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フェアリーランタン ~異世界Side~  作者: 純粋どくだみ茶
16/45

016話.三姉妹の故郷

挿絵(By みてみん)

魔法ランタン(フェアリーランタン)


ペリエ達が街から姿を消したあと三姉妹がどうなったかというと。


「我らがパップの街に来るのがもう少し遅かったらどうなっていたか」


「そうだな、お前達には感謝する。きっと魔神様もお喜びになるだろう」


「光栄でございます」


三姉妹は、パップの街の住民達に捉えられ牢屋に幽閉さていた。


街の市場を破壊しケガを負わせた住民への補償を求める住民。対して三姉妹は、魔神の命による行動について一切の補償を行わないと言い張った。


三姉妹は、雷魔法を得意とする魔術師である。


魔法を使えば牢屋など出る事は容易い。それに街には、警備隊もおらず魔術師に対抗できる装備も兵士もいない。


「メイリア姉様。いつまでこんな牢屋に入っているのですか」


「そうです。飯も不味いしこんなところにいては、奴らを逃がしてしまいます」


「お前達、私の作戦名は”サファイア”だ。本名のメイリアで呼ぶんじゃないと何度も言ってあるだろう」


「メイリア姉さま。この期に及んで作戦名もないでしょう」


「そうです。早くやつらを追わないと村が・・・」


「分かっている。ここを出るのは住民が寝静まる夜だ」


三姉妹は、長女がメイリア。次女がアメリア。三女がエメリアというのだが作戦中は、本名ではなく作戦名という別の名前で呼び合っていた。


長女のメイリアはサファイア。次女のアメリアはルビー。三女のエメリアはエメラルドという具合だ。


これを考案したのは、長女メイリアだが次女と三女には、あまりうけが悪くなかなか定着しない。


しかも作戦名に”~姉様”と付けてしまい三姉妹が姉妹である事もすぐにばれてしまう。


いろいろぐだぐたな三姉妹であるが彼女達は、何も好き好んで魔神のために戦っている訳ではない。


魔神に支配された王国。さらにその支配下にある街や村のひとつに三姉妹の故郷の村もあった。


国王は、魔力の高い子供を見つけると魔神に子供を差し出した。さらに子供達の故郷に住む人々を人質にし魔神に逆らった場合、故郷の住民を皆殺しにするという無慈悲な行為を繰り返した。


