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フェアリーランタン ~異世界Side~  作者: 純粋どくだみ茶
13/45

013話.追跡部隊その後

挿絵(By みてみん)

魔法ランタン(フェアリーランタン)


ペリエ達が進む街道から分岐する小道が増えてきた。


それに伴い街道の周囲は、森から草原となり畑へと変わっていく。


大きな街の周辺には、大小の村々が点在し街への食料や家畜の供給を行っている。


全ての人々は、街に住んでいる訳ではなく数からいえば村に住み農業や牧畜を行う者の方がはるかに多い。


平和な国であれば警備隊が街に常駐し、村々を巡回して治安維持に充るのが普通である。


だがこのご時世、治安がまともに維持されている地域の方が稀である。


王国の殆どは、魔神の命により闘いにあけくれ戦費の捻出と兵を出す事で手一杯となり、国の治安維持など出来るはずもなかった。


数少ない警備隊は、街から殆ど出る事はなく街の周辺に点在する村々へ出向く事などない。


「兄ちゃん。通行税を払いな」


「それと背負っている大きな鞄を置いていきな」


「ほう。ダークエルフとはまた珍しい。しかし綺麗な女だな」


手に剣や槍を持ったいかにもといった素行の悪そうな男達がペリエとシルキーを取り囲んでいる。


ペリエが背負う大きな鞄にぶら下げた魔法ランタンが風でカタカタと揺れる。


そしてペリエ達に通行税を要求した男達は、シルキーの姿を見つつ集まって何かを相談しはじめる。


この手の相談事というのは、大抵想像ができる。そして次の展開も想定の範囲内というのが普通だ。


「兄ちゃん。その女と鞄を置いていきな。そうすれば命は、助けてやるよ」


さっきは通行税を払えと言っていたが今は、シルキーを置いていけという。


ペリエは、期待通りの言葉を放つ男の顔を見て笑みを浮かべる。


「どうして盗賊って誰も同じ様な事ばかり言うんだろう。もう少し捻った要求をして欲しいよね」


そう言うと何処からか出してきた小さな魔石を男達の前へとばら撒いた。


「まっ、魔石だ」


それを見たひとりの男がペリエが放り投げた魔石を拾い空にに向けて掲げた。


「これひとつで小樽に入った酒が買えるぞ」


男の放った言葉を聞いた仲間達がこぞってペリエが放り投げた魔石を拾い始める。


男達は、街道にばら撒かれた魔石を拾う事に夢中でペリエ達に突き付けた剣や槍さえもそこいら辺に放り投げていた。


ペリエは、シルキーにお道化て見せながら街道を這いつくばる男達の脇を通りすぎていく。


しばらくして魔石を拾い終わった男達は、街道を進んでいくペリエ達の後ろ姿を追うと剣と槍を持ち再び街道に立ちはだかる。


「おい。魔石を出せ。もっとあるんだろ」


ペリエは、今までに出くわした盗賊からこの言葉を何度聞いたことか。


やれやれといった表情を浮かべるペリエ。


そして小脇に抱えていた弓を手に持ちいつでも矢で射殺す体制に入るシルキー。


「ペリエ殿。そろそろ私も我慢の限界に来たのだが。男達が私の体を嘗め回す様に見るのが耐えられない」


シルキーの言葉にはっとするペリエ。


「ごめんなさい。今まで僕とキーのふたりで旅をしていたから、そういった事って無かったんだ」


ダークエルフのシルキーが仲間になってからまだ盗賊に襲われた事など無く、今までは金目のものを要求されるだけだったのだ。


ペリエは、右手に持つ魔法杖を左手に移し空いた右手を高々と掲げると指をパチンと鳴らして見せた。


「何の真似だ小僧」


ペリエ達を取り囲む男がその行動の意味が分からず剣を構える。


「お前、杖を持っているという事は、魔法が使える・・・のか」


ペリエは、魔法の詠唱を始めると杖の先から炎の塊を出した。その炎は、男達に向かって飛び次々と火だるまにしていく。


「くそ。魔術師だ。最初から殺しておけばよかったんだ」


