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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第3章 『奈落』で生きるという事
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第25話 災禍の種を育てましょう

順調にPV数も増えていて、嬉しくなります。

読んでくださってありがとう!


コ、コメントもくれるとさらに嬉しいのよ?



「『矛盾結晶』……おぬし等なら、この結晶の力の程は理解できるじゃろう?」


 ふぇっふぇっふぇ、と、どこまでも底意地悪く、かつ薄気味悪い笑みを浮かべるイッアム婆さんと、その手の結晶を射るような視線で見つめる神々。


「……イッアム・シテー、それを今すぐ渡すんだ。

そんな危険な代物は即刻破棄しなきゃいけない」


 普段のお気楽な姿からは考えられない声色で僕の腕の中のかぁさまが婆さんを睨みつける。


 かぁさまの珍しく激しい怒気の籠った声が言霊付きでイッアム婆さんに襲いかかるが、並の存在ならあっさりと潰されてしまいそうな言葉の圧も、婆さんは余裕綽々でいなしてみせる。


「ふぇっふぇっふぇ、あまり焦るんじゃないよ『創世神』殿。

()()()()()()()とっくに黙って使うとる、そうじゃろ?」


「!! ……それは、そうかもしれないけど」


「ひひっ、わかりませんねぇ~? そんな貴重なモノ黙ってくすねるくらい訳もなかったでしょう?

何故我々に開示するのです?

別に主従関係でも無し、お互いただの隣神でしかないのに」


「隣神だから、じゃよ」


 ジ・フィーニスの訝しむような問いに、イッアム婆さんは至極当然とばかりに答えを返す。


「アレの解析を請け負った婆が『結晶』をネコババするのは容易い、実に容易い事じゃ。

あの『埴輪』の中身なんぞお主らは気にもせんかったし、手間賃としてもらってしまってもいいかもしれん……それくらいは婆とて考えたわ。

じゃがのォ~……」


 途中で言葉を切ると、彼女は集まっている神々一柱一柱をゆっくりと見つめ、言う。


「ぶ~っちゃけ、こんなもんワシ等が持っとってもまともに活かす術がないんじゃよ。

なんせ、婆がこれをお主らに見せた時、揃って『眼の色を変えた』からのぅ?」


 その言葉に心当たりがある者たちは誤魔化す様に目を伏せたり視線を泳がせる。


 皆、あの結晶を見た瞬間にその秘めたる力に魅せられてしまったという事なのだ。


 そして、力に魅せられたものは、()()力に溺れる。


「……だからこそ、ボクはそれを破壊しなきゃいけないと思ってる。

イッアム・シテー、思慮深い君の事だ、そのくらい分かるだろう?」


「もちろんじゃとも、じゃ~がの~、さっきちょ~っと()()()()()を見てしもうてな?

それでちょいと気が変わった。

ふぇっふぇっふぇ!これはすぐには渡せんの~♪」


「なっ!?」


「………そんな『力』を、ヌシは独占する気か?」


「いけませんわね~?

あなたが独占するなら私だって独占する権利があると思いますわ~?」


「バァサマヨ、ヨクヲカクノハヨロシクナカロウ?」


 婆さんの不穏な言葉に、それまで黙っていた神たちも警戒を示し、空気がピンと張り詰めた。


 かぁさまが『破壊する』なら誰の得にも損にもならないからと見過ごすことが可能でも、個神の手に渡るのは避けたい……そう思うのは世の常だ。


 まさに一触即発。


 そんな中、ポツリと呟く神がいた。


「……また、拙者の権能が災禍を呼ぶのでござろうか」


 『戦禍呼ぶもの(マガツキ)』の二つ名を持つ厄神キルギリオス。


『生きる事は戦う事』という概念から生じ、戦神として崇められながらも『戦いの為の加護を与えない』為に『戦禍を呼ぶ厄神』として悪神に堕とされた彼は、周囲で争いごとが起きると自分の権能のせいではなかろうか?と思い悩む豆腐メンタルな神だった。


 今回も場の空気が悪くなったことでそんなネガティブメンタルが発言したようで……彼の周囲の空気が一気に瘴気を孕んだどよ~んとしたものと化す。


「むぅ、別に貴殿の権能がこの場の争いを招いたわけではないと思うぞ?」


「ソ、ソウジャテ。

オヌシハイツモソウヤッテワルイコトハジブンノセイニスルガ……」


「そうですわねぇ~、普段は『拙者、某!』なんて威勢がいい割に妙なところでナイーブ……」


「「「あんたは黙ってろ」」」


「ルーナの扱い、酷くないですかぁ~??」


「ふぇっふぇっふぇ!

