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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第4章 『奈落』に吹く血風
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第48話 The man who has no imagination has no wings

想像力のない奴に、翼は持てない


『首無し熊』編、決着です。

どうやってけりつけるのかなぁ、と思っていたら平常運転でした。


 不思議に思う事は幾つかあった。


 『首無し熊』が『奈落』の側からこちらの位置を把握して攻撃してきたという事。


 首が無いのにこちらを『視ている』という事。


 敵は本当に2体だけなのか?という事。


 その不死性も妙な部分が多い。


 戦闘中に少しづつ考えをまとめたのだけれど、僕がブチ切れてあの『クソ神』の様にイキッた後(思い返すと胸糞悪い)、僕は一度この『熊』に肉片にされたはずなのだ。


 あの時確かに『2体の熊を塵にした』、それは間違いない。


 だが、奴は『復活』した。


 まるで死んだ事実などなかったとでもいうように。


 それはまさに『神』の所業じゃないか。


 否、『神』の所業と考えた方が収まりがいい。


 いわゆる『獣神』というやつなのかもしれないな。


 相手が『神』だと仮定するのなら、不死性については納得がいく。




 そうなると他の部分、位相空間を越えてこちらを把握したことについては?


 首が無い事については?


 それら全てを『神』だからで説明するには少々無理がある。


 首のない神、目のない神、脳のない神、そういった『器官の欠損した神』は少なからず存在する。


 だが、それらの神は必ず喪失している器官に代わるものを持ち合わせているものなのだ。


 持ち合わせていないというのであれば、それは相応の理由があるから、という事に他ならない。


 例えば『体内に隠されている』


 例えば『概念的に見えないだけである』


 例えば『別のところに分離して潜んでいる』


 といった感じで、ね?





「おかしな話なんだよ。

僕等の戦力分析をするために色んな駒を送り付けておきながら、どうやってそれを眺めているのか。

視覚がないのにどうやってこちらを把握しているのか。

考えてみれば嗅覚にも聴覚にも頼れない筈なんだもんな。

それに、一番の違和感は合体した時のその姿さ。

なんで首が1か所だけなんだ?

2頭の獣が合一したなら、本来首は2つあってしかるべきだよな?

首から先が無いにしても、『生物』であるならそれが自然だ。

それぞれに意思があるはず、なんだからな。

にも拘らず首は1つ、という事は、元々意識は1つなのか、首2つというのがフェイクなのか」


 僕の後ろで腕を振り上げたまま、ピクリとも動けずにいる『首無し熊・合体版』に目もくれず、僕は自分の推論をかぁさまたちに語ってみせる。


「結論から言って、こいつには『首』に相当する部位が存在して、どこかに隠れている。

そいつが僕等を見て、この身体を操っている……と考えるのが妥当な線じゃないかな?

もちろんこれは仮説だから正解じゃないかもしれない。

ま、違ったら違ったで次の仮説を立てて対応しよう」


「……フラヴィが平常運転過ぎて、ボクは別の意味で感動に打ち震えているよ。

何ていうか、復活してから圧倒的すぎやしないかい?」


「んー、とりあえず目の前に明確な脅威がいたわけじゃない?

難しいこと考えるのは後回しにしてとりあえず処理しただけなんだけど」


「発言内容を鑑みるに流石は親子と称賛します」


「「同意」」


 かぁさまには呆れられ、ミュラりん達からは似た者親子と称賛される。


 解せぬ……。


 それはともかく、『首無し熊』の()()だ。


「動けないか? 動けないよなぁ?

動物には関節ってものがあるからな。

動きは可動範囲ってものに縛られるんだよ。

そして可動範囲の中でも力を入れられる範囲って言うのはある程度決まってる。

攻撃してくるって予測はしてたからなぁ。

特定位置の空間を凝結した上で、接触と同時に固定した。

力が入れられないだろー?

動けなくて苛つくよなぁ?

大丈夫、すぐ楽にしてやるから」


 そう声をかけると、『熊』の腕に軽く触れ、くいっと捻じ切る。


「~~~~~~!!!!」


 声なき悲鳴を上げ悶える『熊』。


 溢れる血飛沫は飛び散る事なくその場で結晶化、


 千切れて転がる腕も瞬く間に結晶化して水晶のような透き通った塊と化す。


「何をされてるか分からないだろうから教えてやろう。

お前さんの腕から『色彩』を抜いた。

『色』を失った肉体は『結晶化』して水晶の塊になる。

『色彩』の戻し方が分からない限りはずっとそのままだ。

……ま、一種の封印術みたいなものかなぁ?」


「フラヴィ!?

そんな封印術ボク教えてないよ!?」


「僕のオリジナルだからね、『あっち』由来の。

図体がでかいとまとめて『色彩』を抜けないから、ちょっと絵面は残酷になるけど」


 そう言いながら続けて2本、腕をちぎっては結晶化していく。


「このままだと腕が無くなるぞ?」


 その言葉に応じたわけではあるまいが、巨大な『熊』の肉体が一瞬で血霧と化し、僕の拘束の軛を抜けて離れた場所で再度実体化する。


 こうしてみるとまるで吸血鬼のようだ。


 実体化した『首無し熊』は分裂状態で……その身からは腕が合わせて3本、失われていた。


 激しい怒りと憎悪がビリビリと空気を震わせているのが分かる。


 さしもの『熊』も、封印された肉体を再構成する術はもたなかったようだ。


 加えて、今の血霧になって拘束を逃れる方法も奥の手であったのだろう。


 それを切らされたという事はすなわち追い詰められているという事。


 そしてここまで頭の切れる敵なのだ。


 次に取る手は……


「もちろん『逃亡』、だよな」


 舞台を蹴り逃げ出そうとした2体が、踏み込みと同時につんのめる!


