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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第3章 『奈落』で生きるという事
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第34話 だから僕らは引きこもる

まさかの引きこもり回です!

……といいつつ、きちんと状況は動いてますのでご安心を。


「魔力の展開そのものは特に問題はなさそうだけど、維持するとなると燃費に難がありそうだねぇ」


「全身の操作関連のデータは『イクウェス』から回収出来ましたが、我らの魔力で自立行動となると中々余力が確保できず」


「いっそバッテリーみたいなものを用意しようか?」


「始めからそのような恩恵を与えられることに慣れてしまうのは統計上危険と判断。

自力製作による外部魔力供給手段は有効と断定、早速制作に入ります」


「流石フラヴィの造った子だねぇ……真面目過ぎ」


「お褒め戴き光栄です」



 現在、ミュラりんが自分で形成したサイズにして約1m程の大きさのボディを用いて『イクウェス』のように自力で動かす事を訓練中である。


 元々『イクウェス』の設計構想は僕をメインパイロット兼ジェネレーター、射撃系制御にかぁさま、そしてフレームの神経伝達および感覚系制御をミュラりんが担当することで、疑似ボディ生成後の操作感覚を覚えてもらおうというコンセプトから始まっている。


 2足歩行ロボに限らず、自立する機体のバランサーの設定や各部センサー系の設定などは一から理論構築するとなるとすさまじく手間も時間もかかる。


 なのでミュラりんに実際に素体となるロボを動かしてもらいつつゴーレム操作の代替訓練もしてもらおうという意図が隠されていたりしたわけだ。


 もちろん隣神の方々が単に『力が無い』と嘆くのではなく、モノはやりよう考えようだよ、という思いを伝えたかったというのも嘘ではない。


 ああやって競技形式で『神』としての権能を活かす術を磨きつつ、喧嘩売ってくる相手への抑止力になるなら最高じゃないか、っておもったんだけどなぁ。


 結果は惨々たるものだったので次回に反省は生かしたい。




 っと、話が脱線した。


 今僕等は『ゲヘナ・プロエリ』を拠点にのんびりとミュラりんの訓練をしているのだが、周囲は実に静かなものだ。


 絡んでくる輩もいない、邪魔する連中もいない。


 かぁさまが管理している一帯の空間を『奈落』の通常位相空間と切り離し、接続面を攪乱して追跡すら出来なくしてあるため、ここは現在邪魔者不在の久々のまったり空間と化している。


 また、拠点にしているこの建物やたらと広く頑丈な上、各所に無駄にハイスペックな施設が点在する為ただ放置するのももったいないという事で、無数にある部屋をアパート的生活拠点とした。


 目下再生復活中のゲジュルベリアさんとキルギリオスさん、その世話役のノーマ・ノクサにもあてがっている。


 再生復元中の神達の世話はノーマ・イクサが進んで担当してくれた。


 隣神の多くを見殺しにしてしまったのを彼なりに気にしているらしい。


 気にしなくてもいいとは思うのだけど、彼なりのけじめなんだろう。




 さて、現在の僕等の拠点にしたこの施設、どこの異世界を参考にして作られたのか救護施設とかも設備が非常に充実していたので、力の節約という面では地味に便利。


 『奈落』の底なのに何故か高性能の再生槽とかあるんだよ?


 どこのSFだよって言う。


 流石は『自重せぬ建築神』団、団長さんのオーベルクラフト様のドヤ顔が目に浮かぶようだ。


 問題があるとすれば、使い方が分かるのが……というか、施設の価値が分かるのがこの場には僕しかいなかったことだろうか。


 そもそも『神』は地面に転がって寝る事すらも何の不満も感じない。


 雨に濡れても風邪もひかない、それどころか自然の変化に心躍らせちゃうような存在が『神』なのだ。


 ギリシャ神話や北欧神話の様な人間臭さなど一切存在しない、理解を越えた感覚で世界と共に在るものが『神』であるわけで。


「このふわふわな台は何だい!?

何で布の中に鳥の羽根を沢山敷き詰めているんだい?

は?これが布団!?

フラヴィが前に言ってたのがこれ!?

へぇ~、これが布団かぁ、で、これに寝転がってどうするんだい?

……寝る?

………え、ちょっと待って、それだけの為にこんなものを必要とするのかい?」


 終始こんなノリである。


 なので最初に救護室に要回復の二人を収容し、再生槽の使用法を確認してノーマ・ノクサに後を託し、

室内のベットや薬類を見て大騒ぎするかぁさまにため息をこぼした後、こうしてミュラりんの訓練を始めたというわけだ。


 説明なげえよ! 地が出ちゃうよ! ぜぇはぁ……コホン。


 それはそれとして……こうして落ち着いた環境で教える事が出来ると指導も進む進む。


「主様、『イクウェス』に搭載されていたブースター、アポジキックモーター等の噴射式姿勢制御器に関してですが……」

「腕部マニピュレーターの構造に関して、関節部の稼働領域が……」

「機体バランサーの制御系に関しまして、多足型と2足型のデータ比較による……」


「むっきゃあああああああ!!

フラヴィ!ミュラりん!それ何語!?何語なのっ!?

何言ってるのかボクさっぱり分からないんだけどっ!!」


 ……進む半面、かぁさまがキレるのも早かった。


 難しい話、というかロボとかの浪漫を解さないからなぁ、かぁさまは。


 イッアム婆さんとロボ談義で盛り上がってた時も不愉快そうだったし。


「そんなに会話に加わりたいならかぁさまもなんかロボ作る?