三姉妹も幼い頃に魔神に差し出され、親とは離れ離れで暮らしていた。


そして魔神のために働く事を教えられて育ち、人を傷つける事などいとわない感情の希薄な人へと成長した。


ただ、辛い日々を共に送る姉妹のあいだでは、共に助け合い故郷を守ると誓い合った。


そして魔神の命に従いいくつもの街や村を焼き払った。三姉妹の故郷の村と両親を守るために。


今回も魔神の命に従い人族の子供とダークエルフの女の暗殺にやって来た。


いや暗殺などというものではない。誰がいようと誰を巻き込もうと命じられるがままに対象となった者を殺すのだ。


そして三姉妹が雷の魔神の命を受けペリエ達を暗殺に向かった。


魔神は、三姉妹を信用していた訳ではない。それどころか三姉妹には、妖精と共に行動する人族を暗殺できるなどと考えてはいなかった。


そして三姉妹の後を追うように監視部隊も密かに後を追う。


彼らは、地方都市に監査官を派遣するための護衛部隊という事になっていた。


王国の各地に点在する地方都市を巡り監査官を派遣し、情報収集するという建前のもとに三姉妹の行動を監視しもし反旗を翻す事があれば彼女らを消し、故郷おも消すのだ。


そうやってこの魔神に支配された大国の多くが生き延びて来た。


魔神に支配された王国もまた立場は違えど三姉妹と同じ境遇なのだ。


そしてバップの街の牢屋に閉じ込められていた三姉妹は、街にやってきた魔神配下の部隊により救出され街を出る事が出来た。


「メイリア姉様。やつらがこの街を出てから既に半日近く経っています。急がないと奴らの痕跡が消えてしまいます」


「分かっている。だがあの蛇には気を付けろ」


「あんな魔獣を使役しているなんて聞いていませんでした」


「魔神様の話もあてにならんな」


三姉妹は、愚痴を言い合いながらも街道からそれて森の中へと続く足跡を追っていく。


そして三姉妹の後を追うようにバック隊長率いる追跡部隊も街道を進んで行く。


「私達、風の魔神様の命により彼らを追跡しているのに」


「それが雷の魔人の部隊を追う羽目になるとは」


「ははは。物言いようだ。我らは、妖精を連れた子供とダークエルフを追っているのだ。決して雷の魔人の部隊を追っている訳ではない。たまたま行先が同じだけだ」


「まあ、そうですが。でもあの三姉妹ともめ事だけは勘弁ですよ」


「そういえば、あいつら見ただけで姉妹って分かるくらい顔がそっくりだったな」


「あそこまで似る姉妹も珍しいですよね」


任務中ではあるがそんな笑い話をしながら森の中を進む追跡部隊の面々。だが森の中に残る足跡と共に何か這いずった跡を見つけ緊張感が走る。


「バック隊長。この跡は・・・」


「間違いなく魔獣が付けた足跡だ」


「この形からすると」


「パップの街の外で見た大蛇の跡だな」


そして森の木々には、魔法を放った跡があちこちに残っていた。


「やつら大蛇と戦ったのか」


「でも変です。魔法をあちこちにぶっ放しています」


「パップの街の外で見た大蛇は、1体でしたがまさか魔獣が複数いるのでしょうか」


隊員達は、周囲を警戒しつつ森の先へと進む人と魔獣の足跡を警戒しながら追っていく。


すると森の奥から閃光と共に何かが爆発する音が響いて来た。


追跡部隊は、森の木々を盾にしながらその閃光と音がする方向へと進んで行く。


すると目の前では、バップの街の外で見た大蛇と三姉妹の戦う光景が繰り広げられていた。


「アメリア姉さま。この蛇、動きが早すぎて魔法が当たらない」


「エメリア。そっちに追い込むから魔法を!」


「何で魔法が当たらないのよ!」


三姉妹が放つ雷魔法は、大蛇の脇をすり抜け森の木々や地面に直撃する。


雷魔法を放たれた大蛇はというと魔法を避ける訳でもなく、木々の合間をするすると走り抜け三姉妹をほんろうしていた。


その光景を木々の影から見ていた追跡部隊の面々。


それを見ていてある違和感を覚えた。


「なんだか雷魔法の照準が曖昧ですね」


「やはりそう思うか。あれではわざと当てていない様に見えるな」


隊員の魔術師達の話を不思議に思ったバック隊長。


「それはどういい事だ」


「三姉妹が放つ雷魔法ですが・・・、ほら今も大蛇のすぐ横に命中しました。またです。私には、わざと魔法を外している様に見えます」


「私にもそう見える。魔法は命中しなければ意味がない。あそこまで腕のある魔術師なら当てて当然だ」


「あの大蛇が反射魔法や魔法防壁を張っている事はないか」


「それなら発動した魔法障壁が目に見える形で現れます。ですがそれが全く見えません」


追跡部隊の面前では、相変わらず三姉妹が大蛇にほんろうされ続けている。


そして大蛇のしっぽの先端が森の木々の合間から三女のエメリアの横っ腹に直撃する。


「きゃーーーー」


エメリアは、器用にも森の木々の合間を通り向け遥か彼方へと飛ばされていく。


「エメリア!」


次女のメイリアが叫ぶが既に姿が見えないエメリアに届くはずもない。


そしてエメリアの横っ腹を直撃した大蛇のしっぽは、次女のアメリアの眼前に迫っていた。


アメリアは、必死に雷魔法を放つ。放つ。放つ。


だがなぜか雷魔法は、大蛇にではなく大蛇が通り抜けて来た木々へと命中していく。


「なんで魔法が当たらないの!」


必死に魔法を放つアメリア。そしてアメリアの頭の上に振り下ろされた大蛇のしっぽ。


アメリアは、物理障壁を頭上に展開してそれを避ける様に身構えた。


本来であれば大蛇のしっぱは、物理防壁により跳ね返えされるはずであった。


だがなぜか物理防壁は、大蛇のしっぽを無理なく通過させてしまった。


その様子をゆっくりと時が過ぎていく様に見つめるアメリア。


「うそ・・・」


身構えたアメリアの頭上に直撃する大蛇のしっぽ。


それにより脳震盪を起こし地面に膝を付き倒れ込むアメリア。


長女のメイリアは、その様子を目の前にしていた。


「アメリア!」


叫んでは見たものの微動だにしないアメリア。


その間も大蛇に向かって雷魔法をひたすら放っていくメイリア。


「くそ。なぜ魔法が当たらない!」


メイリアは、森の木々を盾にしながら必死に大蛇の追撃をかわしていく。


そして気が付けば森の木々の切れ間へと追い込まれていた。


「くっ、後がない!」


しかも足元には、10m程の崖が続きその下には川が流れている。大蛇であればこの様な崖など大した高さではないが人族にとって10mの高さの崖を飛び越える事など出来ない。


