第26話 Gファイト開催!『奈落』の底の騎士
ゴーレムファイトネタは以前からやりたかったネタですので一切自重しません。
Gガ〇ダム?知りませんなぁ?
「なんか結構大事になってない?」
「企画自体が刺激的、賞品はもっと刺激的、とくれば噂を聞きつけた連中が集まるのは仕方ないじゃない」
「そりゃそうだけど……」
僕は、かぁさまの遺体をまるっと収納したカート(密閉式)を押しながら、目の前にそそり立つ巨大建造物を呆然と見上げる。
『奈落』の底だという事を忘れてしまいそうな近代的フォルムのそれは、『奈落』の各所から集まった暇神達が能力の限りを尽くして『創造』した巨大コロッセオ。
入り口にはでかでかと、それでいてセンス良く『ゲヘナ・プロエリ』という看板が。
「ガハハハハ!どうだ、凄かろうよ『創世神』殿よ。
我ら『自重せぬ建築神』団の技術の粋を込めて造り上げた不倒不壊の建造物よ!
次元破壊級術式でも罅一つ入らぬ位相転換式多重結界に守られた客席総数は実に35万神を収容可能!
サイズの異なる神々も快適に観戦出来るように通路や各席スペースにはサイズ調整の空間術式もセットされとるからな、ストレスフリーで一緒に観戦できる。
もちろん出店スペースやトイレ、救護室の施設類も充実!
この建物ひとつでペラペラペラペラ…………」
呆然としている僕らの隣で延々とこの建造物の解説をしてくれているのは、『奈落』に堕とされた悪神、邪神の中でもとにかく建築大好き、何か建ててないと頭がおかしくなる神々が集まってその権能を振るう『自重せぬ建築神』団の団長神、オーベルクラフト様だ。
建築やら芸術系の神様には変な方が多いのは何処の世界でも同じようで、彼は自分の信者に『自重しないオーバースペック』を求め続けたせいで悪神認定された異世界神だ。
『物作りに至高を追求し続けてなにが悪い!』と『奈落』墜ちしても一向に悪びれず、似たような思想の方たちを束ねる頭領になってしまった変神でもある。
この『自重せぬ建築神』団は『奈落』各地に勝手気ままに様々なモノを造って歩く集団で、無限の広さを持つこの『奈落』の特性をいいことにかなり好き放題に色々なモノを造っているらしい。
この手の神様は自身の製作物を壊されると怒り狂って祟ったりするのが常だが、この団の方針として『壊されたくないなら自分で守れ』『どうせすぐ次の至高を目指すだろ?』というものがあるため、あまり他所の神とはトラブルを起こさないとの事。
起こすといえば明らかにやり過ぎる事で起きるトラブルくらいだろうか……。
「35万神も収容できるコロッセオとか、自重しなさすぎでしょ……」
「だからボクいったじゃない!
彼等に頼むと事が大きくなるよ?って……」
『会場の設営ってどうしようか?』とかぁさまと相談していたら気配すら感じる事なく突然現れたのが彼等である。
材料資材は持ち込み、必要経費は自分たちの満足いくものを造らせてくれるならゼロ、その上超優秀な建築神集団と聞いて僕は喜んでお願いしたんだけど、かぁさまが渋い顔をしていたのはこうなる予想があったからなわけね。
「でも、機体の設計や製作を考えたら時間も手間も無かったんだし、結果オーライでいいんじゃない?」
「そのせいで『奈落』各所から暇神が集まってきちゃったじゃない。
会場だって予定の20倍近い広さになってるし。
はぁ……参加者の追加を防げたのだけが僥倖かな」
「ごめんねぇ、面倒かけて」
「いいよ、ボクに出来る事をするだけさ。
フラヴィはフラヴィで頑張って考えてくれた結果なんだしね?
子のフォローは親の仕事さ、存分に甘えるといいよ♪」
珍しくかぁさまが親っぽいことを言った。
明日は槍が降るかもしれない。
「臆しても未来が良くなるわけじゃない、行こうよフラヴィ」
「あぁ、最善を尽くそう」
■
『イヨゥ!「奈落」の底で退屈している暇神どもっ!
