003話.約束
「世界を支配する魔神からこの世界を救いたい。そのためなら何でもする。だから・・・ご助力を・・・」
地面に頭をこすり付けるダークエルフの横をペリエが死体を引きずり宿営地に隣接する森の中へと放り込んでいく。
「ねえ、あんなに頼んでるんだからさ。無視するのもかわいそうだよ。何か条件を付けてあげるとか・・・」
ペリエがダークエルフの行動に見かねて助け舟を出そうと肩に乗る鍵妖精に助け舟を出す。
「そうだね。もしかしたら僕達の手助けをしてくれるかもしれないかもね」
すると鍵妖精のキーがダークエルフのところへと飛んでいくとこう宣言した。
「ならば、お前が共に戦う仲間を連れて来るか誰かがお前の事を、僕達の仲間だと認めれば僕達と行動を共にする事を許すよ」
すると地面に頭をこすり付けていたダークエルフが顔を上げ満面の笑みを浮かべた。
「本当ですか。ならば仲間を探してまいります」
「仲間は、誰でもよい訳ではないぞ。荷物持ちとか料理人とか使えんやつはダメだぞ。なるべく強くて戦力になるやつを連れて来るのだ」
ダークエルフは、すっと立ち上がると後ずさりをしながら夜の闇の中へ音もなく消えていく。
「帰ったね。でもこんな暗い夜に矢で人を射殺すとかまるで暗殺者みたいだね」
「そうなのだ。あの手の輩は、単独行動こそが己の能力を最大限に発揮できるというもの。そこに下手な仲間など連れて来ても邪魔になるだけだとと思うんだよね」
ペリエと鍵妖精のキーは、集めた薪を鉈で割りながら小割りを作り焚火で湯を沸かし買い込んだ肉と野菜で簡単なスープを作り始める。
スープが出来るまでは、道具屋で買った魔法ランタンにかけられた呪いを魔石に移す作業を地道にこなしていく。
「どう。この魔法ランタンにかけられた呪いはけっこう大変?」
「大丈夫。あと少し・・・終わった」
すると魔法ランタンが幻想的な淡い青い光を放ち始めた。
カタカタを小さく揺れる魔法ランタン。そこから見た事のない妖精がちょぴり顔を出して辺りを伺う。
鍵妖精が魔法ランタンの元へと飛んでいくと顔を出した妖精となにやら話を始めた。
とはいえペリエは、妖精達の話す言葉は全く分からない。
「ずっと魔法ランタンの中にいてご飯を食べてないから何か食べたいって」
「ずっとって・・・どれくらい」
「100年以上だって。でもね、僕達妖精は、大地から生命力を得るから食べなくても生きられるだ」
鍵妖精のキーの説明を聞きながらスープを皿によそい、魔法ランタンから出てきた妖精に皿を差し出す。
すると一瞬のうちに皿が空になった。
「・・・すごい。お皿のスープが無くなってる」
「僕達妖精は、以外と食べるからね・・・ははは」
確かにペリエと行動を共にする鍵妖精のキーも、人族の大人の数人分のご飯を平気で平らげる。
魔法ランタンから出て来た妖精は、空になった皿の中をじっとみつめ、さらに鍋の中のスープをじっと見つめる。
ペリエは、街から買って来たパンをそっと妖精の前へと差し出す。するとまたまた一瞬でパンが無くなってしまう。
慌てて鍋のスープを空の皿によそい妖精に渡すと・・・空になった皿が目の前に差し出される。
それの繰り返しを何度か行った頃、ペリエがまだ何も食べていない鍋の中は、すっかり空になっていた。
「ぼっ僕のご飯が・・・」
空になった鍋の中を思わず覗き込んで見るもスープが湧いて来る事もないので、仕方なくパンで空腹を満たすしかなかった。
ただ、ペリエがパンを食べている横で魔法ランタンから出て来た妖精がパンを食べたそうに指をくわえていた。
次の日、背負った鞄にふたつの魔法ランタンを引っ掛けて宿営地を出た。
昼頃には、ゼブラの街の城門をくぐり街の武器屋と魔道具屋を回る手はずである。
