車で運ばれていった。

私もついていこうとしたのだが、状況確認のため残るように言われ、嫌だとごねているのをたしなめられている間に、結斗達は連れていかれてしまった。


「2人とも、命に別状はないみたいだよ」


泣いて暴れていた私に、聞かなくてはいけないことを聞き終えたら、必ず病院まで送っていくと、言ってなだめてくれたあのお巡りさんが、ポンッと肩を叩いて言った。


「詳しいことはまだわからないけど、2人とも大丈夫だって、さっき救急隊員から連絡があったよ」


言われて目を大きく見開き、顔をガバッとあげた。


「あと少しだけ、あの人たちが君にいくつか質問したら終わりらしいから、そしたら病院に行こう」


にっこりと笑うお巡りさんに、私は何度もありがとうございます、と頭を下げた。


「――――そしたら、倒れてたんです。2人が」


そう言って、私はリビングの床を指差した。

結斗の家に来た理由、それから、家で何が起こったのか。

話すうちに、何度もその時の事を思いだしてしまい、その度に涙が溢れた。


「君の友達の、お父さんはいなかったんだね?」


聞かれて頷く。


「確か今は、北海道に出張中だって、結斗が言ってたと思います」

「そうか。お父さんの会社の名前はわかるかい?」


私はふるふると首を横にふった。


「あ、お母さんかお父さんならわかると思う……」


そう答えると、実家の電話番号を聞かれたので私は素直に答えた。


「ありがとう。また、話を聞くかもしれないから、その時も協力お願いします」


そう言って、話を聞いていた数名の刑事さんは、何かを話ながらその場を離れていった。


「終わったみたいだね」


お巡りさんが声をかけてきた。


「この子、病院まで送ってきます」


そう言うと、さっき話を聞いていた刑事の一人が、自分も病院へ行くので、車を出す、と申し出た。


「お友達、無事でよかったね」


お巡りさんが声をかけてくる。

私はぼーっと車の外を眺めながら、小さく「うん」と頷いた。

色々と気遣ってくれているのだろう、あれこれ話しかけてくれていたが、私はまるで壊れたレコードのように「うん」とだけ答えていた。


なんであんなことになったんだろ……


そう思ったとき、自嘲ぎみに少し笑みが溢れた。


わかってる。

あのサイトが原因だってことぐらい。


命を狙われていることを知った。

そして、結斗もそれに巻き込まれている。


「どうかした?」


お巡りさんが、顔を覗き込みながら聞いてきたので、思わずはっと我に返った。

そして、なんでもないです、と私は頭をふって答えた。


病院に着くと、警察から連絡が入って状況を知ったお母さんが、慌ててお父さんと一緒に病院に駆けつけていた。


「一体、何があったの?」


私は頭を横にふった。


「警察の人の話では、押し込み強盗じゃないかって言ってたが……」


お父さんの言葉にも、私はただ、ふるふると頭をふっただけだった。


だって、本当に何が起こったのかわからないんだもん。

でも――……


結斗と並んで横たわっているおばさんを見つめた。


このままじゃ、結斗やおばさんだけじゃなくて、お父さんとお母さんにも……


私は考えてゾッとした。


病室まで案内してくれた先生の話しは、私には難しくてよくわからなかった。

ただ、血液検査の結果、強力な睡眠薬をいくつか混ぜて飲んでいる状態らしく、いつ目を醒ますかわからないということだった。


「今日はもう遅いですから、また明日、面会にきてください」


先生の言葉に、小さく嫌だ、と反抗する。


「明日になれば、また状況が変わるかもしれないから」


諭すように先生が私に言った。


「葵……一旦帰ろう」


な?とお父さんが、肩をポンッと叩いた。

その手は微かに震えていた。


「……うん」


私は暫く、結斗達を見つめたあと、素直に頷いた。


「結斗、おばさん。……また明日くるよ」


そう言って、私は両親と共に病院を出た。


何だか色々なことがあって疲れたな。

そんなことを思いながら、ボーっと車の外を窓越しに見つめている時だった。


「葵……これからは何かあったら連絡すぐしなさい」


父の運転する車に揺られながら、そんなことを思っていると、ふとお母さんが言った。

私が首を傾げていると、お母さんは小さくため息をついた。


「帰りが遅いと思って連絡してもつながらないし、その上、警察から連絡がきて……お母さん、葵に何かあったのかと思って心臓が止まるかと思ったわ」


言われて、そういえば、と気づき、ごめんなさい、謝った。


「多分、着信は父さんと母さんで一杯だぞ」


苦笑いを浮かべる父さんに、私も苦笑した。


「あっ……」


スマホを確認しようとして、手元に無いことに気づいた。


どこだろ、結斗の家に行った時には手に持ってた。

それから……


「あっ!」


記憶を辿り、思い出す。


「スマホ、結斗の家に忘れてきちゃった」


ボソッと呟く。


「取りに行くか?今ならまだ警察の人がいるかもしれない」


お父さんに言われて、私はうん、と頷いた。


信号待ちしていたお父さんは、直進レーンから、後方を確認して右折レーンに移動した。

家に帰るのなら真っ直ぐ進むところだが、結斗の家に行くのであれば、ここで曲がった方が早いのだ。

信号が変わり、直進レーンにいた隣の車が進み始めた。


「もう3時か」


お父さんがそう呟いた時だった。


「えっ」


黒い何かが、前を横切っていった。


「きゃあ!」

「なんだっ!?」


大きな衝突音と共に、目の前が夜中だというのに一気に明るくなった。


「大変だっ!き、救急車!」


お父さんが慌てて電話をかけながら、車からおりていく。

お母さんもそれに続く。


「葵、あなたは危ないからここにいなさい!」


パトカーか何かのサイレンが聞こえた気がした。

人が少しずつ、増えていく。


何、これ。


ゴウゴウと燃え盛る炎。

その中心には2台の車があり、人影が見える。


「なんなのよ、これ」


呟くと、涙が溢れた。


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