剣を持った男達は、ペリエに襲い掛かり槍を持った男達は、ペリエの体に槍を突き刺す。


複数の槍でつかれたペリエは、体中から血を流し悶絶しながら街道に倒れ込む。


「最初から俺達のいう事を聞いていれば・・・」


ところが仲間の男の腹に別の男が剣を突き刺した。


「なっ、何をしやがる」


「最初から俺達のいう事を聞いていれば命だけは助けてやったんだ」


腹に剣を突き刺された男は、そのまま街道に倒れ込む。


街道の真ん中でさっきまでペリエ達を囲んでいたはずの男達は、なぜか仲間に槍を剣を突き刺しお互いに捨て台詞をはいている。


その横をこそこそと通り抜けていくペリエ達。


「ペリエ殿。まさかあの魔石は、呪いが封じられた魔石なのか」


ペリエは、言葉なく頷く。


そして最後に残った男が街道の中央に立ち剣を必死に振っている。


「くっ、来るな。来るな」


男は、大声を張り上げながらいないはずの誰かに向かって必死に剣を振るう。


その光景を覚めた目で見るペリエとシルキー。


「シルキー。悪いけどとどめお願いしていいかな」


「了解した」


シルキーは、弓を構えると矢を射る態勢に入る。だが、その手に矢を持つ事はない。


シルキーが構える弓は、ダークエルフの国の神殿から持ち去った神器だ。


矢は、弓を構える者が念じるだけで現れ目標を射ると消える実体の無い矢なのだ。


シルキーが矢を放つ素振りを見せると街道の真ん中で剣を振っていた男は、膝から力が抜けそっと倒れ込んだ。


「ご苦労様」


ペリエが街道にばら撒いた魔石屑を拾った男達は、自身が気が付かないうちに幻影を見て仲間をペリエと思い込み仲間同士で戦いを始めた。


そして街道に残ったのは、朽ち果てた男達の躯だ。


「せっかくだから金目のものを貰っていこう。僕達も決して裕福じゃないからね」


街道に倒れた男達の服をまさぐり、金目のものを探すペリエ。


その姿を見てやれやれという顔をするシルキー。


「ペリエ殿。随分と盗賊の扱いに慣れている様だが」


ペリエと共に盗賊の体をまさぐり始めたシルキーは、見つけた銀貨や銅貨についた血を男達の服でふき取リながら話し始めた。


「これでも盗賊に襲われた回数は、10回以上もあるからね。あんまりお金・・・無いね」


少し残念だという表情を浮かべるペリエ。


シルキーは、男達から集めた銀貨と銅貨をペリエに差し出した。


「それは、シルキーの分け前」


「よいのか」


「シルキーにも手を汚させてしまったからね」


ペリエの言葉にうなずき街道に転がる男達から奪った銀貨と銅貨をしまい込む。


「さすがに金貨は無かったね」


「盗賊なら何処かに隠しているのではないか」


「そうだよね。でもそれを探しに行く時価は無いね」


死体は、街道を塞ぐように倒れていて馬車の往来に支障を来す除隊であった。、


「この躯は、どうする」


「そのままでいいよ。あとから来る彼らが何とかすると思うよ」


シルキーの言葉にそう答えるペリエ。


あとから来る彼らとは、風の魔神の命によりペリエ達を追跡している小部隊の事である。


「彼らも僕達をただ追うだけなら暇だろうからね。こうやって盗賊の躯の処理くらいやってもらおう。使えるものは親でも使う・・・だったかな」


「ははは・・・その図太い感覚。そうでなければ、この世界を魔神から取り戻せない」


シルキーは、ペリエの言葉に思わず大笑いをしながらペリエと共に街道を歩いていく。


ペリエが背負う大きな鞄の上では、妖精達が盗賊の事など全く気にもかけずに寝そべり青い空を眺めていた。


・・・・・・


街道を進むペリエ達を追う追跡部隊。


彼らは、ペリエ達と距離を取りつつ街道を進んでいた。


そして目の前には、街道に倒れる男達の姿があった。


「あれは何だ」


「鎧も装備していない。服装も武具もバラバラ。恐らく盗賊の類ですね」


「目標を襲ったのか」


「恐らく」


街道に倒れている男達は、互いの腹に剣や槍を突き刺したままこと切れている。