ところが街中の街道を歩いていると前方から冒険者風の男達とどこかで見た褐色の肌をした女性がこちらに向かって走って来る。
「あれって宿営地で見たダークエルフのお姉さんだよね」
ペリエの言葉に肩に乗る鍵妖精が嫌な顔をした。
「仲間を連れて来いとは言ったけど、あれはどう見ても仲間じゃなくて追いかけられているようにしか見えないね」
するとダークエルフのお姉さんは、ペリエの背中の影に隠れると一方的に言い訳の様な言葉を口走った。
「こいつらを魔神を倒す仲間にと誘ったんだが、いきなり私の胸と尻をさわりまくったのだ。頭にきたので矢を射かけたらそいつは死んでしまった。私は悪くはない!」
ペリエの影に隠れて自分は、悪くないと必死にいい訳?を繰り返すダークエルフのお姉さん。
それを見ていた冒険者風の男達は、開口一番に言い放った。
「さては、こいつお前の仲間だな。俺達の仲間を殺されたんだ。黙って帰す訳にはいかん」
その言葉を聞いた途端ダークエルフは、満面を笑みの浮かべペリエの顔を覗き込んだ。
「あいつら、私の事をペリエ殿の仲間だって言った・・・私は、私は・・・ペリエ殿の仲間と人から認められた・・・」
ペリエの肩に乗る鍵妖精のキーが顔をかきむしりながら言い放つ。
「確かにそう言い出したのは僕だ。分かった分かった。お前を仲間にしよう。だが目の前の連中をどうにかしてくれ」
「承知した!」
その瞬間ダークエルフは、持っている弓を構えると取り囲んでいる冒険者風の男達4人に向かって次々に矢を放つ。
鍵妖精のキーは、話し合いで事を済ませて欲しいと言いたかったのだがダークエウルフは、目の前に敵と認識できる者がいれば、それは殺す以外の方法など選択肢にはない。
そして街中の大通りに4人の冒険者が屍をさらす事になってしまう。
「これってどう思う?」
「あんまり良くないよね」
「逃げる?」
「でも食料がないから買わないと」
ペリエと鍵妖精のキーは、こと切れた冒険者風の男達を街道に残したまま市場へと向かった。
「まっ、待ってくれ。私も仲間なのだ。連れて行ってくれ!」
ペリエの後を必死に追う仲間になったばかりのダークエウルフ。
そこに入れ替わる様に現れたのは、この街の警備隊である。
「冒険者を殺害した連中は、どっちに行った!」
見物をしていた連中は、思い思いの方向を指差して警備隊の行動をわざと妨害する。
「ええい。だからどっちに行ったんだ!」
するとひとりの男は、こう言った。
「警備隊が来るからって西門に向かったってよ」
ひとりの女性は、こいって見せた。
「私は、東門に行った様に見えたよ」
さらに別の男はとんでもない事を口走る。
「領主の館を襲うって10人くらいの武装した男達が走っていったぞ!」
周囲の見物人が全て違う事を口走る。それを見ていていた警備隊員の顔が途端に真っ赤になる。
「ええい、どれが本当なんだ!」
すると誰もその答えを言うものはいない。実際のところペリエ達が市場の方向に向かって行ったのは、ここで事を見物している者達の全員が見ている。
「くそ。とりあえず西門と東門を封鎖しろ。それと領主の館の警備を厳重にするようにと伝令を出せ!」
街の警備隊は、幾つかの小隊に分かれるとペリエ達の後を追った。だが、ペリエ達がどんな風体なのかも分からない。分かっている事は、ダークエルフの女が一緒にいる事くらいだ。
さて食料を買い込みに市場へと向かったペリエ達。
当然ながら警備隊も市場へと向かった。この街の警備を行っている以上、何処に人が行くかくらいわかっているのだ。
そして市場で黒いローブを着たダークエルフを見つけるまでにたいして時間はかからなかった。
警備隊がペリエ達を取り囲むと剣を抜き威嚇を始める。
「おい、そこのダークエルフ。お前が冒険者を殺したとういう輩だな!」
