第十三話 馬車は嫌いです
うぉーーー!!
またやってしまった。⤵️
前回のあらすじ
空白の六年。
いや、だからその言い方はヤバいって。
終わり
「リリィ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です。まだ耐えれまっうぅぅぅ……」
今、馬車の中で吐きかけた。
この馬車、乗り心地は最&デスなのだ。
これが出来の悪い馬車ならまだよかった。馬車を代えればなんとかなるのだからな。
だが、現実は非情。
ほぼ全ての馬車がこの乗り心地なのだ。うぇっ。
淑女として吐くわけには……辛いです。
ガタガタとダイレクトに搭乗者に振動を与え、スピードが一定じゃない。
上下と前後に揺すられ続けているので、船酔いに近い。
「うっ、やっぱり無理です。リリス、あれいいですか?」
「出来るだけ早く慣れた方がいいけど、リリィの体調が一番よね……。いいわ、使いましょう」
リリスの許可が出たので、ポーチから一枚の布を取り出す。
以前、誕生会の為に作成した天女の羽衣の複製品だ。
これを椅子に敷いて座ればあら不思議、上下運動が無くなります。
前後運動は我慢できるのだ。だから、これで吐くことはなくなった。
え?天女の羽衣はどうなったかだって?
燃えましたよ。
家に羽衣欲しさに侵入して来た族がいたのです。
その族が羽衣を盗って家から逃げたんですけど、こんなこともあろうかとある付与をしてたんです。
一日に一度しか使えず、更に濡らしてから三時間しか使えないようにしました。
いつか盗られると思ってたからね。仕方無いね。
この決まりを破ると自動的に燃えるようにしてたんですがね。
なんと、隣の領の貴族宅が燃えちゃったらしいんですよ。
盗まれて直ぐに起きた事件なので十中八九、彼方さんの仕業で羽衣は燃えたんだろうなって思いました。
ぴーけーファイヤー!
アウトだな。止めとこ。
複製したこれは、魔法の絨毯みたいに自由に飛ばないようにしました。
せいぜいが、3ミリ浮く程度の能力だ。動く機能は付けてないから本当に浮くだけ。
これならバレない。
おや?
まだ遠いけど、幾つか尖塔が見える。あれが学校かな?
俺が通う女学校は隣に貴族の子弟が通う貴族学校がある。
貴族学校には将来、家を継ぐかもしれない貴族の子弟…つまりは男子しか通えない。
女学校は貴族の血を引く女子やお金持ちの家に産まれた女子が通うことになってる。
やっぱり、あれだな。
跡取りは男しか認めてないのだろう。
まぁ、跡取りとして教育を受けずに済むからいいんだが。
少しだけ、イラッとする政策なのは間違いない。
そんな学校に漸く付いたのだ。
ほんと、長い旅路だったよ。
馬車に数日も揺らされるとかただの苦行。
車が恋しいですな。
「リリィ、見えますか?あれが貴女が通うニビラ王立女学院ダンフォーよ」
リリスは馬車の小窓から低い尖塔の方が俺の通う方だと教える。
つまり、反対側の高い尖塔は貴族学院とかいう貴族主義のイカれ達が通う学校になる。
無駄にでかい。
国民の血税で何をやってるのやら、と言ってやりたい程にでかくて芸術的価値がありそうな建物だ。
関わることは無いからどうでもいいや。
「リリス。着いたら、先ずは何処に行くのですか?私、何も聞かされてませんけど」
「門で簡単な身分証明を求められる筈です。この時期は学院の教員が常駐しているので、その者が案内をします。リリィは少々有名だから珍しがられると思いますよ。最年少入学者なのですから」
「え?私、七歳ですよ?これぐらいから通うのでは?」
「普通は十二歳からですよ。早くても十歳だったと記憶しています。七歳での入学は普通なら無理です」
「それは目立ちますね。でも、上位の貴族や王族はもっと早く入れるんじゃないですか?」
「入学するのに学力がある程度無いと駄目です。半年前に広範囲の問題を解いたでしょ?あれが入学試験です」
確かに、半年前にテストをした。
範囲は広かったが簡単な内容だった。
日本で言うところの漢字テスト。
足す、引く、掛ける、割るの算数。
国内の地理、歴史。
魔法の初歩的理論。
こんなのだった。
範囲が広い為か、簡単だったので直ぐに終わったやつだ。
ずっとリリスに教えられてきて、時々するテストの方が深くて難しいから入試だと思わなかった。
うん、小学生から中学生になる頃合いだと考えれば妥当な難易度だと思う。
金持ちの教育は結構しっかりしてるのだ。
貴族社会なのに礼儀作法の試験は無いのだろうか?
「リリス。私、礼儀とか作法の試験を受けた覚えはありませんが。いつしました?」
「学院がそれを教育するのですよ。女性にはある程度の教養さえあれば、後はそれらさえ教えてしまえば終わりだと思っているのですよ。この国は」
うん、女性の立場って低いね。
でも、仕方無いか。
女性の立場が向上したのは前世で数十年前からだしな。
ここは前世が狂った発展をしたからそうなったのだらうと思うか。
門から人が走ってきて、身分証明しろって言われたから、リリスがママンから貰った紙を渡した。
兵士っぽい人は平謝りして門に走っていった。
リリスは人前ではオバチャンモードになる。厄介事を避けるためだ。
だから、リリスの正体が気付かれてあんなのになったわけでは無いと思うで候う。
ママンの経済力による、ぶん殴り通行書だったのだろう。くわばらくわばら。
また門から人が歩いてきている。
さっきの兵士より教養が高そうだから、学院の教員だろうか?
少し悩んだが、俺は敷物を片付けた。まだまだ馬車の劣悪運動になれてないが、来てる人が入ってきた時に不信がられ無いために仕舞うしかないのだ。ちくしょぅ。
早くも、明日学校に隕石でも降って無くならないかな?という、誰もが考えるやる気の無い状態になってしまった。
実際、隕石とかで学校が消えたら
どうなるんですかね?
休校?
普通に他の学校に生徒をバラけさせて
勉強させるのでは?