「しかし、どう見ても仲間同士で殺し合った様に見えます」


魔術師のシルバーが、街道に倒れている男達の状況を確認していく。


「目標のひとりは魔術師だ。しかも妖精が放つ魔法であれば我らですら幻影を見るくらいだ。盗賊では全く歯が立たんだろう」


「どうしますか?」


「どうしますとは?」


「まさか街道のど真ん中に死体を放置するんですか」


「我らは、死体処理が仕事ではないぞ」


「ですが、あれを見てください」


「・・・まさか、あいつら我らに死体の処理をさせようとしたのか」


追跡部隊の面々が見つめる目線の先には、街道にこんな文字が記されていた。


”あとをお願い”。


仕方なく追跡部隊の面々は、街道に倒れている死体を街道脇へと運び始める。


とはいえ墓を作ってやる義理はない。道の脇の草むらに乱暴に放り投げるくだいだ。


死体の数は、全部で6体。


死体の移動も早々に終わりペリエ達の追跡を再開するはずだった彼らの前に何処からか素行の悪そうな男達が現れた。


「てめえら。よくも仲間を殺ってくれたな」


街道に居並ぶ男達の中で人一倍ガタイのよい男がそう言い放つ。


その言葉を聞いてがっくりと項垂れる隊長のバック。お道化た様なしぐさを見せながらも目線は、目の前に居並ぶ男達の数を瞬時に10人と判断した。


追跡部隊の面々もお互いの顔を見合いながらあきれ顔だ。


「言っておくがこいつらを殺ったのは、俺達じゃない。ここを通りかかったらたまたま死体があったんだ。邪魔だから街道からどけただけだ」


バックの言葉を聞いた男は、一瞬にして顔色を変えるとさらなる怒りの表情を浮かべた。


「なんだと。俺達の仲間が邪魔だって言うのか!」


街道を塞ぐように居並ぶ男達は、バック達を囲み始めると剣を構える。


「何を言ったところで聞く耳など持たないか」


バックは、左手で戦闘態勢の指示を出すと剣を抜き戦闘態勢へと入る。


追跡部隊の面々も既に剣を抜き魔法の詠唱を終えていて、隊長であるバックの指示通りに倒す相手を見据える。


「お前達が我々の前に出て来た事を後悔するがいい」


バックの放った言葉と同時に追跡部隊の面々が一斉に剣を振りかぶり距離を詰める。


いつの間にかバックの隣りに移動していた剣士のルイスと共にバックが剣を振るい、街道に立ちはだかる男達が剣を振り下ろす間もなく2人が悶絶する。


返す剣で隣りに立つ男の喉元を切り裂いていく。


僅か数秒の間に4人の男が倒れた。


さらに魔術師ゴールドが放った土魔法にる石の塊が男達の頭を直撃し、魔術師シルバーが放った風の攻撃魔法が首元や手足を切り刻んでいく。


そして数秒後の世界。既に街道には9人の男達が倒れ、残ったのは隊長であるバックに罵声を浴びせたガタイのよい男ひとり。


「えっ、えっ、えーーーー」


ほんの一瞬で仲間が全員倒されるなど思ってもいないかった男は、自身の周りで起きた状況が全く理解できない。


バックは、剣を構えて男と対峙する。


「まっ、まっ、待て。取引だ。金をやる。だから命だけは・・・」


バック達の能力を測れなかった時点で男達の命は、無かったのだ。


男の言葉は、そこで止まった。そして男の視界が逆さになると地面に向かって落ちていく。


男の首が街道に落ちると同時に潰れた果物が転がり果肉をばら撒く様に血を辺りにばら撒いていく。


シルバーが放った風魔法により男に首が分断された結果だ。


「おい。最後の言葉くらい聞いてやってもよいだろうに」


「盗賊の言葉など聞くだけ無駄でしょう」


バックの言葉に風魔法を放ったシルバーがあきれたとう表情を見せる。


「バック隊長。この死体の山ですがどうされます」


「そうだな。草むらに放り込んでおくか」


結局、盗賊の死体を処理する事になった追跡部隊の面々。


文句を言いながらも盗賊達の死体を街道脇の草むらに放り込むとペリエ達の後を追う。


バック達が盗賊を倒した後、この地域を荒らしまわっていた盗賊団が村々に姿を見せなくなった。


