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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第4章 『奈落』に吹く血風
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第54話 これが僕等の「かみぐらしっ!」


 『奈落』の底に凄まじい空間震が奔る。


 単に巨大なものが『落下』し、『地』に堕ちただけ……なのだが、堕ちたものが問題だ。


 その大きさは天を覆うが如く。


 その身は膨大な魔力を放ち、放たれた魔力は全てを飲み込む恐るべき『闇』へと変質、触れるものすべてを容赦なく飲み込み、光さえも逃さない。


 『奈落』における『生きる災厄』、冥獄龍グランヴィリオ。


 『奈落』における最強の一角と目されていた天翔ける龍が、地に堕とされたのだ。


 誰もが恐れ、背を向ける厄災を地に堕としたのは一人の青年。


 背に美しい光の翼を広げ、鍛え上げられた肉体を惜しげもなく晒す彼こそ『奈落の拳神』の誉れ高きひと柱の神、エル・フラヴィオである。


「ふへぇ、纏う闇の中にマイクロブラックホールを幾つも隠して展開してるとか、どんな制御力だよ……。

グランヴィリオ、あんたも大概頭がおかしいって」


 首をこきこき、手首をプラプラさせながらうんざりした顔で呟く彼の声は、地に伏し完全にのびているグランヴィリオには届かない。


 もし仮に聞こえていたならばグランヴィリオもボヤいた事であろう、「お前が言うな」と。


 神をも殺す『神殺し』の龍を、初見で真っ向から殴り倒すような輩が、世間で言うような常識的な存在ではないことは明白だ。


 だがそんなことは青年にとってはどうでもいいこと。


 大事な事は……



「フラヴィ! 怪我はない!?無事だった!?痛いとことかない!?」


「あ~、うん、大丈夫だよかぁさま、汗臭いから抱きついちゃダメだって」


 虹色の長い髪をなびかせて、どこからともなく空間転移してきた小さな少女を、エル・フラヴィオ、フラヴィは笑って抱きとめる。


 少女の名はエル・フィオーレ。


 『堕ちたる創世神』と呼ばれ、己が従属神に殺害され『奈落』に堕とされた『神』。


 その身をバラバラに切り刻まれ、無残な姿をさらしていたはずの少女の身体は傷一つなく、幼いながらも誰もが見蕩れるような笑みを浮かべてフラヴィにしがみついていた。


 傍から見れば仲の良い兄妹。


 だがこの二人、否、この二柱の神、親子である。




「身体の具合はどう?

変なところとかない?」


「大丈夫だよ?

フラヴィは心配性だなぁ~♪

こうして元気にしてるじゃないか!」


「そんな事言いながら、『うわわっ!く、首がもげたっ!』なんて質の悪いネタを披露してみせたのは誰だっけ?」


「ぴゅ~~♪ぴゅぴゅ~♪」


 下手な口笛で誤魔化そうとするも、顔に貼りついた笑顔は隠せない。


「こうしてボクが自分の身体を取り戻せたのも、全部フラヴィのおかげさ。

まさかあんな方法でボクにかかった呪いを回避するなんてね」


「ははっ、上手くいってよかったよ、ほんと……」


「ところで、そこに伸びてるでっかいの、どうするんだい?」


 若干呆れた様子で『奈落』の底に横たわる龍を眺めるフィオに、フラヴィは事も無げに答える。


「また絡んでくるようなら叩きのめすし、仲よくしたいって言うなら何かしら言ってくるんじゃない?

ま、いきなり襲いかかってくる様な輩にかける慈悲はないけど」


「フラヴィらしいといえばらしいかなぁ?」


「そんな事より、早く戻って作画の続きをやろうよ。

上映会の締め切り迫ってるでしょ?」


「あ、そうだった!

ミュラりん達も『早く主様をっ!我らだけでは間に合いませぬっ!』って焦ってたんだった」


「それじゃあ急いで戻らないとねぇ」


 激しい戦いなどまるで最初からなかったように、気ままな『神』達はこれからの事に思いをはせる。



 今日は、明日は、何をしよう?



 どんな楽しいことをしようか?



 ここは『奈落』の底の底。



 人が『地獄』と称する場所。



 それでも彼らは『神』なのだ。




 住めば都、暮らせば天国。







 これが僕等の、「かみぐらしっ!」









突然ですが完結です。


この作品は、前作『団子MAXIMAM』の凍結を教訓に、様々な実験を試みる形でプロットを組んだ作品です。

なろうでは明らかにウケの悪そうな非無双型日常モノ。

青少年向けエロを完全に廃した作風。

にも拘らず主人公は全裸、ヒロインは生首という非道徳的スタイル。

基本的に何でもありとしながら『神』という器に縛られた設定。

人外の存在をどこまで今の自分で描き切れるか。

他にも試してみたことはたくさんあります。

まだ試しきれていないこともたくさんあります。


ですが、ある時主人公であるフラヴィにこう言われたのです。

「これ以上玩具にするのはやめてくれ」と。

「僕はかぁさまとのんびりできればそれでいい。

これ以上晒し者にしないでくれ」と。


なので、彼らの物語はこれ以上語りません。


私にとっても彼らは大事な人達ですから、傷つけるのは本意ではありませんしね。

次作はいつ投稿するかまだ決めていません。

幾つか作品のストックはあるのですが練り切れていませんでしたので。


ですが、なるべく早いうちに新作でお会いしたいと思っております。


それではいずれまた。             葵・悠陽 

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