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Luck TesT  作者: まきろん
25/36

2nd Stageー8

*****

あなたの『運』を試してみませんか?


自薦、他薦は問いません。


ただし、命の保証はありませんのであしからず。

*****


その文章の下に『ENTER』の文字があり、クリックできるようになっていた。

結斗はごくりと喉を鳴らしながら、それをクリックする。


すると突然

『ジャーンケーン!』

と大きな声がした。


液晶に、一人の男の子が笑って手を上下に動かし、まるでじゃんけんを動きをしているアニメーションが映っている。

下には、ぐー、ちょき、ぱー、と、それぞれクリックできるようになっていた。


「じ、じゃんけん……?」


大きな声で、何度も繰り返し流れる男の子の声。

私たちは顔を見合わせた。

結斗が少し考えて、『ぐー』をクリックする。

すると、男の子の声は止まり、可愛らしい女の子の声で『おめでとう!』と声がした。


画面には

『You WiN』

の文字が出ていた。


眉を顰めながら、結斗がマウスを動かしてみると、画面が暗転した。

そして次に出てきた画面は、まるでラスベガスを彷彿とさせるような、チカチカしたページが表示された。


見た目はただのゲームサイト。

だが、ページを詳しく見ていくと、どうやらそこでは『運試し』と称して、簡単なものだと、さっきのじゃんけんに始まり、ポーカーやブラックジャックといったカードゲーム、スロット等々、様々なゲームをプレイして、お金を儲けよう、というサイトであることが分かった。

直接お金を賭ける仕組になっているらしいので、当然違法サイトなんだろう。


「まってよ……こんなの、みたことも聞いたこともない」


思わず口をついて出た言葉はそれだった。

見も知らないサイトから、なぜ、自分を名指ししてメールがきているのか。

訳がわからず、混乱している私をよそに、画面の下の方に『登録状況閲覧』というのがあるのを見つけた結斗は、そこをクリックした。

すると、小さなポップアップが出てきて、そこには、名前を入力してください、と書かれていた。

直接入力できるようになっていたので、結斗は『本郷葵』と入力する。

そのままEnterを押すと、少しの検索時間ののち、現れた画面には、私の写真と、住所や電話番号、今通っている学校などが表示された。


「なっ……!?」

「んだよ……これ……」


私と結斗は顔を見合わせた。

クルクルと、マウスのホイールを回してページダウンしていく。

そして、結斗の指の動きが止まる。

私も、その理由に気付き、絶句した。


*****

■現在のプレイ状況

デッドオアアライブ

■難易度

エキスパート

■状態

プレイ中

■進行状況

2nd ステージ

■協力者

1名:緒方 結斗


*****

「デッドオアアライブって…」


プレイ状況のところに書かれた文字。カーソルをあわせると、文字がクリックできるようになっていて、アイコンが矢印から指のマークに変わった。

結斗がクリックすると、また、画面が切り替わった。

そこに書かれた内容を読んでいくうちに、膝がガクガクと震えてきた。


「どういうことだよ……」


結斗が顔面蒼白になりながら呟く。


「知らない……知らないよ」


そこに書かれていることを、私は内容を理解することができなかった。

……いや、本当は、ただ怖くて、理解したくないだけだったんだと思う。

内容を読んでいくうちに、私の頭の中は真っ白になっていった。


*****

デッドオアアライブは本サイトのメインゲームであり、一番人気を誇るゲームです。

その名の通り、プレイヤーは迫り来る危険を、ご自身の『運』を使って回避し、生き延びていただきます。


結果判定は簡単です。

生き延びればプレイヤーの勝ち、死んでしまうと負けとなります。


なお、本ゲームには難易度が設定されており、難易度は最初にご選択いただきます。

もちろん、難易度によって、賞金は変動いたします。


難易度毎の賞金は、以下の通りとなります。


■イージー

賞金:1000円

■ノーマル

賞金:1万円

■ハード

賞金:10万円

■プロフェッショナル

賞金:100万円

■エキスパート

賞金:1億円


なお、1stステージまではこちらでステージを用意いたしますが、2ndステージからは、お客様から有志をつのり、ゲームを進めてまいります。


どうなるか展開の読めないこのゲーム、プレイヤー参加なさいますか?


現在の参加者数

15879人

プレイヤー数

1人(協力者1人)

現在のゲーム難易度

エキスパート


※命の保証はございませんので、ご注意ください。


*****

私はへなへなとその場に座り込んだ。

結斗はまた、パチパチとキーボードを打ち何かを調べているようだったが、私にはもう、続きを見る余裕なんてなかった。


(……事故だ)


最初に見たあのSMSが不意にフラッシュバックする。


(そう、思ってたけど、違う……ってこと?)


さらに次の事故の後に届いた奇妙なSMS。


(どちらもこのサイトのいう『ゲーム』のために用意されたものだとしたら……?)


もしも、そうだったのだとしたら。


私はただ、運がよかっただけ。


だって、ライブに行かなかったから。

だって、朱美が抽選にもれたから。

だって、朱美にチケットを譲ったから。

だって、警察の人が来て話を聞かれたから。

だって、たまたま、授業を受ける気にならなかったから。


「葵?」


結斗に呼ばれてハッとなる。気がつけば、パソコンの電源を落として、心配そうにこっちを見ていた。


「不安なのはわかる。……泣くなよ」


優しく結斗が、頬を撫で、いつの間にか流れていた涙を拭ってくれた。


「水、持ってきてやるから。ちょっと待ってろ」


結斗に言われて、私はぼんやり頷いた。


リリリリリリリリ……


突然鳴り出した電子音に、思わずビクッと震えた。

私のスマホが、ここぞとばかりに存在を主張する。


お、落ち着け。ただ、電話が鳴っただけ。


ふう、と深呼吸をして、ブルブルと振るえるスマホを手にとった。

だが、ディスプレイに表示されている文字に、思わず眉をひそめた。


『通知不可能』


非通知、は知ってる。

でも、なに。通知不可能って。


怖くて電話に出ることができない。

ブルブルと音を発しながらふるえていたスマホは、やがて、諦めてその主張をやめた。

画面に表示された不在着信の表示を見つめていると、結斗が部屋に戻ってきた。


「どうした?」


心配そうな表情を浮かべて、結斗が傍に腰を下ろした。


「あ……うん」


今あった着信のことを話そうかと思ったが。


「……何でもない」


これ以上、心配させたくない。

たまたま、かもしれないし、非通知ときっと似たようなものだ。

笑ってみせる私に、結斗は少し考えるような顔をしたが、そうか、と答えると、それ以上は何も聞かずにいてくれた。


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