そんな事など知らないバック達は、今日もペリエ達を付かず離れず追跡する。


その頃、ペリエ達はというと・・・。


街道の先にあるパップの街に入り市場で食料の補給を行っていた。


とはいえ運べる食料は、ペリエが背負う大きな鞄に入るだけ。


ペリエとシルキーが食べる食料は、それほどではない。問題は、大喰らいの妖精達の食料だ。


実際のところ妖精達は、食料を口から接種する必要はない。この世界の大地から湧き出る生命力を分けてもらうのが本来の姿である。


だが、今のこの世界には妖精達が受け取れる生命力は、微々たるものとなっていた。


それは、この世界から湧き出る生命力を魔神が根こそぎ奪っているためだ。


今の状況で妖精達が大地から受け取れる微々たる生命力では、魔法など使えるはずもない。


それを可能にしているのは、妖精達が口から接種している食料である。妖精達は、魔法を使うために大量の食料が必要となりそれをペリエ達が用意しなければならない。


この世界には、冷蔵庫などというものは存在しない。魔法で冷やすという手もあるが魔法で作った氷も必ず解けるのだ。


しかも氷は重いのだ。ペリエの鞄に入る荷物にも限界はあるし運べる重さにも限界はある。


仮に妖精達が封印されていた魔法ランタンに大量の食料を運び込んだとしよう。その場合、魔法ランタンの世界とこの世界の行き来だけでもかなりの魔力を消費する。


つまり食料を運ぶだけで食料を大量に消費してしまう。


とてもではないが食糧庫として魔法ランタンを使うのは効率が凄まじく悪いのだ。


さて、街の市場で買い物を済ませたペリエ達。


追跡部隊は、まだバップの街へは到着していない。


だがペリエ達に目線を向ける3人の姿があった。


「お姉さま。雷の魔神様の命にあった大きな鞄を背負った少年とダークエルフです」


「妖精の姿は・・・さすがに見えないか」


「妖精などどうでもいいですわ。あの少年とダークエルフを黒焦げにできればそれでよいではないですか」


「それもそうね」


「一瞬でけりを付けます」


人で溢れかえる市場の真っただ中で黒いローブを纏った3人の女性は、ペリエ達に向かって雷の攻撃魔法を一斉に放った。


風の魔神の追跡部隊は、つかず離れずでペリエ達を追っています。


そして新たに雷の魔神が送り込んだ3人の魔術師がペリエ達を襲います。


次から次へと金魚の糞みたいに敵がついてきます。


まるで往年のサンライズのロボットアニメの様ですね。


※往年のサンライズのロボットアニメは、敵から宇宙船で逃げ回るお話が多い。



さて時間が出来たので前回と同じふもとっぱらに2泊でキャンプに行ってきます。


もう寒さも和らぎ春に向かっているようですが、一応冬キャンプの準備はしていきます。


今回は、snowpeakアメニティドームMではなく、新しく購入したベアーズロック ハヤブサテントを使います。


ハヤブサテント(2人用)は、風対策でタープの中にテントを設置したいので買ってみました。



◇フェアリーランタン(現世界Side)


現世界Side 1話

 道志の森で魔法ランタンと冬キャンプ

 https://youtu.be/E5koSWCQ7DQ


現世界Side 2話

 道志の森で寒風吹きすさぶ冬キャンプ

 https://youtu.be/rYbmk-ZDriE


現世界Side 3話

 風対策とランタンの灯りで癒される冬のふもとっぱら

 https://youtu.be/ZUM40WsEoJI



◇魔法ランタン

 https://youtu.be/rhFhjx9aPEE


◇フェアりーランタンの世界観を楽しむにはこちらもどうぞ!

 僕の盾は魔人でダンジョンで!

 https://ncode.syosetu.com/n2862ff/


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