予選ー9
(どうか神様、無事だと言って!)
駅に着いたところで、改札口でもたもたしていると、偶然、結斗に出くわした。
「お、どうした?葵。そんな血相変え」
「お願い、一緒に来て!」
「え、あ、おい!ちょ、どうしたんだよ!?」
結斗の腕を引っ張り、強引に改札を通る。
「なぁ、どうしたんだよ!」
不機嫌そうな顔の結斗に、私はスマホでさっきの爆発事故が掲載されているネットニュースを見せた。
それを見た瞬間、彼の顔が真っ青になる。
「おい……嘘だろ?まさか、ちげーよな?」
聞かれて、私はわからない、と小さく首を横に振った。
新宿方面へ向かう電車が来たので、私たちは無言で電車に乗り込んだ。
駅を降りると、ものすごい数の人が携帯で電話をしていた。
そして夜だというのに、空が真っ赤に染まっていた。
人もマスコミも、ものすごい数が集まっていて、身動きをとるのが難しいほどだった。
「すみませ……」
行きかう人にぶつかり、思わず転びそうになったところを、結斗が慌てて体を支えてくれた。
鼓動がどんどん速くなり、思考は悪い方、悪い方へとどんどん引っ張られていく。
と、結斗がぐいっと私の頭を自分の方へと引き寄せる。
「大丈夫、大丈夫だよ」
その言葉に、私はすがった。
「そうだよね。ライブハウスなんて、この辺にはいっぱいあるよね」
どこまで近づけるかはわからなかった。
だけど、行かずには、いられなかった。
朱美の無事を、確かめずにはいられなかった。
「大丈夫、大丈夫……」
まるで祈るように、何度も何度もそう、呟きながら、震える手で結斗の手を握って、人の波を縫いながら、一緒に朱美たちがいるはずのライブハウスへと向かって歩いて行った。