自分だけ仲間外れ感があるからつまらないんだって思うんだけど、どう?」


「主様の母君の製作される物には大変興味があります」


 ミュラりんも心得たもので、僕の誘いに合わせてうまく合いの手を入れてくれる。


「え、そ、そう?

ボクの造るものも見てみたい?

うーん、ロボットって言うのはいまいち分からないからゴーレムになっちゃうけど、それでもいい、のかな?構わない?」


「もちろん」「もちろんです」


 もじもじしながらそんなことを聞いてくるあたり、可愛いなぁと思わなくもないけど……いかんせん生首だからな!


 これで萌えたら変態確定だ。



 そんな感じで僕等は楽しい工作タイムを満喫していた。


 通常位相では何が起きているのか知る由も無く。





            ■  ■  ■





「ふむ、報告にあったのはこの区画、か」


 漆黒の鎧に身を包んだ偉丈夫が、『ゲヘナ・プロエリ』が存在していた筈の場所を眺め独りごちる。


「かの『創世神』も魔王様の勇名に恐れをなし、遁走したのでしょう。

全くもって情けない」


 ガハハハハハハ!と彼を取り巻く者達が嘲弄の声を上げる中、魔王と呼ばれた偉丈夫だけは眉をしかめてただ沈黙を守っている。


 偉丈夫の名はスパイル・ドゥレル。


 『不退転の剛剣』と呼ばれる、『魔王』の称号を持つ猛者である。


 彼は『堕ちたる創世神』と称されるこの『奈落』の支配者、エル・フィオーレに挑まんと遥々自らの領地から兵を率いてやってきたのだ。


 彼は自分こそが次代の『奈落』の支配者であるとの自負を抱いていた。


 だが、『堕ちたる創世神』が後継者を産んだとの噂を聞き、その秘めたる自負が痛く傷つけられた。


 それ故に自らの力を示さんと彼女が支配する領域へと兵を進めたのだが……結果は不在。


 領域がここに『存在している』以上、『神』がここに居ない訳がない。


(まさか、我の来訪を予見して身を隠したのか?

この広大な領内からかの『神』を探し出すのは我が手勢をもってしても相当に困難。

そうやって分断して各個撃破する算段か?)


 完全に戦争脳なスパイルには、これが『絡まれるのが嫌だから隠れた』などと言うどうしようもなくいい加減な理由によるものだとは思いもよらず、ただ純粋に戦術的な構想の下行われた行動だと錯覚する事しかできなかった。


 故に彼は引き連れた27万の魔神軍に勅命を下す。


「かの『創世神』は我らを各個撃破する目論見の元、この領内に隣神と共に潜伏していると推測される。

生活痕の一切をも消し去っての失踪がその根拠である。

故に我は命じる!

各魔神将は旗下の軍団を引き連れ、領内を端から炙り出せ!

蟲一匹逃すな! 全て皆殺しにしろっ!」


 ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


 大地が揺らぐほどの雄叫びと共に、魔王軍が動き出す。


 各将が旗下の軍団を再編、偵察部隊をそれぞれの担当区に放ち、出撃の用意を始めたその時だった。


「伝令!5時の方向より未確認の脅威が接近との報があり!

至急判断を願いたくッ!」


「何事だ?」


 魔王たちが異変の知らせを受け、拠点としていた天幕から外に出ると。


 5時、方角にして南南東方面の空に凄まじく巨大な闇の塊が広がっているのが見て取れた。


「なんだあれは?」


「雲?しかしその割には……」


 周囲がざわめく中、魔王の目には『それ』が何なのかがはっきりと理解できた、、出来てしまった。


 背筋に冷たいものが流れる。


「全軍!なりふり構わず逃げろーーーーーーーーーーっ!!」


「へ、陛下!?」「魔王様っ!?」


「あれは奴だ、グランヴィリオ……『冥獄龍』グランヴィリオだっ!!」


 魔王の叫びに配下達の阿鼻叫喚の悲鳴が上がる。


 空の闇が一層深まり、悍ましき力の波動が空気を震わせる中、魔王は錯乱しそうな思考を必死で整え、状況の整理に費やした。


(なぜ奴が、かの厄災がここに居る!?

まさか、『創世神』が不在だったのはこれを狙って……!?)


 完全なる勘違い、過大評価も良いところであるが当人にとっては目の前の全てこそ真実。


 自身が『創世神』に嵌められたのだという衝撃を抱えたまま彼は絶望の声を上げた。


「おのれ、おのれ!エル・フィオーーーーーーーーーレー……」


 魔王の絶叫は闇の奔流に飲み込まれ、後にはただ砕け散った大地と沈黙だけが残る。





 天を覆いつくす闇の塊は、地を這う虫けらの存在が消えたのを確認すると満足げにその身を揺るがせ、彼方へと消えていった。









フィオ「さーて、なに作ろうかなー♪」

フラヴィ「ん?なんか表が騒がしくない?」

フィオ「しらなーい。

そんな事よりボクっぽいゴーレムってどんなのがいいかなぁ♪

次回かみぐらしっ! 第35話 作ればいいというわけではなく」

フラヴィ「相変わらず不安しかない予告だなぁ」

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