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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第4章 『奈落』に吹く血風
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第40話 Brand new day

第4章突入です。

一気に時間こそ進みましたけど、皆さん変わらず、と言ったところなのでご安心ください。


「『水天驟雨の如く降り注ぎませ』

いくよー!『五月雨情(レイニー・ピアース)』!」


「「「参ります、『フォトン・バースト』」」」


 声の主が操る術によって降り注ぐ雨が全て鋭い針と化し、銀、赤、青の3色のメタリックなロボから放たれる拡散レーザーが横薙ぎに標的を襲う。


 全ての攻撃が向かう先に立つのは引き締まった肉体の青年。


 年の頃は14,5才だろうか。


 ほとんど隙間すらない激しい攻撃を前に、彼は自然体で立ち尽くす。


 ゆらり、と空気が揺らいだ。



 だだだだだだだだだっ!  シュオンッ!



 硬質化した水が大地を穿ち、光線に薙がれた空気がプラズマ化して独特のイオン臭を放つ。


 攻撃が集中した先に立つ青年は……まったくの無傷で変わらず悠然とその場に立つ。


「う、嘘でしょ……今のを全部躱したの……?

あれが、フラヴィのいう『技』?

どう考えてもおかしいでしょ!!

普通じゃないよ!?」


「計測結果……記録は可能ですが再現は困難。

同様の動作を連続性を持たせて実行した場合、当機では7秒で活動限界に達します」

「最小動作による最大効率化、および弾道予測から跳弾による安全圏確保に至るプロセスは観測成功、ですがそのロジックに至るまでの過程を逆算不能」

「結論、主様パないっす」


 もはや呆れるしかない、と言った顔で青年を称賛するのは台車に乗った美しい虹色の長髪の生首と、それぞれが銀、赤、青のメタリックカラーで統一された人型のロボットたち。


 『堕ちたる創世神』エル・フィオーレと『ケイ素結晶生命体』アイゼンミュラー達、である。


「……こちらが想定していたよりも遥かに早い進捗だよ。

まさか、私の教えた技をここまで昇華してくれるとは思わなかった。

……感謝するよ」


「サスガハフラヴィドノヨ、ソウセイシンドノモハナガタカカロウ」


「本当に末恐ろしい若者よな。

最近は拙者では一太刀すら入れられなくなってしもうたわ」


 訓練の成果を眺めていたのはエル・フィオーレたちだけではなかった。


 若者の師である『歪みし未来(セブンス・サイン)』ノーマ・ノクサ


 共に生活するご近所神、『富の偏重者(グレイトフルボンビー)』ゲジュルベリアと『戦禍呼ぶもの(マガツキ)』キルギリオスも一緒だ。


 10年ほど前にこの地で起きた『矛盾結晶』にまつわる騒ぎにおいて、その関係者たちはそれ以上の騒ぎに巻き込まれることを厭い、身を隠した。


 隠した先が同座標における位相空間というのはご愛嬌、気付く者がいないのならばどこだろうと結果は同じなわけで。


 とにかく余計な騒ぎを避け、平穏な時間を過ごす彼らの中でただ一人現状に危機感を抱く者がいた。


 それこそが『堕ちたる創世神』エル・フィオーレの実子にして先の若者、エル・フラヴィオである。



 彼は『矛盾結晶』をめぐる騒ぎの中、『絶対運命(アポクリファー)』ジ・フィーニスに捕食されかけた。


 『創世神』の力を引き継ぐ者であっても『奈落』の地においては己が身を守るには弱すぎる!


 元が神ならざる人間のエル・フラヴィオにとっては、成長の余地がありながらも『育成しない』という『神』の考え方が性に合わず、己を一から鍛えあげる道を選択する。


 その過程で『かぁさま』であるエル・フィオーレと意識の違い、彼女の抱える疾患の双方から袂を分かちかけるが無事関係を修復。


 ご近所さんである『歪みし未来(セブンス・サイン)』ノーマ・ノクサから、彼の世界の武技である『円環舞闘術(バイラール・エテルノ)』の教授を受けられることになり修練の日々を送る。


