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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第3章 『奈落』で生きるという事
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第28話 驚愕!幻惑の鏡・ジャバウォッグ

アニメ系表題の欠点は、展開が見えてしまう事だと見つけたり。


「そらそらそらそらぁっ!

拙者を無視などいい度胸でござる!

我が『メメント・モリ』の無限砲火を喰らうでござるよ!」


チュドドドドドドドドドドドッ!!!


 両手両肩にそれぞれ3連装魔導式ガトリングガンを装備したずんぐりした二足歩行する針ネズミ型ロボの頭上に陣取るキルギリオスが、魔力弾の弾幕広範囲掃射を指示しありったけの弾をぶちまける!


「……視えてはいる、が、なんと厄介な」


「ひひっ! この程度の弾幕、我の装甲を破るには足りんわ!

……じゃがとんでもない圧力、前に進めん」


「きゃー!きゃー!

当たったらどうするつもりですのっ!訴えますわよ!?」


 ノーマ・ノクサとジ・フィーニスの機体はキルギリオスの機体『メメント・モリ』の弾幕に釘付けにされ、動けずにいた。


 機体を失っているルーナ・ルーナはジ・フィーニスの『ディープ・アビス』を盾にキャーキャーと騒ぐのみで何の役にも立っていない。


 上空ではフラヴィオ達の駆る『ヴェリタス・イクウェス』が戦闘を開始。


 イッアム・シテーの操る巨大ロボ『アルティメット・オクタマンボーZ』とヴァーミリオスの操る『ジャバウォッグ』、2機を同時に相手取り奮戦していた。


(……某の力ではこの場の2機を抑えるので手一杯。

上の2体は……任せるでござるよ!

エル・フィオーレ殿、エル・フラヴィオ殿!)


 自分の駆る機体では時間稼ぎにしかならないと早々に見切りをつけ、キルギリオスは重弾幕展開による徹底した持久戦術をとる。


 宙を激しくも華麗に舞い踊り切り結ぶ飛行型の機体達を、視界の隅で確認しながらキルギリオスは歯を食いしばる。


 友神を助けられなかった。


 友神と思っていた相手の悪だくみを察する事が出来なかった。


 悪神などと呼ばれていても、根は善神な彼は、非力な自分を激しく恥じていた。


(だからこそ、今は拙者が出来る事を!)


 悔しさを発条に、彼は目の前の相手に集中する。


 実質4VS2の戦闘だ。


 彼が抜かれてしまえばあの気のいい『創世神』達はボロボロに痛めつけられてしまう。


 それだけはさせない、許さない。


 必死の抗戦は始まったばかりだ。




             ■


「ははっ! 素晴らしいね!カッコイイね!

搭乗型のゴーレムだなんて、最高に熱いね!

羨ましいなぁ!

私もそんな機体にしたらよかった!

ねぇ、イッアム・シテー!

アレ、倒したら貰っていいかな? 貰っていいよね!?」


『ジャバウォッグ』を操るヴァーミリオスが、展開するミラーリフレクターの一つに掴まったまま興奮の叫びをあげる。


「好きにするがええさ!

喰らえぃ! デストロイ・ギャラクティカ!」


 『トライマンボー』の肩で仁王立ちするイッアム・シテーが呆れながら自らの機体に指示を飛ばせば、轟音と共に暴風を纏った巨大な鋼の拳が『イクウェス』へと迫る。


 巨体の割に凄まじい速度で迫るパンチは、打ち抜かれる寸前にとんでもない速度で回転を始め、纏う暴風が小型の竜巻を巻き起こし暴れまわった。


 掠りでもすれば『イクウェス』の如き小型機などデストロイされる事間違いあるまい。


 パンチというより暴風竜の咢と形容すべき威力のそれを、『イクウェス』はまるで水流に身を任せる木の葉のように自然かつ最小の動きで躱す。


 間髪入れずに襲い来る『ジャバウォッグ』の光学兵器類の弾幕も、まるで全てが見えているかのように

躱して、躱して、躱しまくる。


「あはっ! 凄い、凄いね!

光を収束して撃ち込んでるんだよ!?

音よりも早い一撃をどうやって!?」


「教えてやる義理はないっ!」


 フラヴィオのつれない返事に頬を膨らませるヴァーミリオスであったが、次の瞬間にはコロッと表情を変え、叫ぶ。


「なら、君を壊してから自分で調べるよっ!」


 虹色の機獣がその両手の爪に光の刃を煌めかせ、『イクウェス』へと襲いかかっていった。





「地上でも上空でも2VS1の激しい戦いが繰り広げられてるぜっ!

