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かみぐらしっ!  作者: 葵・悠陽
第2章 『奈落』の支配者
17/58

第17話 嵐を呼ぶ男

基本的に『奈落』って危ない場所なんですよねぇ回です。


 「それ」は突然の出来事だった。


 だだだだだだだだだ………!


 何かが通り過ぎた?とつい疑問符をつけてしまいたくなるような、そんな一瞬の出来事。


 足音の様なものを聞き取った気がする程度の、そんな気付き。


(なんだ?)


 そう思った瞬間、かぁさまから悲鳴のような声が上がった!


「フラヴィ! 防壁展開っ! 『全力』でっ!」


「っ!?」


 うむを言わせぬ強く鋭い声に即座に持てる最高硬度の魔術障壁を展開。


「『参天の座廻りて是不動の楔と為し

回廊の扉を閉ざす鍵を回せ

都へ続く道を断ち森は惑いの牢獄と化せ』

断層乖離(ニル・アドミラリ・)結界(オービチェ)』!!展開っ!」


 空間断層を何重にも張り巡らせて連続性のある攻撃をシャットアウトする結界型障壁!


 防御よりも飽和攻撃を受け流すことに重きを置いた結界型障壁である。


 1024枚に渡って形成された空間断層。


 それが設置したその瞬間、700層近くを音もなく一気に削り取られる。


「んなっ!?」


「ダメっ! 視えないっ!」


 何事が起きたのか全く分からないままに、残る障壁を必死で維持。


 数瞬遅れて轟音と共に嵐……というより数えきれない数の()()()()()がまるでレミングスの集団の如く密集して襲いかかってきた!


「う、嘘だろおおおおおおおおおお!!」

「ひゃあああああああああ!!」


 いくら障壁に守られていると言っても、目に見えて暴れまわる竜巻に飲まれるというのはとてつもない恐怖体験だ。


 障壁の中で僕はかぁさまとミュラりんをしっかりと抱えながら、必死で結界障壁を維持し続ける。


 竜巻が過ぎ去り、『奈落』の底に静寂が訪れても……しばらくの間、身体の震えがおさまることはなかった。





「さっきのあれ、一体何だったの?」


「ボクにもさっぱりわかんない。

今まであんな妙な現象起きた事ないよ」


 ミュラりんがピコピコと点滅を繰り返し何事かを伝えてくる。


「えっと……竜巻発生前に何かの通過を確認?

竜巻はその何かの通過の結果として起きた現象と推測?」


「あ、そういえば確かに、何か足音みたいなのが先ぶれで聞こえた様な」


「そうそう!ボクその音を聞いたらなんかゾワッとした感じがしたんだよ!

それで障壁を張ってもらったんだ」


「なるほど……。

じゃあその足音らしき何かの正体がつかめれば事と次第が判明するって事かな」


「そうだね!

……まぁ、また現れるような事があれば、だけど」


 そう、この無限に広い『奈落』の底で、意図的でもなければそう何度も同じ相手と出くわす事はない。


 特に僕の『魂』を狙っていた連中は、魔法訓練期間中に徹底的に的にした関係で僕の射程範囲から数倍の距離を置いている。


 その距離たるや気軽に往復できる距離ではないので、連中の報復とは考えにくい。


 ま、「また」があればの話だな……と、その時は気軽に考えていたんだ。




 甘かった。




 どこからか響いてきた聞き覚えのあるかすかな音。


 だだだだだだだだだ………!


「まさかっ!?」


「フラヴィっ!!」


「ええ~~~いっ!『断層乖離(ニル・アドミラリ・)結界(オービチェ)』!」


 音の聞こえてきた方の障壁が数枚消し飛ぶ。


 遅れてやってくるのは……例の竜巻の群れ。


「「またかよ(なの)~~~~~~!!」」


 ほとんど涙目になりながら、僕等は結界障壁の中で大災害をやり過ごす。


 この後、実に4回に渡り同じような事が起きたのだが……。


 結局のところ、犯人は分からずじまいだった。





「……デハ、アナタタチガゲンインデハナイ、ト?」


「だからそう言ってるじゃない。

ボクらだって被害者だよ、今回は。

君等こそ何か知らないかい?

