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意味

 エドはついに満足のいく言葉を見つけたのか、納得した表情をして俺たちの疑問に優しい口調で答えはじめた。


「自分たちの文化と歴史をこれから生きる人々に伝え残すためだ。かつては何十、何百の文化が同じ星でひしめき合っていた。文化と土地は人間が文明という物を持ちはじめた頃から脈々と受け継がれた。だが、次第に土地が意味を持たなくなって、いずれは文化ですら意味を持たなくなるかもしれない。それでも、人々は自らの土地と文化を残したいと思ったから、建てたのだ」


 エドの言葉を俺は必死で理解しようとしたが、すぐにはできず、彼の言葉を完全に理解できたのはこの時から何年も経った後となる。だけど、彼の答えは何故だか納得のいくもので、俺は理解はできなかったが満足だった。レイとセイジの二人も同じ思いを抱いていたと思う。


 エドと俺たちはまた歩きはじめた。サークルの中へと入っていくと、思っていたよりも広い。俺たちは石でできたサークルの中をただ歩き続ける。歩き続けているとあることが俺の頭の中に浮かんだ。


「コレってどういう意味で建てたんだろう? 」


 気がつくと思わず呟いていた。それに気づいた様子のセイジが、


「確か、ストーンヘンジはどんな目的で造られたのか理由はわかってないはずだ」


 と返してくれた。さすがは歴史に詳しいだけはある。さっきのエドとの会話も実はセイジが一番理解していたのかもしれない。そう思いながらセイジに礼を言ったあと、俺はまた思考の渦に嵌る。“意味”という言葉に引っかかって、自分が今ここにいる意味がわからなくなった。


 サークルを見回しながら、俺はまたしても“居場所”や“意味”について考えている。そんなことを考えても良いことはないというのに。レイとセイジは俺から少し離れた場所でそれぞれ石像を観察している。俺の考えはどんどん落ちていく。


「悩んでる様だね」


「うわあ! 」


 すると、思わず叫んでしまったが、エドがいつの間にか近くまで来て俺に声を掛けた。彼はどうやら俺の心を見抜いているようで、俺は今思っていることを話すことにした。


「…… 母は家を飛び出して、父はそれを追いかけようともせずにいたから俺は思わずアイツを殴ったんです。その勢いで俺も家を飛び出して…… 、生活にウンザリして飛び出した俺にもう居場所とかあるのかな、旅してる意味ってなんなんだろうと思うんです」


 俺の目からは少し涙が出ていた。エドは俺を優しく見てくれていたのだと思う。レイとセイジは、俺が泣いていることに気づいていない。エドは俺が泣き止むのを待ってくれた。数分間、温かな静寂がこの辺りを包んでいた。


 俺がある程度泣き止んだところで、エドは話を再びはじめた。


「今、この旅に意味を見出せなかったとしても、いつかその意味に気がつく日が来るのだよ。それが人生って物だ」


「どうして、そう断言できるのですか? 」


 俺は思わず訊き返してしまった。それでも、エドはさっきまでと変わらぬ顔で話を続ける。


「言ったじゃないか。私だって旅をした。理由を言葉にできずに旅を続けていたらある時遂に気づいたんだよ。自分が旅をしている意味を、そして、自分が大事だと思えるモノを」


「その大事なモノってなんですか? 」


「それは、自分でいつかわかる」


 この時エドは肝心な答えを俺に教えてはくれなかった。なぜ教えてくれないのかと訊くと、その答えは他人に言われても実感が湧かないだろうから今は教えない、と彼に返されてしまった。それでも、俺は数分前よりも気が軽くなっていく感覚があった。この紳士は俺のことをしっかりと見てくれていたのかもしれない。そう思うと心が少しだけ救われた。



 エドの屋敷に戻ったあと、俺たち三人は今後のことを決める方針会議を行うことにした。机に地図やデバイスを広げて、特に必要ではなかったが準備を念入りに整える。三人がそれぞれのイスに座ったところで会議は始まった。俺から今回の議題を切り出す。俺にはある一つの結論が出ていた。


「…… この二日間で俺思ったことがあるんだよ。まだ、自分が旅に出た理由をみつけられてない。そう思ったら、見つけるまでは旅を続けたいと思った。…… 理由にはなってないかもしれない、でもそれを探すために旅をしたい。…… ダメかな? 」


 俺は恐る恐る提案をする。ダメと言われるかもしれないと思っていたが、意外なことにすぐにセイジが、


「いいぜ。俺もまだいろいろな星を見に行きたいし」


 と言ってくれた。それに続けてレイも


「僕もそうだし、まだ旅を続けようよ」


 と思っていたよりも明るく返してくれた。今度は二人に心を助けられた気がする。

俺たちは全会一致で旅を続けることにした。



「そうか。じゃあ、船を改造しないとな」


 会議のあと、俺たちがここを出て旅を続けることを告げると、エドはこう返した。


「どうしてですか? 」


 レイがエドに尋ねる。すると彼はこの周辺の領域は進む航路によっては、海賊などがいて危険だと告げた。だから襲われた時のために船に自衛のための装備を付けた方が良いと助言を受け、俺たちは迷わず彼に自衛用の装備の取り付けを彼に頼んだ。


 船の改造には四日を要した。その間、俺たちはニューロンドンの散策をして時間を潰し、誰に渡すでもないお土産などを買い漁った。エドは船にどれだけの装備を積んだのかは俺には全てを把握できなかった。レイでさえ、全てを確認できたか怪しい。こうしているうちにエドとアルフレッドに別れを告げる時が来た。


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