 そして今、その修行の集大成を皆の前で披露してみせた、というわけだ。


「ふぅ、やっと実戦に耐えられるレベルに仕上がったよ。

たはは……きつかった……」


 青年は柔らかい笑みを浮かべ、己が身体からうっすらと立ち上る湯気……超高速で動いた反動による発熱が招いた汗の蒸発、を払いながら軽く伸びをする。


 引き締まった肉体、とはいえ筋肉質ではないその肢体は、長く艶やかな黒髪と女性じみた容姿も相まって妙な色気を伴っていた。


 エル・フラヴィオ 15歳。


 『神』として15年も経つと、どうやら()()であることにも慣れるらしい。



          ■ ■ ■


「それじゃあフラヴィの修業の終了を祝って、かんぱーい!」


「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」


 かぁさまの音頭で皆で乾杯する。


 数年前には考えられなかった光景だ。


 そもそも僕等『神』は飲食することも眠る事も一切必要ない。


 もちろん味覚もあるし休息だって取るけれど、自分から進んで、という事は滅多にない。


 そういう行為を必要とするのは、『神』として格の低い者達だけなのだ。


 存在が『世界』と繋がる神格の高い神々は、自らが繋がる存在が何らかの要因で傷つかない限り、何度でも復活するし滅びる事もない。


 『世界』=『神』なので、簡単に言うなら『神』を殺すなら世界を破壊しろという事になる。


 ま、そんなことをすれば自分の寄る辺も失うわけだから全くもって意味がないのだけれど。


 しつこいようだが、『神』として格が低い連中は倒す事も滅ぼす事もそこまで難しいことではない。


 信者がいなくなれば力を失うし、人間でも武器さえ用意出来ればなんとかなる(はず)。


 っと、話がそれた。



 なんでこんな宴会をしているかと言えば、僕の修行が一応ひと段落着いたからで。


 何で乾杯なんかやっているかと言えば、かぁさまが『ジュース』にハマったから。


「ぷはぁ~~~♪

このシュワシュワがたまらないよねぇ~。

人間が喜んで飲むって言うのも分かる気がするよ」


「エル・フィオーレドノハ、エールハタシナマレナイノカネ?」


「お酒はちょっとねぇ。

甘めのは何とか味わおうって気にもなるんだけど、ほら、ボク酔わないからさ」


「……首から全部垂れ流しですからね。

……酒に対する冒涜だと思いますが」


「ん?なんか言った~?」


 ブンブンブン


 お隣さんトリオが揃って首を振る。


 一応かぁさまが乗せられている台車には首からこぼれたジュースの受け皿が装着されているので周囲を汚す心配はない。


 お世話係としてミュラりんもついているしね。


 ちなみに現在ミュラりんは訓練と進歩を重ね、3体の外骨格ゴーレムを形成することに成功している。


 そしてそれぞれの外骨格にメタリック塗装を施し、エナス、デュオ、トレイスという呼称をするようになった。


 どうやら正式な外骨格名称は『Prototyp Eisen Müller -型番・TYPE』と表記することに決まったようで、銀色のエナスが『PEM-01SV』赤いデュオが『PEM-02H』青いトレイスが『PEM-03H』と言うそうな。


 「意味は?」と聞いたところ、SV型が『監督官』、H型は『補佐官』らしい。


 群体と言えども個性は存在するので、似た傾向の個体が集まって外骨格を操作する方針で纏まったとの事。


 ゆっくりだけど確実に進歩している姿を見るのは嬉しいな。


 彼らのカラーリングは某宇宙刑事のカラーリングそのままだけれど、デザインは全く違う。


 人体骨格をベースに、生命維持のための内臓関係を一切取っ払い、最低限の筋肉が付いた肉体を装甲で覆うようなほっそりとしたスタイルになっている。


 背中にジョイントされているバックパックには推進ユニットと予備の脚部が格納されており、展開すると人馬型として高機動力を得る事が可能だ。


 もちろん短時間であれば飛行も可能(長時間はミュラりんの魔力がもたない)。


 また、このボディはあくまで外骨格である為、傷ついたところで本体であるミュラりんが損傷しない限りはいくらでも修復できる。


 本体のミュラりんも『個体』としては砂粒程度の大きさであり、塵にでも変えて『消滅させない限り』死亡しないので滅ぼすのは容易いことではない、とだけ。


 群体生命体だってばれない限り、よっぽどのことが無いと死なないんじゃないかな。


 そんな新生ミュラりん達もグラスを片手にジュースを飲んでいたりする。


 群体ごとに好みが違う様で、エナスは「烏龍茶」。デュオは「炭酸水」、トレイスは「ドクターペッパー」がお好みらしい……と言うかなんでここに在るんだ「ドクターペッパー」。