今は少しでも情報が欲しいんだ」


「むぅ、某たちにも訳が分からんのだ。

突然何かの足音が聞こえたかと思えば嵐の群れがやってくる」


「エル・フィオーレドノタチガゲンインデナイナライッタイナニモノナノカ……」


「先ぶれに足音が聞こえる、という事。

姿が確認できない、という事。

遅れて嵐がやってくる、という事。

分かってるのはこの3つくらいか」


 今回の件は当然ながらご近所さんも被害にあった。


 お隣に住む悪神ゲジュルベリア(超貧乏神)さんや邪神キルギリオス(戦禍を呼ぶもの)さんが、僕等が原因ではないかと尋ねてきたが、原因を知りたいのは僕等も同じこと。


 お互い知る限りの情報交換をしたのだが成果は芳しくなかった。


「姿が確認できないってのがそもそも問題だね」


「透明化の術式を展開しているとか?」


「アリエマスナァ」


「姿が確認できれば足止めのしようもあるんだけどね~」


「いっそ罠でも張る?」


「「「……罠?」」」


 かぁさまを含め、悪神さんたちの目がギラリと輝く。


 それは、面白い事に喰らいつく暇人の目。


「ナイスアイディアだよフラヴィ!

流石ボクの自慢の息子だねっ!」


「ナラ、ダレノワナガアヤツヲトラエルカショウブデスナ」


「フフフ、某が仕掛ける罠ならば確実であろう」


「いやいや、うちのフラヴィの悪辣さは邪神顔負けだよっ!」


「うぉい」


(こりゃ、絶対ろくなことにならないなぁ……)


 そんな確信をしてしまう程に、皆ノリノリになっていた。


 今日あれだけ現れたのだから、明日も来るに違いない……


 そんな楽観的観測を元に、それぞれの『神』が自分の担当範囲を決め、罠を張る。


 内容は捕獲した際に発表という事になり、話し合いは解散となった。


「……かぁさま?

何で協力して罠を張るって話にならないんだよ」


「それじゃあつまらないじゃない」


 何を馬鹿な事言ってんの?という顔でこちらを見返すかぁさまに


(あぁ……そうだったなぁ、これが『神』ってもんだった)


 今さらのようにそんな現実を見せつけられ、がっくりと項垂れる僕だった。





               ■


 次の日。


 だだだだだだだだだ………!


「ほんとに来たよっ!!」


「ちっ!

この音、キルギリオスの担当区域じゃないっ!

なんでこっちに来ないのさぁっ!」


「そんな事はどうでもいいからとりあえず障壁張るよっ!?」


 結果がどうなるかよりもとりあえずは襲い来るだろう竜巻の群れをしのぐのが先だ。


 そう考えて障壁を張れば案の定嵐はやってくる。


 暴風をやり過ごし、キルギリオスさんの報告を待つことしばし。


 現れたのはゲジュルベリアさんだけで。


「あれ?

キルギリオスさんは?」


「……ジメンノシミニナットリマシタ」


「……は?

地面の染みにって……大丈夫なんですか!?」


「イマ、サイセイシトリマスナ。

ナニガオキタカワカラン、トイットリマシタ」


「そんなぁ……」


 キルギリオスさんは空間断層を刃のように設置、通るものを切断するという非常に質の悪いわなを仕掛けていたという。


 その罠が真っ直ぐ突き破られた挙句、気付いた時には地面に叩きつけられていたんだとか。


 ゲジュルベリアさんが片言で語る説明を聞く限りではそういう話であった。


「サスガニアンナモノヲミテ、ツカマエヨウトハオモエナクナッタヨ。

ワルイガワシハ、オリサセテモラウ」


「分かった、君も気を付けて」


「ブウンヲイノル」


 とぼとぼと帰っていくゲジュルベリアさんを見送りながら、僕は『謎の嵐を呼ぶ存在』をどう対策したものかと頭を悩ませる。


 結局その日も『謎の嵐を呼ぶ存在』はきっちり4回現れ、周辺を派手に吹き飛ばしていった。




「随分悩んでるね?」


「……かぁさま」


 自分が扱いうる魔法の中で『例の存在』に通用しそうなものはないか?


