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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第3章 『奈落』で生きるという事
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幕間 異世界のくるしみます(2019)


 クリスマスは僕等の世界の神の子の誕生を祝う行事だ。


 故にかぁさまの世界では存在しない行事である、のだが。


「ハッピーバースデー!

おめでとーう!フラヴィ~! いえーい!」


「おめでとうございます主様」


 『魂』姿のかぁさまと、ピコピコ眩しく輝くミュラりんが揃って僕を祝ってくれる。


 地面にはへたくそな字で書かれた『めりーくるしみます』の文字。


 くるしみますって何をだよ……気持ちは嬉しいから口には出さないが。


「……ありがとう。

で、これは一体何の騒ぎだい?」


「え?今日はクリスマスなんでしょ?

クリスマスは『神の子の誕生日』でしょ?

だったらフラヴィの誕生を祝う日じゃない」


 もの凄い正論なんだけど。


 確かにもの凄い正論なんだけど!


「あのさ?

確かにクリスマスはかぁさまが言ったとおりの日だし、僕は『神の子』に相当するだろうから間違いじゃないとは思うんだ。

でも、誕生日って言うのはその人の生まれた日だから誕生日であって、僕の誕生日は今日じゃないだろう?」


「な、何を言っているのかなぁ?

フラヴィの誕生日は今日だよ?

今日に決まっているじゃないか~」


 明後日の方向を見ながら棒読みでそんな嘘をついてもすぐわかるから。


「で、何がしたくてこんな真似を?」


「お、怒ってない?」


「怒る様な話じゃないし」


「え~っとね?」「いつも頑張ってらっしゃる主様への母君のお気持ちです」

「ミュラりん!恥かしいから言っちゃ駄目っ!!」


 わたわたするかぁさまの姿は見た目相応のものでとても愛らしい。


 照れて顔が真っ赤な辺りもポイント高めだが……


「足元で白目をむいている本体が全てを台無しにしているよなぁ」


「なんの事ぉっ!?」


 幾らロリ好き幼女好きでも流石に死体(生首)は愛せまい。


 そこまで行ったら病院か警察に拘束して連れていくべきだろうなぁ。


「ま、そんな変態はいないだろうけど」


「だから誰と話してるのっ!?」


「母君、落ち着いてください!!」


 あんまり無視すると後が面倒だからそろそろいじるのはやめとこっと。


「大丈夫だよかぁさま、かぁさまの事を狙う輩が居たらって考えてただけ」


「いやん♪ フラヴィったらボクに甘え足りないのかい?

なら今日はたっぷり甘えていいよ~♪

なんならママって呼んでもいいよ~♪」


「断じて断る」


「ひどっ!」


「大体さ?

僕を祝いたいなんて言うのは口実だろう?

たまたまクリスマスなんてイベントの事を思い出して、内容的にちょうどいいからネタにして騒ごうって言う魂胆しか見えない」


「ぎくっ!」


「それにさ、お祝いしよう、騒ごうって言っても基本的に飲み食い不要な僕等としては、何か特別なあれこれをするわけでもないでしょ?

クリスマスの特別なイベントって言ったらパーティーかデートイベントくらいしかないよ?

サンタクロースなんて『奈落』に現れるわけもないし」


「あはは……確かにねぇ。

ここの空間結界ぶち抜いてプレゼントを届けに来てくれるような超越存在なら」


『Merry Christmas‼ Haha~!!』


 きゅいん ぽいっ ゴトゴトゴトン  しーん


「「「…………」」」


 どこからか聞こえてきた陽気なお爺さんの声と、いきなり開いた『異界の門』。


 そしてそこから飛び出てきた包みが3つ。


 赤と白のストライプに彩られた美しい包装紙に包まれたそれは、まごう事なき……


「「クリスマスプレゼント!?」」「これがそう、なのですか?」


「というか今の何!?」


「知らないよ! え、もしかしてさっきの声が噂のサンタクロース!?

