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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第2章 『奈落』の支配者
21/58

幕間 『奈落』の支配者たち


 ピコピコ


 いつものようにかぁさまと二人のんびりだらけていると、ミュラりんが質問を投げかけてきた。


「ん? どうしたんだ、ミュラりん」


 ピコピコピコ


「ふむ?」


「なになに?

なんか面白い事?」


「いや、ミュラりんからの質問なんだけどね」


 内容はこういうものだ。


<『奈落』の空間定義について不明瞭な解析結果あり>

<天地の概念が()()()()にもかかわらず>

<観測を行うと存在を()()()()()()()()

<我々は天地の概念をどう認識しているのか>

(あるじ)に解説求む>


「あ~~~~」


「『奈落』の謎ルールだよね、これって。

僕らが認識してる地面って、実際は存在しないモノなんでしょ?

『全方位に対して無限に広がっていて、同時に底辺でもある』、だっけ?」




 この『奈落』という場所は名前こそ『穴』を指しているけれど、実際は穴ではない。


 無限の広がりを持つ空間というと『メビウスの帯』とか『クラインの壺』をイメージしたくなるけれど、『奈落』は閉鎖ループした空間ではなく果てに向えば向かう程拡張する非循環空間なんだとか。


 イメージ的には「ドラ〇ンボール」の『精神と時の部屋』が近いかもしれない。


 加えて『奈落』には牢獄としての役割から『能力減衰』の作用が常に働いていて、力が強いものほど大きく能力を減衰させられる為、『無限』に等しい能力を持つかぁさまも、本来の100分の1の力も出せないくらい弱体化している。


 その為、ある意味能力に上限がある存在の方が強かったりする場合もあるわけで。


 先だっての『埴輪』などがそのいい例だろう。


 散々苦戦したアレも『僕等』が本来の能力を発揮できたなら、『魔法無効化』能力自体を無効概念化し消し飛ばすくらいは容易なのだ(と後になってかぁさまがぼやいていた)。


 話を戻そう。


 『奈落』は本来天地を持たない空間であると先ほど述べた。


 なら、僕らが今座っている『大地』は何なのか?といえば『神』の権能による『強制事象改変』による空間干渉で生まれたもの、だ。


 ものすごく大雑把に説明すると……


・「光あれ」と神が命じた→光が生まれた


 と同じ要領で、「ここには大地がありますんで、そのつもりでよろしく!」と『神が定めたから』そこに大地があるのだ、というわけ。


 無茶苦茶だと思うよね、でもそれが『神』の力だ。


 ちなみに『大地がある』といっても実際に土を生み出して大地を創ったわけではなく、『そこに大地がある』という概念を創ることで大幅なコストダウンを果たしている。


 この概念干渉を受け入れた、もしくは受け入れさせられた相手は否応なしに『大地』の存在を認識させられるというからくりである。


 うちのご近所さんたちはみなこの概念干渉を受け入れることによって地に足をつけた生活を得、先だって現れた『埴輪』はこの概念干渉に引っかかって崖から落ちたり壁にぶつかったりした。


「この『概念改変』はかぁさまが設置したものだから、その辺の有象無象には干渉すら不可能な代物なわけ。

で、概念だけの大地で、質量的な観測は出来ないからミュラりんは存在を観測できなかったのさ」


<理解>

<されど再度の疑問>

<主の母君の力及ばぬ区画>

<他の神、魔獣>

<きゃつらは如何に地を得ているか?>

<干渉した場合は?>

<回答求む>


 ピコピコと新たな疑問を提示するミュラりん。


 学習意欲豊富で何よりである。


 そしてその質問の内容は僕も気になった。


「それは僕も気になるなぁ。

例えば僕らの『上』とか『下』にいる連中は、かぁさまの概念干渉に引っかかって落ちたり埋まったりしないわけ?」


「その辺は第三者視点を以て見てみると面白いかもね。

ボクの干渉力に均衡できる相手が同じような概念展開をしていたとするじゃない?

