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4.“真実の愛”企画で釣れたもの

 

 結論から言うと。

 フレイの”真実の愛”大作戦は、大成功を収めた。


 待ちぼうけしているカレンとジョンがたまたま隣にいて。

(もちろん待ち合わせ相手はフレイとケビンである)

 向かったカフェで再び鉢合わせして。

(席も隣になるようにお店にお願いしてあった)

 振られたばかりなのだと共通点をほのめかした。

(フレイとケビンが会話の流れを作った)


 その努力が実り、出会ったばかりだというのに会話は盛り上がった。

 作戦決行の直前まで文句を言いたげだったジョンも楽しそうに話していたし、カレンもまた新たな出会いを受け入れているようだった。


 カレンは”運命的”だと感じたらしい。

 男二人と別れてからもカレンはジョンのことを口にした。


「ね、なんだか今日は素敵な出会いがあった気がするわ」

「よかったわねえ」


 計画を練った甲斐もあるというもの。


「私、カレンには幸せになってほしいわ」

「何言ってんの。それは私のセリフよ。人の事にばかり気にかけてないで、自分の事も考えなさいよね」

「え」


 ぎくりと身体を強張らせて振り向くとカレンは呆れたように笑っていた。


 バレているのかもしれない。何もかも。

 そう思ったが、それ以上何も言わないカレンに自ら晒すわけにもいかない。


「いいのいいの。カレンが幸せになれば私も幸せよ。もちろん、お金が手に入ることでも幸せになれるけどね!」

「……はいはい。今度ジョンさんとお出かけしてこようかと思うわ」

「え、ホントに!? 報告楽しみにしてる」

「はいはい。また話聞いてよね」

「任せといて」


 二人並んで歩いたオレンジと紫が混じり合った空は、優しく暖かな色合いで。

 これからを祝福しているようにも見えた。


 カレンと別れ、工房へと帰ると一足先に戻っていたジョンとケビンが出迎えてくれた。

 どちらも紅潮しており、それを見ただけでこの計画は成功したのだとわかるほどだった。


「どうでした? 可愛かったでしょう、カレン」

「……君の友達とは思えないほどには」

「失礼ですね、まだ知り合って数回ですよ、ほんと」


 納得できないと渋るジョンの横ではケビンがけらけらと笑っている。


「俺も興味本位で付いていったようなもんだったんだけど……俺が思ってるジョンに合うだろうなって女の子だったからびっくりしちゃった」

「!!! でしょう! 私もそう思って、声を掛けたんですから」


 自分の目利きが証明されたような気がして、それもまた嬉しくなる。


 つまり、だ。

 ──ちゃんと調べてちゃんと計画を練れば、”真実の愛”は作れるのだ。






 フレイはその後も、ジョンやケビンの伝手を頼りにいくつかの”真実の愛”を作り出した。ジョンはカレンと上手くいっているようだったし、ケビンは惜しまず協力をしてくれた。自分にもメリットが、などと口巻いていたけれど、心底面白がっているようだった。これ幸いと、ケビンには手伝ってもらうことにした。情報収集の人手はいくらあっても構わない。


 フレイの工房の評判は徐々に広まっていった。

 成功した人間が周りに声をかけてくれるおかげで宣伝には事欠かなかったし、フレイも必ず身辺調査を行ったうえで仕事を請け負うことを徹底していたから定期的に成果が得られていた。

 成功する確率が高ければ高いほど、顧客からの信頼度は上がる。だからどの仕事も手は抜かなかった。




 それから一年──とうとう大物が現れる。


「ちょ、フレイ……! なんか工房前にすごい馬車が停まって!」


 ケビンは情報収集から戻ったところだった。なんか目の前に立派な馬車がいるなーと思いながら工房へ戻ってくれば、その馬車も同じ位置で停まったのだ。

 馬車の横をすり抜け、慌てたように扉を押し開けた。フレイを呼ぶ。

 机上で膨大なメモと睨めっこしていたフレイの手を引いて、外へと連れ出した。


 ケビンの言うすごい馬車──荷馬車でもなく大衆向けでもなく、ちゃんと個室の上流階級の人々が使用するそれは、装飾は少なく家門が特定できるものは付いていなかった。

 先に地面に降りた御者が扉を開く。


「おや。控えめにしたつもりだったけれど、もう少し抑えるべきだったか」


 馬車から降りてきた人間は、信じられないことに、隣国トランブールの王子だと名乗った。

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