 かぁさまもそうだが、「飲む意味が分からない」と言いながら言った本人達がハマってるのだからボクとしては何と言っていいのか困ってしまうところだ(ミュラりん達は飲んだものを外骨格で分解、熱変換して利用しているとのこと。器用だよね)。




「え~、だって口の中がシュワシュワするんだよ?

味もいろんな味があるし、面白いじゃない」


「この渋みがたまりません」「シュワシュワを理解できないとは哀れ」「ドクペの良さを理解できない愚ん体共め」「「「ああ~ん!?」」」


 とこんな感じだ。


 好みはそれぞれなんだからミュラりん達は仲良くしなさい。


「フラヴィ、おかわり~♪

今度はオレンジサイダーがいいな~♪」


「はいはい、かぁさまもすっかりと文化的な生活に馴染んできたねぇ」


「この『ゲヘナ・プロエリ』って施設がいけない。

暇な時間に色んなものの説明をしてもらったけどさ、他の『神』がなんで人間の技術に傾倒するかが分かった気分だよ。

これは確実に『神』をも堕落させるね!

どうでもいい事にどうしてここまで知恵を絞れるのか理解できないな~」


「ははは……」




 僕のトレーニングが解禁になったからと言って連日連夜休みなく訓練ばかりしていたわけではない。


 かぁさまの癇癪が爆発(退屈になるとよくキレる)するタイミングで一緒に過ごす時間を設けるのだけど、ただぼーっとしていても芸がないのでろくに見てもいなかった『ゲヘナ・プロエリ』の見物をちょくちょく行っていたのだ。


 『自重せぬ建築神』団という建築関係の神々のグループが趣味と欲求が趣くままに作り上げたアミューズメント施設併設超巨大格闘技場、それが『ゲヘナ・プロエリ』である。


 東京ドームがいくつ入るのか?と言う規模の敷地内に、地上6階まであるコロッセオ。


 内部には自動で動く様々な施設、設備、お店等が立ち並び、もちろん全部無料で利用可能。


 『自重しない』という看板に偽りのない全く妥協を知らないこの施設は、ほとんど使われる事なく放置されているのが現状だ。


 自重できないが故に悪神、邪神として『奈落』に堕とされた神様達の造ったもの故に、装飾から配置された品一つ一つに至るまで一切妥協なく、自重なく、おふざけに満ち満ちたものばかり。


 加えて僕の知らない異世界知識で造られたものも多く、かぁさまと一緒に見て回るのはちょっとしたデート気分で楽しいものだった。


 その過程でところどころに設置されていたドリンクサーバーを利用したのだけれど、そこでハマってしまった訳だ、炭酸系飲料に。


 ちなみにかぁさまの一番のお気に入りは『プレピオ』という謎果実の飲料を炭酸水で割ったもの。


 僕は紅茶系の飲料を好んで飲むのだけど……数多くの異世界ドリンクの中に「ドクターペッパー」を見つけた時には盛大に飲んでいたジュースを吹いたものだ。


 ドクペは世界線のみならず世界を越えるみたいだよ、オカリン。




 そんな感じである程度身体も鍛え、日常を楽しみつつ次のステップに移ろうかと考えていた矢先。



 『奈落』という世界は突然僕等に牙を剥く。


 当たり前になりかけていた平穏な日々は、突如として地獄絵図へと変わる。


 『思い出せ、ここは地獄の底なのだ』とでもいうかのように。 

 




フィオ「ジュース美味しいなー♪」

フラヴィ「虫歯になっても知らないよ?」

フィオ「虫歯?なにそれ。

神様だからならないんじゃない?」

フラヴィ「長い時間をかけてじっくりと歯を蝕んでいく病気みたいなものだから神様でも気が付かなかったらなるんじゃない?」

フィオ「何それ怖いっ!

とりあえず次回予告するから何とかしてっ!

次回! 第41話 Find purpose, the means will follow」

フラヴィ「深いなぁ」

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