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幼女の過誤

天上界、ユリアーネの神域では、このところスキップを踏んでいるゴキゲンな創造神の姿が見られる。

神の身を以てしても予知できなかった、封印が浄化されるということが起きるとは思ってもみなかった。

これだから地上世界はおもしろいのだ、とついつい浮かれている。


「妾ですらこのようなことになるとは思っておらなんだ。何ともおもしろい奴が御遣いになったもんじゃ。」


鼻歌でも歌いそうな勢いで、ゴキゲンレベルを上げていく幼女。

とても世界を創造する神とは思えない。


ステップ踏んで、アップライトスピンでもかましそうである。



何やら今日も絶好調な創造神。

その彼女のもとに、突然念話が届く。


『お~い、生きておるか、腐れ幼女。』


ゴキゲンな気分から、一気に奈落へ叩き落された創造神。

でも闇雲に怒鳴ることはしないだけの分別はある。


『……お主からとは珍しいのう。何か良くないことでも起きたのか?』


『いろいろと聞きたいことはあるが、お主シンジの体に何をした。』


念話の相手は竜王ゼルギウスであった。

地上世界の監視をまかせたと言うのに、惰眠を貪るばかりの耄碌ジジィである。


『はぁ、特に何もしておらんぞ。普通にヒト族の体を構築してやっただけじゃ。』


何のことかサッパリ思い当たらぬ創造神。小首を傾げて考える。



『阿呆! 普通にしてあれほどの神気を纏うわけがないじゃろうが!』


『………あ”』


竜王ゼルギウスの鋭いツッコミに言葉を失う創造神。



『覚えがあるんじゃな? あるじゃろうな。あやつは亜神になっておったぞ。お主、つまらん長話で神域に引き留めていたのではないのか?』


『………あ”あ”』


さらにイヤな記憶を穿られて、返す言葉もなく気分はマイナスに。



『お主も耄碌したのう。』


『喧しい! お主に言われたかないわい。』


余計な一言に言い返すのがやっとの有様。



ヒト族であると思いきや、望まぬ種の進化に戸惑うシンジに対して、憐憫タップリの竜王ゼルギウス。


『…よいのか、あのままにしておいて。ワシゃ、あやつが不憫でならんがのう。』


『…う”っ』


最早抗弁の言葉もない創造神。

竜王ゼルギウスが醸し出す憐みが、言いようのない敗北感へと(いざな)う。



『あやつに念話を飛ばせないのか。あれでは後々困ることになると思うがのう。』


『……飛ばせなくはないのじゃ。あやつがヒト族の範疇を越えておるなら可能じゃろう。』


竜王ゼルギウスが示す一つの打開策に、乗った方がいいのかな、という気分がこみあげてくる。

創造神たる者、羽根付きトカゲと揶揄される者の言葉に安息を求めて良いのか?

創造神の自負はないのか?



『伝えておいた方がいいと思うがのう。』


『……………考えておくのじゃ。』


己の過誤を認めずに事を遣り過ごそうとして、やっぱりマズいかとギリギリ踏みとどまる。

羽根付きトカゲの言うがままに、本人へ伝えて良いものか。

地上世界への過度な干渉になりはすまいか、よくよく考える創造神。

結論を先送りしただけの、何処かの政治家のようなその場凌ぎである。



スキップ踏むほどゴキゲンだったのに、羽根付きトカゲの念話一つでブルーである。

でも他の神々には気づかれていないようだ。

このままバックレてもいいんじゃないかな、と思い直す創造神。


心のどこかで囁く声が聞こえる。


「いいんじゃね。」


悪魔の囁きにほくそ笑む創造神。


神にも悪魔が囁くのか?


天上界もなかなかカオスである。


それでも天上界は事もなし。静かに時が流れていく。


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