盛り上がってるか~~~~~っ!?』
『Yeeeeeeeeeeeeaaah!!』
広い戦闘用ステージの中心をどこからかスポットライトの様な円形の光が照らし、マイク片手に気勢を上げる神物を照らし出す。
今回の司会を勝手に引き受けた『語り継ぐもの』悪神リレーター氏である。
オールバックをビシッと決めて赤いスーツにサスペンダー、立派な口ヒゲをたくわえ目が悪い訳でもないにもかかわらず刀鍔の眼帯をしており、小指を立ててどこからか取り出すワイヤレスマイクを握る。
面白そうな場所に現れては、様々な秘密を暴露し語り継ぐという悪癖の為に悪神認定された方だ。
この大会にも呼んでも無いのに何処からか現れ、勝手に司会を引き受けた。
説明してもいないルール、各神の製作した機体のスペック等を調べ上げているのが分かった時点で幾人かが本気で『殺しに』かかったが、笑顔で逃げのびてしまうという中々手ごわい御仁だ。
放置してネタバレも不快なので期間中は司会兼解説役として裏方をお願いしている。
「フフフフフ、今回もたくさんのネタが集まりそうで何よりでございます」
と紳士的な口調で邪悪な笑みを浮かべていたのが印象深い。
そんな彼もTPOに合わせて態度を変えるようで、司会中はテンション上げ気味な粗暴口調だ。
『テメーらも噂で聞いた事があるだろう?
この「奈落」の一角で嵐のような猛威を振るった脅威の「埴輪」の存在を!
それを見事捕獲したこの「奈落の創世神」の小倅殿が、今回のお祭り騒ぎの元締めだっ!
最高のショーには最高の観客!
自重はすんな!だがマナーは守れよなっ!!』
『Yeeeeeeeeeeeeaaah!!』
『イヨゥシッ! 意思統一は完了って事で早速今回の祭りのルール説明に行くぜっ!
今回の祭りは、一定の規格内でならどんな仕込みもアリアリの自慢の「ゴーレム」を持ち寄り、バトルさせるって代物だ。
おいおい、ガッカリした顔すんなよ、たかがゴーレム?馬鹿言っちゃいけねぇ!
「あくまで素体はゴーレム」ってだけで、自立、搭乗、遠隔操作、なんでもござれだ!
武装だって大きさが企画ないならモーマンタイ!
その辺の鈍重な石ころと同じにされたら製作者が泣くってもんさ!
ほれほれ、興味がわいてきただろぅ?』
リレーター氏の見事な煽りで会場のボルテージはどんどん上がっていく。
気が付けばいつの間に入場したのか、会場の観覧席はかなりの数が埋まっているのが見て取れる。
「よっぽど暇神が多いんだねぇ……というか、こんなに居るんだ? 墜ちた神様」
「いるよ~? それこそピンキリでね。
それにここは知っての通り娯楽の娯の字も無い場所だからね~、面白い企画を聞きつけたらすぐに飛びついてくるよ。
昨日喧嘩してても今日は神友面で現れるのが『神』ってものさ」
「うはぁ、嫌だなぁ、そんな神友」
「うん、だからボクも関わらなかったの」
「納得だよ」
かぁさまがボッチだったのはコミュ力が低かったわけではなく、関わると面倒な連中が多すぎただけっぽいことにちょっと安心。
実際はどうなのかは分からないけどね!
そうこうしているうちに、リレーター氏は観衆にこの大会のルール説明を行っていた。
ちなみに大会名は勝手に『ライディングゴーレムファイト』に決定していた。
<ライディングゴーレム・ファイト(以下RGF)大会規約>
・第1条 3分以上の稼働不能状態(抑え込み含む)で敗北となる。
・第2条 操縦者を直接攻撃してはならない(間接なら可)。
・第3条 機体が完全破壊されても第1条に反さない限り敗北にはならない。
・第4条 同意があれば乱入、共闘、裏切りも認める。
・第5条 操縦者は登録者以外に己の機体を奪われてはならない。
・第6条 己の『名』に恥じぬ闘いを!