『戦禍』のが思い悩んでも仕方があるまいよ。

普段は『創世神』殿の庇護下、大人しくしとるお主らが明確な『力』を見た瞬間、掌を返したように目の色を変えたんじゃからな。

厄神『戦禍』としては己が権能に周囲が中てられたと感じるのは当然じゃろうて、のう、ぼーうや?」


 そこで何故か婆さんは僕に話を振る。


 そうなれば皆の視線は当然僕に集中する訳で。


「皆、婆さんの悪ふざけに踊らされ過ぎだよ。

『矛盾結晶』、だっけ?

相当力のあるモノだってのは見ればわかるけど、婆さんが皆の前に見せたって段階でどう考えても裏があるのは分かりそうなもんじゃない。

婆さんが超大好きな『ロボ』の超強力な『動力炉』に()()()()()代物をわざわざ僕らの前に見せたってことは、ただ『動力炉』にするより面白い事を考えたから、に決まってるでしょうに」


「「「「「「「あ~~~」」」」」」」」


「ふぇっふぇっふぇっふぇ!! 流石はぼーうやじゃのっ! 

婆の浪漫を理解してくれるだけの事はあるっ!

そう、その通りじゃ!

こんなもん、ただ『動力炉』にしたのではつまらんしもったいないっ!

あの『埴輪』には皆えらい迷惑をこうむったのじゃからな。

だったら皆で楽しく使い道を考えるのが筋じゃろうて!」


 婆さんはそう言っているけれど、実際は違うのだろう。


 『動力炉』に()()()()()()()()皆を集めて問うたのだ。


 自身では扱いきれぬと判断したからこうして曝け出したのだ。


 皆で楽しく?


