旅の続き
あの旅から一年くらいの月日が流れた。あの後、俺たちは“町”に戻って何気ない日々を生きている。その中で俺は誰もいなくなった家で一人で暮らしている。父はあの後どこかへ行ってしまったきり帰ってこなかった。母については父と大喧嘩した時、事故に巻き込まれて死んでいる。結局、俺の家族はもう元には戻らなかった。
学校に通いながら俺はバイトをしている。お金を貯めて、ある物を買う。そのためだった。学校終わりに俺はレイとセイジに会うことにした。二人に連絡を取る。もちろん二人は快く引き受けてくれた。いつもの公園まで道を急ぐ。やっとお金が貯まった。これでようやくあれが買える。
公園に着くと、レイとセイジが待ちくたびれた様子で俺を待っていた。
「ワタル、遅いよ」
「ああ、おせーぞ」
「ごめん。ごめん」
俺たちは一つのウッドテーブルを囲うように座る。レイの手元にはデバイスがあって、画面には様々な船の画像が映し出されている。
「で、お金は? 」
レイが俺とセイジに尋ねてきた。俺はすぐにデバイスを開いて、銀行の帳簿をレイに見せた。セイジもそれに続く。
「目的の額まで行ったな」
「ああ、そうだな」
「だね。じゃあ、話を始めるか」
そう言って、俺たちはレイのデバイスに目を合わせた。
「どれが良いか…… 」
「だな」
「これとかいいんじゃない」
俺たちは懲りていなかった。三人でお金を持ち寄って船を買おうとしている。今、どんな船が良いかで俺たちは悩んでいた。それを考えている俺は楽しいし、レイとセイジも楽しそうだった。ああでもない、こうでもないと考えている俺たちはどうしようもない旅好きなのだ。じっくり考えていると日が暮れはじめた。夕日が綺麗に見える。
「これにしようよ」
「お、良いな」
「オッケー」
ついに船が決まった。今度は隼のような形をした船にすることにして、レイが船の購入手続きを始める。
「なあ、次はどこの星へ行くか? 」
セイジが次の話を始めた。そう言われて、俺は考えを巡らせた。どこへいこうか。何をしようか。それ考えていると、俺はまた楽しい気持ちになった。
「…… 俺たち、なんでもできるな。これから」
ふと俺は言葉を放った。それを聞いたレイとセイジはすぐに返しの言葉をかけてくれた。
「だな」
「…… そうだね」
夜も遅くなってしまったので、俺たちは家に帰ることにした。
「じゃあ、また明日」
「また明日! 」
「またな」
そう言って俺たちはそれぞれの帰路に着いた。歩きながら俺は今度の旅の行き先のことを考える。どこにしようか。その話は結局、今日は結論が出なかった。明日考えよう。人生の旅はずっと続いていく。その中で俺は、俺たちは何をなすのか。これからも人生の意味を探す旅は続く。そう思った時にふと空を見上げると、綺麗な星空が見えた。この星々に思いを馳せながら、俺は帰り道を歩いた。
(Fin)
まず、この作品を手に取って読んでくださり、ありがとうございます。この物語を思いついたのは世間がコロナウイルスで騒いでいた四月初めでした。家出をした少年たちが旅先で出会った人たちとの関わりを通して、彼らの成長を描きたい。そう思ったら、同時にSF的な設定が頭に浮かんで、最終的にはこの形に落ち着きました。
ワタル、レイ、セイジの高校生三人は、宇宙を冒険して一回りも二回りも成長をします。その成長を促したのは、間違いなくエドやアリス、シエナなどの大人たちとの関わりです。一方で、その大人たちもまた、高校生であるワタルたちを見て、感化され彼らのために持てる知恵と勇気を出していました。当作を書いて私は、この関係性は我々にとって何か大切なことを伝えているような気がしています。
ワタルたちはこれからも旅を続けることでしょう。でも、彼らはこの冒険を通して、人に助けられて大きく成長しました。だから今度は、彼らが、誰かを助ける番なのではないでしょうか。
この物語で、脈々と受け継がれた人生のバトンが引き継がれた瞬間を描けたのなら、私はとても満足です。
石嶋ユウ