とはいっても地上の方は地味だから、解説はド派手な空中戦が優先だっ!」


 リレーター氏の容赦ない割り切りっぷりに「「「地味って言うな!」」」と当事者達の激しい反論があったがどこ吹く風。


 観客の盛り上がりに任せ、宙で暴れまわる機体の解説に移る。


「まずはかの狂気の悪神、『自重無き叡智(マッドクリエイター)』イッアム・シテーの機体からだ。

全高25.4m、重量は武装抜きで418.6t!

どう見ても規約違反な機体に見えるが素体である『トライマンボーGX』の全高は9mしかないんだな!

そんな大きさの機体の中に、あのバカでかいメカドラゴンとメカマンモスが収納されてて、3身一体になってあのデカブツ、『アルティメット・オクタマンボーZ』へと合体するんだぜ!

あのバカでかい図体にも拘らず、見ての通り俊敏に宙を舞うその姿はまさに恐怖の天空魔神!

必殺のデストロイ・ギャラクティカは並の魔獣なら一瞬でミンチ!

その他様々な……って、やばいやばい、ここからは見てのお楽しみだなっ!」


 ぶー!ぶー!


 激しいブーイングもなんのその、テンポよく彼は解説を継続していく。


「次はあの虹色の機械獣!『ジャバウォッグ』だっ!

操者は『鏡界の守り人(ミラーシェイド)』ヴァーミリオス!

32枚のミラーリフレクターをお供に華麗に空駆けるこの魔獣に一切の死角なし!

まるで虹色の竜の如きその体躯にはなぜか翼が無い。

にも拘らず宙を舞う姿は神秘の何物でもないなっ!

全身いたるところに光を収束して打ち出す器官を備えていて、当然口からも吐く!

ついでに見ての通り、爪からも刃の如く伸びる!

鏡界の守り人(ミラーシェイド)』の駆る機体らしい、鏡を活かしまくったナイスな設計だぜ!」


「どーも~♪」


 当の本人は楽しそうにリフレクターにしがみつきながら観客相手に手など振っているのは緊張感のなさか余裕からか。


 リフレクターを駆使したレーザーによる激しいオールレンジ攻撃とレーザークローによる近接戦をこなしながらも的確に操作し得るのは、その権能たる『鏡』に関する能力故なのだろう。


「そんな凶悪無比な2機の魔神を相手に一歩も引かぬ互角な勝負をしているのは……。

この祭りの主催!『創世神』の小倅エル・フラヴィオとその過保護な親!『堕ちたる創世神』エル・フィオーレの駆る機体『ヴェリタス・イクウェス』……名前言いにくいわっ!だ~~~~~っ!」


「小倅言うなっ!」「誰が過保護だよ!」


 うおおおおおおおおお!! 


 二人の苦情など関係なしに、激しく会場が沸く。


「白銀に輝く装甲、背に展開された6枚の光翼、その姿は誰もが『天の騎士』を想像する神々しさ。

全高7,3m、武装抜きの重量は4.2tと他の機体と比べても小柄かつ計量。

そのくせあの装甲の下には様々な武装が隠されてやがるから堪らないわな!

基本武装は手にした騎士槍と盾。

どちらも見た目通りの代物じゃあないっ!

槍は先端部が高速回転する上に、根本に隠されたブースターの補助で超高速突撃可能な一点突破仕様!

盾にも小型のパイルバンカーが仕込まれていて迂闊に接近すれば龍の鱗すら紙切れ同然にぶち抜く威力!

おまけに先ほどから手前等も見ての通り『ジャバウォッグ』『オクタマンボー』両機の飽和攻撃が掠りもしない回避能力ときたもんだ!

相乗り機体にしたってその機動性はおかしいだろっ!?

どうやって操縦してんだ!

ちったぁ自重したモノ造りしやがれっ!!」


(やかましいわっ!)


 内心の叫びを決して口に出すことなく、フラヴィオは努めて冷静に冷徹に、操縦桿を握り、死地へと踏み込んでいく。


 身体から凄まじい勢いで神力が消費されていく。


 無限に等しい力を行使できる『神』とはいえ、一度に多量の神力を消耗するのは精神にクる。


 それでも『イクウェス』の()()()()()()()()である彼が気を抜けば、その分機体の出力は低下するのだから一瞬たりとも気は抜けない。


 目の前のモニター群に表示されるのは、彼の生み出せしケイ素生命体である『アイゼンミュラー』達が分析、演算した無数の戦闘データ。


 『イクウェス』の操縦席から機体全体に、まるで生物の感覚神経の如く張り巡らされた彼ら専用の情報伝達経路は、生みの親たるフラヴィオから魔力の供給を受け機体周辺のあらゆるデータを収集、分析していく。


 群体生命という特性を活かした量子演算機も真っ青の演算力は、敵弾道の軌道予測から敵機体の行動予測まで、未来予測と言っても過言ではないレベルで解析していく。


 『アイゼンミュラー』が提示する膨大な、高速の未来予測群を取捨選択し、フラヴィオへ提示するのがフィオの役割だった。


 『神』だからこそ可能な複数同時思考処理と、機械的、論理的な結論に至りがちな分析結果の中から『運命論的な揺らぎ』を汲み取り、『正解』を選び取る『力』。


 『神』として圧倒的にフラヴィオに勝る分野で、フィオは彼を強力にサポートする。


『どうやって操縦してんだ!』?