フラヴィ、嘘ついたの!?ほんとに居たじゃないっ!!」


「僕に言われたって困るよっ!

『本物』なんてほぼ都市伝説化してるんだからっ!」


「それ以前に『奈落』の結界を抜いて贈り物を送り付けてくる事こそ脅威と分析」


「「ミュラりんはぶれないなぁ」」


「??」


 突然の本物らしきサンタクロースからのプレゼントに驚きつつも、何故か妙な納得をしてしまう。


「そうだなぁ、『神』が実在するなら『サンタクロース』がいてもおかしくないのかもしれないなぁ」


「かなり心臓に悪かったけどね~。

それにしても、何をくれたのかな?」


 3つあるという事はこの場の全員がお子様扱いされたという事なのだが……かぁさまはその辺りは気にしないようである。


 都合がいい時はガキ扱いOKなんだから困るよね。


 ぱっと見ではほぼ同じような包装なので、適当に手渡す。


「といっても開けるのは僕の仕事か」


「あはは♪」


「お手間をおかけします」


 かぁさまはバラバラ死体だしミュラりんは未だゴーレム生成まで至らないからね、仕方ないさ。


 それでは、とまずミュラりんのものから開ける。


 中から出てきたのは……一冊の、黒い革表紙の分厚い……


「「「本」」」


 パラパラ~~と中をめくると、何か見覚えがある書式のラテン語らしき書物。


「これは……何の本でしょうか?」


「これって何語?

翻訳は出来るけどフラヴィの国の言葉じゃないよね?」


「う~ん、なんかラテン語っぽい?」


 そう答えつつ自分の包装を開けると、中からは黒い革表紙の……


「同じ本」「だね?」「ですね」


 ただ、捲ったページの文字は日本語で。


 目に入ったのは『望みをいだいて喜び、患難に耐え、常に祈りなさい。』という何処かで聞いた事があるような言葉。


「これ、『聖書』じゃないかっ!!」


「「聖書??」」


「僕のいた世界の宗教の教えをまとめた本だよ。

クリスマスって言うのはこの宗教の聖人の誕生を祝う日なんだ。

……ってことは、もしかして……」


 かぁさまの分の包装を破ればそこから現れたのは……やっぱり黒表紙の分厚い本。


「「「うわぁ……」」」


 中身は英語版でした。


「えっと、サンタクロースって良い子にプレゼント配る人……なんだよね?」


 かぁさまが頭痛を堪えるように僕に問う。


「うん、まぁ普通は親が子供に夢を与えるネタにするだけの存在なんだけどね。

まさか布教活動に勤しんでるだなんて思わなかったなぁ」


「布教も何も、ボクら『神様』なんですけどっ!?

正真正銘の『神様』にぽっと出の自称唯一神が喧嘩でも売るってわけ!?

買うよ!?フィオちゃん買っちゃうよ!?」


 ふがー!!と鼻息も荒く気勢を上げるかぁさまだけども。


「ここから出るだけでも大変なのにそんな余裕ないんじゃない?」


「そう言われるとそうだねっ!」


 コロッと態度を反転させた。


 まぁ、ここは行きはよいよい帰りは無理無理の『奈落』だからねぇ。


「ところで、この本どうする?」


「「処分」」


 信者の方には申し訳ないけど、ゴミになるので処理(焼却)させていただきました。







「あ、それとかぁさま」


「ん、どうしたんだい?」


「クリスマスって25日だから(この話は12月26日に投稿されました)」


「なんっ……!?」


「やるならちゃんと25日にやろうね?ってことで」


「そんなぁ~~~!!」




 気持ちは嬉しかったから来年はきちんと当日にやってほしいな~、そんな事を考えながらさっさと僕はサンタクロース・ショックを忘れ去ることにした。



 『布教』の為なら異世界にも現れる漢、その名はサンタ・クロース。


 来年は君のいる異世界にも……?











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