メイリアは、必死にこの崖を飛び越える方法を考えた。だが浮遊魔法はあまり得意ではないメイリアにとって呪文の詠唱時間は、大蛇に格好の攻撃の間を与えてしまう。


そんな事を考えているとお約束の様に石につまずき崖から落ち、さらに崖の底を流れる川にはまりそのまま下流へと流されていった。


その様子を大蛇の頭の上で見ていた鍵妖精のキー。


「あれ、あっけない結末になっちゃった」


そしてするする崖を飛び越え森の木々の中へ姿を消す大蛇と鍵妖精のキー。


その光景を魔法で確認していた追跡部隊の面々。


大蛇が居なくなった事を確認すると集まり面前で行われた闘いの評価を始めた。


「どう思いますか」


「三姉妹は、確かに雷魔法を放ったが大蛇には面白いくらい当たらなかったな」


「彼女達も精神干渉でもされていたのでしょうか」


魔術師シルバーの言葉に思わずはっとする面々。


「それだ。我らが街道で穴にはまった時も本当にそこに穴があった訳ではなかったな」


「まさか・・・」


「既に三姉妹は、何かの精神干渉魔法下に置かれていたのではないか」


「つまり雷魔法が当たらないのは・・・」


「そう、精神干渉魔法により魔法が強制的に逸らされてたと結論付けは方が自然だ」


「だとすると三姉妹がいくら雷魔法を放っても絶対に当たる訳がありません」


「そうだ。そして我らもそれを考慮する必要がある」


追跡部隊は、自身に施されているかもしれない得体のしれない魔法に恐怖を覚えつつもその場を静かに後にした。


「・・・なるほど、精神干渉魔法か」


大蛇のしっぽが頭上に直撃した次女のアメリア。


彼女は、意識を取り戻していた。だが近くに人の気配を察知し動く事なくその気配を探っていた。


追跡部隊の気配の無くなった森の中で立ちあがりローブの汚れを払いながら考え込む次女のアメリア。


「そうか精神干渉魔法により我らは、雷魔法を当てる事が出来なくなっていたという事か」


偶然にも追跡部隊が話していた言葉を聞き、その結論に達した次女のアメリア。


「早くメイリア姉様に知らせなくては」


アメリアは、夕暮れとなり暗くなっていく森の中を姉妹を探して歩き始めた。


その後、夜遅くに何とか合流を果たした三姉妹。


そして次女のアメリアから聞かされた”精神干渉魔法”の存在に驚愕する姉妹。


「つまり我らは、いくら魔法を放ってもあの大蛇には当たらないという事か」


「はい、恐らく精神干渉魔法により我らは無意識のうちに魔法の照準をずらされている可能性があります」


「そんな。でもいつ精神干渉魔法なんて・・・」


そう言いかけた三女のエメリアであったが三姉妹は、パップの街の外で大蛇に飲み込まれた事を思い出していた。


「まさかあの時か」


「我らは、大蛇に飲み込まれ気を失っていた。確かに魔法をかける時間はあった」


「でも精神干渉魔法をかけられた様な痕跡は何処にも・・・」


三女のエメリアは、必死に鑑定魔法を発動し自身や姉の体を調べ始めたが、魔法をかけられた痕跡など微塵もない。


「恐らく魔法の痕跡すらも精神干渉魔法により見つける事はできないだろう」


「そっ、そんな」


必死に鑑定魔法をかけ続ける三女。


そこに不意に男が現れる。


「だっ、誰だ」


気配が全くない男。だがその顔に見覚えがある三姉妹は、少し安堵した表情を浮かべる。


「ああ、お前か。パップの街では世話になった」