 会話しながらも僕の『舞』は続いているのだ。


 立ち上がることもできずに這いつくばってもがく二匹に、僕はにこやかに『いつか言ってみたかったセリフ』を叩きつける!



「……知らなかったのか…? 『創世神(エル・フラヴィオ)』からは逃げられない…‼」


「フラヴィのドヤ顔がノリノリ過ぎてちょっと可愛い」


「そこで茶々入れないでくれるっ!?」


 ちょっと恥ずかしいんだからっ!



 地面に転がってもがく二体はまた血霧になって逃げればいいモノをじたばたするだけでいつまでも逃げおおせずにいる。


 切り札だけに何度も使えないのか、条件が合わないのか、腕を失ってバランスが取れないのか。


 いっそ足ももいでしまおうと『熊』に近づいていくと、それに気づいた『熊』は思い出したように『合体』して逃げようとする。


 だが目の前でそんなことをしている相手を易々と逃すはずもない。


 再び足を取られ、地に伏す『熊』。


 完全に攻守は逆転。


 狩られる側に落ちぶれた『熊』はただ震えるのみ……。





『ソコマデダ!』




 バチバチッ!という音と共にかぁさま達がいた方から怒声が響く。


 振り返ればかぁさま達をバリアごと咥える巨大な虎に似た怪物の顔が宙に浮いていた。


「やっと親玉の登場か」


『封印術トハヨクモヤッテクレタナ、小僧。

今スグ解除シロ! ソウスレバコイツラノ命ダケハ助ケテヤル』


「フラヴィ!ダメだからねっ!

こういう手合いが約束なんて守るわけが」


『ダマレッ!』「ひゃあっ!」


バリアが激しく発光し、ミュラりん達の装甲がきしむ音にかぁさまが悲鳴を上げる。


(…………)


 かぁさま、絶対楽しんでるよなぁ?


 相手から表情が見えないのをいいことに、すっごいいい顔してるもん。


 それだけ信頼されているってことだから僕は嬉しいんだけど。


「封印を解いてもかぁさま達が無事な保証はないだろう?

まずは開放しろよ。

交渉のテーブルにつくのはそれからだ」


『馬鹿ヲ言ウナ、我ハ貴様ニ命ジテイルノダ。

貴様ニ選択肢ナドナイ!

従エ! 慈悲ヲ乞エ! 這イツクバッテ隷属シロ!』


「はい、論外」


『ナッ!? ゲハッ!』


 声高に威勢のいいことを言った『虎の顔』が鼻面、眉間、顎先と連続で見えない拳に殴打され、かぁさま達を吐き出させられた上で吹き飛ばされた。


 彼我の距離なんて関係ないんだよ、僕の舞はまだ続いているんだから。


 さっきも見てただろうに、見ただけじゃ分からないのかなこの獣たちは。


 舞が続いている以上、技はいつでも繰り出せる。


円環舞闘術(バイラール・エテルノ)』は()()()()()()()いつまでも続く連続性を持つんだから。


 姿を消していたのか位相空間に隠れていたのかは知らないけれど、こうして姿を見せた以上もう逃がさない。


 きっとかぁさまもこの空間内に逃がさないための布石を打っているはずだ。


 空間魔法を破られた以上、それ以外の方法で。


『オノレ!ユルサンゾッ!』


 『虎の顔』がそう言って咆哮を上げると、『首無し熊』が再び血霧に変わり『虎の顔』を包む。


 現れたのは背に巨大な翼を生やした4足隻腕の巨大な虎型人馬とでも言えばいいのだろうか?


 馬ではなく熊の胴体で人ではなく虎面の熊の半身が付いているのだが。


 とりあえずイメージは伝わるものと信じたい。


 そんな珍妙勝つ巨大な生き物が、まるで『完全生物、爆誕!』とでも言いたげなドヤ顔でこちらを見下ろしていた。




『挨拶代ワリダ、喰ラエ!』




 眩い光が虎の口の中に収束され、凄まじい力の奔流が極太の光線となって放たれる!


 放たれた閃光は一直線に()()()()()()迸り、『()()()()()から全身を貫き、分解し、消し炭へと変えた。



 散り際の一言すら残せず、呆然とした『虎』の顔が塵と化していく様は何とも言えなかったな。



「……馬鹿だなぁ、そんな大雑把な大火力攻撃、『自爆しますんで反射してください』って言ってるようなものじゃないか……」


「……ね~……」


「「「流石は主様、空気を読まない素晴らしい反撃でした」」」


 空間を自在に捻じ曲げる『神』相手にあんな溜めの長いブレス攻撃。


 随分頭の回る敵だと思っていた自分が悲しくなってくる。







「さて、疲れたしみんな誘ってお茶にしようか」


「そうだね!

ボクはフラヴィのお膝に乗ってシュワシュワ飲みたいなっ!」


「汚染されてないか確認してからね?

みんな無事かなぁ?」



 こうして自分たちを襲った相手が何者かも知らぬまま、僕等はいつも通りの日常へと戻っていく。


 すれ違いもあったけど、気が付けばいつの間にか解消されてるみたいだし。




 やっぱりのんびりした生活が一番だなぁ。






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