そう言い放った警備隊がダークエルフのローブのフードをはがした。
するとそこには、しわくちゃの顔をしたダークエルフが現れた。
「私の様な老婆に何用じゃ」
警備隊員達は、冒険者を殺したのは若いダークエルフだと聞いていた。まさか年老いた老婆が冒険者と戦い男達を殺すなんてできるはずもない。
「すっ、すまん。若いダークエルフを探している。冒険者を殺した様でな」
「そうかい。私も若い時分は、ずいぶんと男達を腹の上で殺したもんさね。カッカッカッ」
しわくちゃの顔がニタニタを笑い出す。
警備隊は、しわくちゃの老婆の前からそそくさといなくなると市場の中へと消えていった。
市場で買い物を終えたペリエ達は、しわくちゃな顔をして杖を付いて歩く老婆と共に城門を通り抜けると、ゆっくりと歩いてゼブラの街をあとにした。
そしてしばらくするとしわくちゃの顔が以前の様な綺麗な若い顔に戻っていた。
「僕の老婆になる呪いがあってよかったね」
ペリエの言葉にふくれっ面を浮かべるダークエルフ。
「あんまりではないか。いくらダークエルフが長寿とはいえいきなり老婆にされては驚くではないか」
「でも、あの呪いが無ければ街で警備隊に捕まっていたよ」
「まあ、そうなんだが。それにしてもよくとっさにあの様な呪いを繰り出せるものだな」
「僕は、魔法使いだけど普通の魔法って使えないからね」
「そうなのか。あっ、そうであった私の名前はシルキーだ。ペリエ殿、これからよろしく頼む」
こうやってダークエルフのシルキーは、ペリエと仲間となり旅をする事になった。
街道を進み次の街を目指して歩いていると、草原に簡単な柵で囲われた小さな宿営地が現れた。
「日が落ちるまでまだ時間があるけど今日は、ここに泊まろう」
ペリエは、背負った鞄を下し野営用の幕を広げて幕を立て始める。ダークエルフのペリエは、草原から枯れ枝を集めて焚火の準備を始めた。
「ここは、木々があまり無いから焚火が集まらないな」
「鞄の中に少しだけ炭があるからスープを作るくらいなら何とかなるよ」
徐々に暗くなり炭が徐々に赤い熱を帯びてきた頃、スープもいい具合に出来た。
毎晩作るスープは、相変わらず野菜と少しの肉が入ったもので味付けは塩のみ。お世辞にも美味いものではない。
それでも食べるものが無く腹を空かせて日々を過ごす事が無いだけでもそれがどれだけ幸せか。
そう思いながら食事を済ませると何やら甘い匂いが辺りに漂い始めた。
「何の匂いでしょうか。美味しそうな・・・」
ペリエが匂いの元をたどっていくと、そこには魔法ランタンから解放された妖精が見た事のないお菓子をほおばっている。
「何を食べてるの?」
「異世界のお菓子」
「・・・・・・」
思わずペリエとシルキーと鍵妖精のキーは、思わず顔を見合った。
魔法ランタンから解放された妖精は、とんでもない事を口走った。
12月19日(土)に冬キャンプに行ってきました。※キャンプ2回目です。
場所は、道志の森キャンプ場です。
キャンプ場について設営を始めたらみぞれが降ってました。
夜の20:30で氷点下2.5度。朝7:00にマイナス1.9度です。
夜になって風が出て来て寒すぎて外で焚火をやってる場合で無くなり、仕方なく幕内でガスストーブとポータブル電源に接続したホットマットでぬくぬくしてました。
1月にまた冬キャンプに行ってきます。
◇フェアリーランタン ~現世界Side~
道志の森で魔法ランタンと冬キャンプ
https://youtu.be/E5koSWCQ7DQ
◇魔法ランタン
https://youtu.be/rhFhjx9aPEE
◇フェアりーランタンの世界観を楽しむにはこちらもどうぞ!
僕の盾は魔人でダンジョンで!
https://ncode.syosetu.com/n2862ff/