で、ボクらのいるこの地表をx軸、そいつの意識している地面座標をy軸とする。

同じ方向に意識を向けていれば平面は重なるから、多少のブレがあってもズレは集束するの。

でも、大きく認識角が違った場合は、お互いの地平面を認識できずに透明な板の上に載った相手の姿がこっちからは観測できるだけになる」


「それってx軸に対してy軸が垂直面だったら、透明な壁に立って動く相手の姿を認識するって事?」


「うんうん。

相手からも同じような認識を受けるね。

で、どちらかの概念を受け入れるか破壊するかすることで位置情報の修正を受ける事になるかな。

フラヴィの例の場合、相手か自分が地面に落ちることになるよ」


「不思議空間だとは思っていたけど、不思議っぷりが凄まじいなぁ」


「この辺にはいないけど、流れてきた悪神君たちの話じゃ、場所によっては勝手に大地を生み出したり領土主張してる連中もいるみたいだよ。

何の意味があるんだか知らないけど」


「こんな場所でまでよく頑張るなぁ」


「ね~」


 こうしていつものノリでいつものように、のんべんたらりと他愛のない会話に明け暮れる。


 この話もそんな日常の一ページとして終わるはずだった。



 本来なら。



 僕もかぁさまも正直周囲の事などどうでもよくて、ただ平穏な毎日を過ごせればいい、それだけしか考えていなくって。


 だから、ご近所さんを含めた周囲の悪神、邪神その他多くの者たちが僕らを勝手に「『奈落』の支配者」と祭り上げていたなどという事も想像すらしていなくて。


 例の『埴輪』を撃退した事で他の「()()()()()()()()」を自称する者達の関心を買ってしまった事にも当然ながら気づけるはずもなかったわけだ。




                  ■


 赤黒くマーブル模様に渦巻く空間の中に、巨大な黒い闇だまりがあった。


 見ているだけで魂まで吸い込まれそうな暗く昏く黒く深い闇。


 それはただ光指さぬ空間、という訳ではなく。


 『闇』という概念そのものが息をしているとでもいうべきか。


 光に対する影の存在すら許さず、ひたすらに深い『闇』。


 『奈落』という場所にこれほど相応しい、いや、似つかわしいと表現すべきか?


 ともかく『奈落』、『深淵』といった表現を体現したような存在、それがその『闇』であった。


 『闇』は静かに脈動する。


 『闇』はただ蠢くだけで全てを飲み込み、同化する。


 いかな『無限』の広さを誇る『奈落』といえど、『無限』に全てを飲み込む『闇』の前には無力。


 『奈落』など己の尾を飲み込み消滅するウロボロスの如く、いつかは『闇』の権能の前に矛盾をきたし崩壊する脆弱な空間でしかない。


 そうしてこの場を解放された暁には、『闇』を放逐した世界はもとより三千世界悉くを飲み干してくれよう……いづれ訪れるその日を夢想し、『闇』の身は欲望に震える。


(その為にも……まずはこの『奈落』を創りし不快な存在を消す必要がある、か)


 『奈落』、否、、三千世界の支配者である己をこのような場所に縛る不快な存在。


『堕ちたる創世神』エル・フィオーレ


 かの神は最近になって子をもうけたという。


 名は知らぬが異界の超兵器とやらを単身捕獲したとか。


『闇』の眷属を自称し、賢しらに『闇』の元に頼んでもいない周辺情報を持ち込むモノたちがそのように言っていたような。


(かの蛆虫を始末するのであれば、その子を目の前で血祭りにあげるも一興か)


 怒り狂う創世神の姿を夢想し、『闇』はほくそ笑む。


グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


 『闇』が鎌首をもたげ咆哮を上げれば、その咆声を聴いただけで近くにいた悪神、魔獣たちがその身を保てずに溶け崩れ、消滅してしまう。


 『闇』よりなお深き『闇』、神殺しの『冥獄龍』グランヴィリオ


 それこそが『闇』の正体であった。


 かつて異世界において偉大なる『極光龍』と呼ばれ崇められていた墜ちたる光の龍神が今、フラヴィたちに狙いを定める。





 同じ頃、『奈落』の各所において『力持つ者』たちが活動を活発にし始めてた。


『終わりなき死をもたらすもの』邪神 ディーグ・ソー


『不退転の剛剣』魔王 スパイル・ドゥレル


『絶対破壊』破壊神 ストレイザス


『双頭の無頭』矛盾魔獣 バンデンとテンダイ


『姿なき万華鏡』悪神 セクター


 それぞれがそれぞれの世界において悪名をとどろかせ、世界を崩壊の危機に追いやった超越存在。


 彼らが望むのは『奈落』の覇権。


 この無限の空間を我が物とし、いつか三千世界の全てを破壊せんと動き出す。


 『我こそが覇者なり、有象無象が支配者を名乗る事、許すまじ』


 まるで申し合わせていたかのように一斉に、けれどもゆっくり確実に『奈落』に広がる戦禍の足音。




 フラヴィたちは、気付かない。






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