 そんなもの、決まっている。




 三身一体になって、だ!!




 『アイゼンミュラー』達が将来肉体変わりのゴーレムを獲得する為の雛形を造ろうと思った。


 かぁさまが膝の上で退屈しないように、と役割分担した。


 重量がかさばるモノの中から、操縦者が肩代わり可能なものを取捨選択して行ったら、骨組みと装甲、加速器以外は代用できそうだと判明した。


 それだけだ。


 それだけの事なのだ。


(『たったそれだけ』を積み重ね、望まれて、願われて生まれた機体が、欲と悪意に塗れ肥大化した機体にそう容易く負けるものかっ!)


 『ジャバウォッグ』から放たれる閃光の雨を舞うように躱し、合間を縫うように迫りくる光の爪は槍と盾を以て受け流す。


 ミラーリフレクターから放たれる反射レーザーは確かに驚異的な代物である。


 だが、こちらに確実に当てに来る意図があまりに明確過ぎて数の優位を活かせていないのだ。


 結果、『イクウェス』の回避行動に引きずられる様に弾道は単調化し、見た目は派手でも何の脅威にもならない演出へと成り下がる。


 なまじ威力はあるだけに、『オクタマンボー』との連携まで阻害してしまう始末だ。


 「凄い!凄いね!」と子供のように喜ぶヴァーミリオスは、未だそれに気づかない。


「フラヴィ! そろそろ『ジャバウォッグ』を()るよっ!」


「アイ、マムッ!」「データ解析、展開します!」


 レーザー光の雨の中を掻い潜りながらタイミングを計る。


 構えた槍の穂先が高速回転を始め、先端が『ジャバウォッグ』をロックする。


「あは!来るのかい!?

上等!かかってきなよっ!」


「言われなくともっ!

喰らえっ!『スパイラルブレイカー』!」


 銀の流星の如き『イクウェス』の動きが、騎士槍に内蔵されたブースターの後押しで雷光の如き速度へと変わる!


 迎え撃つ『ジャバウォッグ』のレーザーを真正面から躱し切り、その穂先が虹色の魔獣を射貫く!


「「なっ!?」」「ざ~~~~~んねんでしたっ!」


 槍の穂先は確かに『ジャバウォッグ』を穿っていた、にも拘らず。


「手ごたえが……ないだとっ!?」「フラヴィ、回避っ!」


 慌てて操縦桿を引くも完全回避には至らず、装甲を一部抉られる『イクウェス』。


「データ解析……!!

やられました主様!

あれは『本体』ではありません!

あの虹の魔獣は『質量ある映像』です!」


「んな!?

なんだよそれっ!!」「質量ある映像!?ただの虚像じゃないの!?」


「はい、どういう方法かあの虹色の魔獣からは確かな質量が計測されています。

ですがその実態は虚像。

恐らく、かの『神』の権能絡みの能力だと推測」


「『鏡』、かっ!」


「ははっ!気付かれたかなっ!?

今ので仕留められなかったのはちょっと痛かったかな?

でも大丈夫だよねぇ?

そっちの攻撃が無駄だってのは理解できたんでしょ?

なら、逃げるしかできないよね?

それは、私達が勝つってことだよっ!!」


「はんっ、ぼーうやもこの程度かい。

ならさっさと降参するがええわ。

婆に従うって言うなら、別にあんたの親まで滅ぼしたりゃせんわいな」


「……」



 冷たい汗が背筋を伝う。




 敵もさる者、という事だ。


 油断があったわけではなくとも、慢心はあったのかもしれない。




 勝負は、未だ決着の兆しを見せず。








フィオ「皆さんお待ちかねっ!

ヴァーミリオス操る『ジャバウォッグ』に翻弄される『イクウェス』。

閉ざされたかのように思えた未来。

ですが道は諦めない限りそこに在るのです!

それは、そう、一つの物語に導かれて。

奈落武道伝かみぐらしっ! 第29話 『かの騎士には見えていた』に、

レディ~~~~、ゴ~~~~!!!」

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