スーパー「なろう」で買い物してみた
いわゆる風刺小説です
私は今日、この辺で一番大きいスーパーである「なろう」で買い物をすることにした。
なんたって品ぞろえが豊富で76万品目もあるらしい。
私は何を買うか迷いつつ、スーパーへと足を運んだ。
入ってみると、店頭には売れ筋商品が専用コーナーで紹介されていた。
しかし、そこで私は異変に気付く。
どの商品も見た目がそっくりなのだ。
というかほぼ同じである。
よく見ると商品名もおかしい。
皆文章かと思うほど長いのだ。
例えば、「全国各地から送られてきた材料で作られた俺、他の地産地消弁当を押しのけて弁当売り上げトップになる」とか「地産地消で作られた弁当は地元の風水パワーで客に元気を与えることによって売り上げを爆上げする」などといった感じだ。
とても弁当とは思えない商品名である。
私はコピペのごとく並んだ弁当を見て寒気がしたので、他のコーナーに行った。
が、そこでも同じような光景をみた。
私はますますうんざりした。
とても食欲など起こらなかった。
そんな中、ふと香辛料のコーナーを見つけた。
そこで私はさらなる地獄を見る。
なんと、業者たちが商品名で泥沼の議論をしていたのだ。
「このごろ人気になる商品の質が低下しているのは、スーパーに商品を出す業者の質が低下しているからだ」
という商品名があれば、
「人気商品の質が低下している理由は、最近の客たちの質が低下しているからだ」
という商品名もあった。
やはり、業者たちも思うところがあったのであろう。
しかし、議論はされど結論は出ず、解決には至ってないようである。
私はスーパーの品物を見るだけでかなりの体力を使ってしまった。
買い物だけでこんなに疲れるのは久しぶりである。
もうこのスーパーで買い物などしない。
そう決意したその時、他の商品に埋もれていた一つの商品を見つける。
商品名は「素朴な手作りクッキー」であった。
名前の通り手作りのようだ。
私はまだ素朴な商品が残っていたことに安堵し、その商品を買った。
そして、急いでスーパーを出た。
後日、私はクッキーを作った人に五つの星を描いてファンレターを送った。
なお、クッキーは純粋においしかった。ただ、一般受けはあまりしなさそうな味ではあった。
しばらくすると、向こうから感謝の返事が送られてきた。
私は心があったまった。
それから私は、再び「なろう」に行った。
クッキーを作った人が新作を出したからである。
私は店に入ってすぐに彼の商品を見つけた。
人気商品コーナーにあったからだ。
しかし、私は商品を見てがっかりした。
それは、隣の商品と代り映えのない個性の欠片もない弁当だった。
商品名も長文で、素朴さは微塵も感じられなかった。
その後、私はそれを買って帰って食べたのだが、総じておいしくなかった。
どこかで食べたような味がして飽き飽きした。
私は哀愁を感じ、一筋の涙を流した。