 ずっと考えていたけれど思い浮かばなくて。


 浮かない顔をしていたから心配させてしまったようだ。


「空間操作系の障壁をあっさり抜いてくる相手だからね。

キルギリオスさんの空間断層が効かないのは予想してたけど……。

最高クラスの魔法が効果がないって聞くとやっぱり困惑が先に立つよ。

僕なんかの魔法でどうにか捕縛できるのかな、って」


「不安になるのは当然だよ」


「そう?」


「うん」


 あっけらかんとかぁさまは言う。


「なんでもそうだけど基本はトライ&エラーでしょ?

どれだけきっちり準備してても穴はどこかにあるもんだし。

試してみて、失敗して、次に活かすことが大事なんであって、失敗を怖がってたら身動きが取れなくなっちゃうよ?」


「それはそうだけど……」


 そう、かぁさまの言う通りだ。


 失敗を恐れてはいつか身動きが取れなくなってしまう。


 そんな事は……分かっているんだ。


「分かっていても身が竦むのは、ボクとミュラりんがいるから、でしょ?」


「……」


「フラヴィは偉いねぇ。

その事を口に出さなかったのは、ボクらの存在を言い訳に使いたくなかったから、でしょう?

僕等を護るために、僕等に気を使わせたくないから。

ほんと、優しいよねぇ、そういうとこ♪」


 誰に似たんだか~♪と楽しげにかぁさまは笑う。


 そして。


「ねぇ、フラヴィ、気持ちは嬉しいよ~?

でも一言だけいいかな?


……ボクを見くびんな」


 確かな怒気を込め、かぁさま(フィオ)は啖呵を切る。


「ボクを護る?

何生意気な事言ってんのさ?

死体だろうが何だろうが、ボクは創世神で、君の母親で、君のパートナーなんだぜ?

自分の身と可愛い息子の被造物の一つや二つ護るくらいは片手間でできるんだよ?

だから、遠慮なんて要らない。

ボクらを護る事なんて考えなくていい。

速やかにボクらの平穏を脅かす輩を排除する事、それが君が出来る最高の親孝行だ。

……違うかい?」


 そう言ってニカッと笑うかぁさま。


 その笑顔だけで周囲に花が咲きそうな、そんな温かさが心地いい。


「ははっ……!

普段からそうしてくれてればウザいとか駄女神とか思わなくて済むのになっ!」


「そこはフィオちゃんに惚れたっ!とか言うところでしょ!」


「生首幼女が何言ってんだよ、通報されるぞ?」


 そんな軽口からもたくさんの勇気をもらう。


(どんな奴かは知らないけど、僕にだって譲れない場所があるんだ。

護り抜く。

そして、貴様を止めて見せるっ!)



 決意を新たに僕は捕縛の為の罠の構築に全力を注ぎこむのだった。





フィオ「流れから言ってミュラりん育成回だと思ってたんだけど、また唐突に妙な展開になったねぇ?」

フラヴィ「確かにね。

いきなりよく分からない何かが現れて、被害まで出てるわけだから放置もできないしね」

フィオ「君との平穏な日々が続いてたから、ここがこういう危険な場所だってすっかり忘れてたよ。

さて、次回予告だねっ!

試行錯誤の末にとうとう敵を捕捉したフラヴィ!

皆の眼前に姿を現した異形の圧倒的な力の前に、フラヴィは一つの決断を迫られるっ!

次回 かみぐらしっ! 第18話 『拳が語るもの』

奈落の底に浪漫の嵐!」

フラヴィ「サ〇ラ大戦かっ!」

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