そう三姉妹の前に現れたのは、牢屋に閉じ込められていた三姉妹を助けた部隊の兵士だった。


「おや、こんなところで皆さんは何をしておいでですか。魔神様の命はどうされたのですか」


「分かっている。明日にでもやつらに追撃を加えるつもりだ」


男は、顔にニヤリと表情を浮かべながら三姉妹の顔を見渡す。


「それは結構。ですが既に二度も失敗されていますなあ。魔神様は、三度目も待ってくれない事をご存じ無いのですかなあ」


男の言葉にはっとする三姉妹。


「それはどういう意味だ」


長女のメイリアが怪訝な表情を浮かべながらその男の顔を睨みつける。


「なに、そのままの意味ですよ。貴方が魔神様の命に二度も失敗したのです。故郷の村がどうなっているか楽しみだなあと言っているのです」


男の言葉に思わず凍り付く三姉妹。


「まっ、待て。まさか我らの故郷の村を!」


「まあ、魔神様にはあなた達の行動は、逐一報告してあります」


そう言うと男は、森の暗闇に姿を消してしまう。


「待て、我らの故郷の村を焼き払うというのか!」


森の暗闇に姿を消した男。だが声だけは聞こえて来る。


「ご自身の目で確かめてみては、いかがですかな。全ては、魔神様の命を受けたにも関わらずそれを達成できなかった達の失態が招いた結果なのです」


男の声だけが暗い森の闇の中に響き渡る。


三姉妹は、いたたまれず暗い夜の森を後にすると故郷である村へ向かった。


そして数日後に三姉妹は、故郷の村へと戻った。故郷に戻ったのは、数年ぶりである。


そして目に入った光景は、無残にも焼け野原となった村の残骸であった。


焼けた地面。家の残骸。そして焼けただれた人の遺体が無数に散らばる。


三姉妹は、その光景を体を震わせながらただ見つめていた。


内心は、親も村の人々も元気で三姉妹を出迎えてくれる事を願っていた。


だがそんな甘い光景は、存在しなかったのだ。


三姉妹の家があった場所には、大きな穴が開き家は無残に崩れ焼かれていた。


さらに見るも無残な焼死体が無数に転がり、それが誰なのかも全く分からない。


振るえる体を必死に抑えながら三姉妹は心に誓う。


親の仇である人族の子供とダークエルフを殺すと。


何だか逆恨みに走る三姉妹です。


そして故郷の村を焼かれ親の消息も分かりません。


他の街や村で三姉妹が見せしめにやって来た事がそのまま自身の故郷の村で行われてしまいました。


復讐に燃える三姉妹。さてどうなっていくのやら。




◇フェアリーランタン(現世界Side)


現世界Side 1話

 道志の森で魔法ランタンと冬キャンプ

 https://youtu.be/E5koSWCQ7DQ


現世界Side 2話

 道志の森で寒風吹きすさぶ冬キャンプ

 https://youtu.be/rYbmk-ZDriE


現世界Side 3話

 風対策とランタンの灯りで癒される冬のふもとっぱら

 https://youtu.be/ZUM40WsEoJI



◇魔法ランタン

 https://youtu.be/rhFhjx9aPEE


◇フェアりーランタンの世界観を楽しむにはこちらもどうぞ!

 僕の盾は魔人でダンジョンで!

 https://ncode.syosetu.com/n2862ff/


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