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Luck TesT  作者: まきろん
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2nd Stageー3

学校からの帰り道、結斗とぽてぽてと歩いていた。

途中、結斗が手をつないできた。

少し驚いたけれど、彼の手が震えていることに気づいて、私は彼の手をぎゅっと握り返して、そのまま歩いていた。


「なんなんだろうな、一体」


結斗がぽつりと言った、


「そうだね……」


朱美達が行ったライブハウスで爆発事故が起こり、今度は自分達の通っている学校で、爆発事故が起こった。

まるでドラマや映画を観ているような感覚だった。

どこか現実味がなくて、実はこれはすべて、夢なんじゃないのか?とすら感じる。

そんな出来事が、次々と自分達を襲ってくる。


私は思わず、彼の手を強く握り返していた。


「……大丈夫か?」


結斗が心配そうに顔を覗き込んできた。

いつの間にか、彼の手の震えは止まっていた。


「ん、ごめん。……大丈夫だよ」


心配かけないようにと、必死で笑顔を作った。

思わず溢れそうになる涙を、必死でぐっとこらえる。


それから暫く、お互いに黙ったまま歩いていると、少し先に見える、皆に『開かずの踏切』と呼ばれている踏切の警報機が、けたたましく音たてはじめた。


「あ……」


音が鳴りだしただけで、遮断機はまだおりていない。

この踏み切りに引っかかると、長いときで10分以上待たなくてはいけなくなることがある。

チラリと結斗をみると、彼も同じことを思っていたようで、こっちを見ていた。


いつもなら、走る。

けど。

……でも、なんか……


ふるふると頭を横に振った。

今は、なんとなくだが、そんな気分ではなかった。


私は迂回しようと、くるりと向きを変えた。

結斗も何も言わず、私と一緒に歩く方向を変えた。


「ねぇ」

「何?」

「今日は……これからどうするの?」


聞くと結斗は弱々しく笑いながら言う。


「家でおとなしくしてるつもりだ」


時間はまだ昼前。太陽もまだ高い。

もしも何もなければ、何も起こっていなければ。

こんな日は絶対に遊びに出ている。


「そうだね」


私がそう言ったときだった。


『ねぇ、カラオケ行こうよ!』

『お茶して帰らない?』


朱美の声が聞こえた気がして、思わず振り返る。

少し遠くで、電車がガーっと通り過ぎていくのが見えた。

警報音が、電車の通り過ぎる音と混ざり合う。


「どうかしたか?」

「……ううん、なんでもない」


私は短くそう答えると、行こう、と言って、別ルートを歩き始めた。



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