・第7条 『奈落』がリングだ!
<参加要項>
・参加神は自前で機体を用意しましょう。
・サイズは縦横奥行き10mの立方体に収まるサイズなら問題なし(屈むなども含む)。
・修理、改修は大会期間内なら自由に行えます。
・自分の身、機体は自分で守りましょう。
・協力者を募るのは自由ですが、操縦者はあくまで自身です。
・皆で楽しくファイトしましょう、遺恨は残すな!
というのが大会の基本ルールになる。
この辺は参考になるルールが僕の記憶の中に残っていたので、それを下地としてありがたく使わせてもらった。
使えるものは使う精神だ。
パクリとか気にしてたら神生なんてやってられないからね。
大会規約の説明が終わる頃には、参加者であるご近所さんたちは舞台の前に一堂に会していた。
「フフフ、ワガジシンサクヲオヒロメスルトキガキマシタノゥ」
「拙者の機体に肝をつぶす出ないぞ?」
「ひゃっひゃっひゃ!小僧共がどの口で言うか」
「……我が勝利は必然」
「私の権能の限りを尽くした機体、見るがいいです!」
「ふふふ、どんな相手でもわたくしには勝てませんわよ?」
「きひひひひ……全てワシの機体の糧にしてくれるさ」
「はんっ!うちのフラヴィが最高なんだって思い知るがいいよ!ねっ!」
「かぁさま、僕だけじゃなくてミュラりんもがんばるんだから」
互いに自慢の機体を完成させ、集った9神。
視線をぶつけ合い、牽制し合う事で否応なく高まる場の空気を上手にくみ取り、リレーター氏が高らかに声を張り上げた!
「それではRGF第1回大会!開幕ですっ!
注目の第1カードは……これだっ!」
高々と天に撃ちあがる光の奔流が描く文字は!
「第1試合 ルーナ・ルーナ VS ノーマ・ノクサ 」
ウオオオオオオオオオオオオオオ!!
興奮に沸き返る会場、名を示された二人の神は舞台へと進み出て高らかに己が機体を呼び寄せる!
「おいでませ我が従僕、傅きなさいな?『プファイファー』!」
手にした扇子を優雅に舞い踊らせ呼び出したるは傅く巨大な長髪の超イケメン騎士像!
その手には長大な抜身の大剣が握られ、立ち上がればその大きさは15mにも届こうかという巨体だ。
精緻なデザインの鎧といい、その美しさはまるで美術館の展示物であるかのようだ。
対する眼帯の神、ノーマ・イクサも自身の機体を呼び起こす。
「来たれ、来たれ、来たれ、来たれ、来たれ!
運命と踊れ我が僕、『水晶の人形姫』!」
空間がガラスのように高質化し、そこから滲み出るように現れたのは全身を水晶の多角錐で形成された美しきゴーレム。
接合部は水晶の先端同士が触れているだけという、物理的には接続不能な、だが機能的な美しさという点ではルーナ・ルーナの機体に勝るとも劣らない優美なデザイン。
全長7m程と、サイズ面においては『プファイファー』に大きく見劣りするが……。
「フフフっ、随分美しい機体ですが、そんな機体で大丈夫かしら?」
「……大丈夫だ、問題ない」
「それでは皆さんご一緒に……。
レディ~~~~~~~~、ゴーーーーーーーーーッ!!」
地鳴りの如き歓声と共に戦いの火ぶたは切って落とされた。
フィオ「皆さんお待ちかねっ!
大会期間中は絶対このパターンで予告しろって言われたフィオちゃんだよ!
早速バトルが始まったわけだけど、出番がないのは暇だよねぇ?
あれ、早速妙な動きをしてる連中が?
奈落武道伝かみぐらしっ! 第27話『戦えフラヴィ!敵は謎の神機体』に、
レディ~~~~~~~~ゴーーーーーーーーー!!」
フラヴィ「訴えられても知らないぞ……?」