 そんな性格しているのなら『悪神』などとは呼ばれない。


 ま、ここでいう事じゃないから黙ってるけどね。


 同様の事は他の神様だって思っている事だろうし。




「なるほどね、皆で楽しくってのはいい考えだよ。

じゃあ具体的にどうするかってアイディアはあるのかな?」


「ない」


「「「「「おいっ!!」」」」」


 かぁさまの問いにあっさりと『無い』と言い切る辺りが婆さんの潔さかもしれない。


「……アイディアも無いのに皆で楽しく、といわれても困る」


「拙者としては争いの種などさっさと破壊して欲しいものだが」


「ひひっ、もったいない、もったいないですなぁ、壊すくらいなら私が取り込んで」


「はい却下。

壊した方が安全なのは確かだけど、稀少触媒なだけにもったいないっていうのも事実なんだよね。

でも、使い道といわれてもボクらに逼迫した用途は無いからなぁ~」


 言うなれば、タンカーごと原油を拾ってしまったようなものだろう。


 使い道はある。


 でも、直近でどう使おうかとなると困る、という。


 そういう意味では全くもって面倒な代物を持ち込んでくれたと思う。





「ところでさ、婆さんは最初これを持ち込んだ段階ではどうしようと思ったの?」


「最初は捕縛者であるお主に預ける気だったのよ。

婆がネコババしたとか、お主らと共謀してたなどと後になって言われるのも不快じゃて、皆の前で引き渡そうと思ったんじゃがのう」


「皆が結晶を見て目の色を変えたから、単に『捕縛者』だからという理由だけで僕らに引き渡せば揉めるんじゃないか、って?」


「そういう事じゃ」


 ああでもない、こうでもないと皆が『結晶の使い道』を考える中、気になったことを問うてみれば婆さんはあっさりと真相を話してくれた。


「大きな力は人であれ神であれ破滅へと導く厄介な代物じゃ。

実のところ、『トライマンボーGZ』の動力にあの結晶を用いようとしたんじゃがの、あまりの力にジェネレーターが一瞬で臨界突破しかけたんじゃ。

ある程度予想はしておったから即座に停止し事なきを得たが、制御にしくじっておったらこの辺一帯に大規模なブラックホールが出来上がるとこじゃったわい」


「何やっちゃってんの!?」


「未遂じゃ未遂。

流石に肝を冷やしたんでの。

押しつけに来た」


「素直過ぎるのも問題だなぁ」


「ま、そういう訳じゃて、何か上手い方法はないかの?」


 相変わらずの胡散臭い笑みを浮かべて婆さんが僕に問う。


 結局のところ、まともに扱えそうなのはかぁさまくらいなもので、そのかぁさまも出来れば扱いたくはない、と。


 だからと言って適当な選定基準で誰かに託すわけにもいかず、皆が納得できる相手の手に渡ることが望ましい訳か。


「そうなれば穏便に所有者を決めるくらいしかないよなぁ?」


「それが決まらないからこうして悩んでるんじゃないか」


 黙って僕らの話を聞いていたかぁさまからツッコミが入る。


「ボクたちが相争うようなことになれば本末転倒だし、何かで競い合うにしてもフェアに勝ち負けを決められるものなんてそうそうないでしょ?」


「そうでもないよ」


「え?」


「婆さんが答えは見せてくれたじゃないか。

僕らは『神』だ。

得意不得意はあるかもしれないけれど、『創造』の力を扱える。

皆の知恵と創意工夫と権能の限りを駆使して、『ロボ』でも作ってバトルしてみたら?

自分で乗ってもいいし、完全自動操縦でもいい。

元々戦闘力皆無な僕達なんだもん、自己防衛戦力の充実も兼ねて……名前は、そうだね、ファンタジーっぽく『ゴーレムファイト』とでも名付けてみようか」


「『ゴーレムファイト』……?」


 皆が息を呑んでこちらを見る。


「全員が一定のレギュレーションの下、それを逸脱しない範囲で機体を設計。

勝ち抜き戦でも競技でも戦闘でも何でもいいけど、ルールの下に勝敗を決めて優勝したら『矛盾結晶』を賞品としてもらう、って事なら納得いくんじゃない?

独りで創るのが大変なら協力し合ってもいいし、もちろん裏切ってもいい。

『遺恨は残さず』をモットーにお互いに出し抜き合うのも楽しいよね?」


「争うのではなく、競い合う……」


 キルギリオスさんが、拳を握り締めて感涙に震えていた。


「『戦禍』ノ、ヨカッタノゥ」


 ゲジュルベリアさんはそんなキルギリオスさんの肩を叩いて一緒に喜んでいた。


「面白そうね、皆、帰ったらアイディアを出しなさい?

私に最高の機体を用意してね?」「「「はは~~!!」」」


 ルーナ・ルーナは取り巻き相手に早速指示を飛ばし。


「ルールを決めて争う、か。ふふふ……久方ぶりに血が騒ぐな」


「ノーマ殿っ、戻り次第設計図を引きましょうぞ!

自分、是非とも実現したいアイディア~があるのです!」


 眼帯に触れながらクックックと低い声で笑うノーマ・ノクサと両手を振り回し興奮気味なヴァーミリオス、そして。


「ルールにのっとった争い、ひひっ、綺麗事、綺麗事じゃのう。

じゃが、それがいい!

同じテーブルについて、水面下での騙し合い!

ふひひひっ!楽しいことを考えよるわ、『創世神』の小倅よっ!

ふひっひひひひひっ!!」


 ジ・フィーニスもそのスライムボディをプルプルさせながら興奮した様子で参加を表明する。



 こうして『奈落』の底で『神』達による娯楽、『ゴーレムファイト』の開催が決定した。





 賞品は『矛盾結晶』。


 『創世神』さえもその秘めたる力を危険視する『稀少触媒』である。









フィオ「また妙な方向に流れが!」

フラヴィ「日常ものと言いつつ、バトルしたりしてるし良いんじゃない?」

フィオ「ボクの出番が減るじゃないか!」

フラヴィ「僕の膝の上で単座複座?すればいいんじゃない?」

フィオ「なら許すよっ!じゃあ恒例の次回予告だねっ!

皆さんお待ちかねぇっ!

フラヴィの発言から開催が決まった『矛盾結晶』を賭けた争い!

それぞれの神がその叡智と権能をかけて、勝利の為に自身の最強を繰り出すのですっ!

かみぐらしっ!第26話「Gファイト開催!『奈落』の底の騎士」にぃ、

レディ~~~~ゴ~~~~!!」

フラヴィ「いいよねぇ、Gガン〇ム」

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