第14話 いいから黙って創らせろ
悩みが一旦深みにはまるとなかなか解決の糸口が見つからないものですよね。
何故か9話の投稿時間が9時になっていた謎。
12時設定にしたはずなんだけどなぁ??
前回『生命創造』に挑戦しようという話をしてから早1週間。
一向に何を創るかという意見がまとまらない。
かぁさまときたら自分で『生命創造なんて難しく考えなくてもペットキャラでも作ろうと思えばいい』なんて言っておきながら、ものの数秒で『ペットを創ると自分が構ってもらえなくなるからダメ』とか言い出す始末だし。
「自分から先に答えを提示しておけば『ダメ』って言いやすいじゃないっ!」
「それって僕が自分で気づいていったことだったなら反対できないからって先に選択肢をふさごうとしてただけだよねぇ!?」
「そうともいうかなっ!」
こういうところが非常にウザいかぁさまである。
見た目が愛らしいのが尚更苛つく要因だよなぁ。
「あんまりウザい事ばっかり言ってると『ウザキャラ死ねばいいのに』とか『あんなのがヒロイン枠なんですか?』とかファンレターにカミソリ仕込まれたりとかするかもしれないよ?」
「フラヴィったらまた冗談ばっかり言って~♪
こんなに可愛くて母性に満ち溢れたフィオちゃんを嫌う酷い奴なんて居るわけ無いじゃないか!」
この面の皮の厚さがちょっとうらやましい。
クソ神がかぁさまを殺したのは権力欲というより案外このウザさに耐えかねての事だったのかもしれないな。
あんな輩に同情する気は全くないが。
■
「で、いい加減僕としては『創造』の魔力の練習をしたいわけなんだ」
「うん、ペットにならないモノなら構わないよ!
いっそ植物とかどう?
『奈落』の底でも元気に繁殖する植物とか、フラヴィの感性には合ってるんじゃない?」
「実に魅力的な提案に見えてかぁさまは分かってない」
「なにが?」
「植物ってのは、実はかなり恐ろしい生命体だぞ?」
『植物の創造』、実はこれ、僕も真っ先に考えたネタである。
この殺風景な奈落の底に、かぁさまが喜びそうな花畑でも作ったらどうかな、と。
で、その為に必要な要素を一応頭の中で挙げていったのだが。
・奈落の過酷な環境でも生育する
・太陽光による光合成をおこなわない
・基本的に一代限りで種は残さない
・分裂しない
・突然変異する様な不安定さを持たない
・見た目は綺麗
・毒性を持たない
・水分を必要としない
・生物を捕食しない
・生育が早い
少なくともこのくらいの性質は持たせないと『奈落』の底では育たないだろう、そう考えた。
そこまでは発想として間違っていないはずだったんだが、ふと気付く。
こんなもの作ったら大変なことになる、と。
考えても見て欲しい。
僕等『神』は世界そのものであるからこそ『食料』などの栄養を必要としない。
では、この『植物』は?
『神』ならざる生き物であるならば栄養は必要だ。
だが、水も光合成も捕食も行わずに、何を栄養として成長すればいいのか?
答えは簡単、『魔力』、すなわち『世界そのもの』、翻して僕等『神』を喰らうという事。
そうなれば真っ先に喰われるのは……当然ここで死体になっているかぁさまに決まっている。
そんなもの創れるわけがないよね?
もちろんそう言った危険な要素の排除も考えた。
……無理だった。
もうちょっと詳しく説明をするならば。
そもそも『植物』とは何かと問われれば、古くはアリストテレスが意図したような『動かない生物が植物』という意味合いでの認識が強いだろう。
多くの人がイメージする『植物』の分類も、広く光合成をする生物一般、すなわち光合成生物全般を指すのではあるまいか?
その解釈は実際正しい。
広辞苑などでその言葉の意味を調べれば『動物と対立する一群の生物。からだをつくる細胞は細胞壁をもち、流動性に欠け、多くは光合成によって自力でエネルギーを生産する。維管束植物(種子植物・シダ植物)・コケ植物・藻類などのほか、菌類・細菌類、原生生物の一部を含める。生物分類学上は植物界のこと』との説明が挙がることからも明白だ。
ゴーレムなどの魔法生物と違い、『植物』は自力で生命維持をするためのエネルギー生産をする『生き物』であるとしっかり定義されているのだ。
これを踏まえて考えるならば、素直に魔力を喰って生きる(神のような存在からは奪わない)特性を組めばいいじゃんと思われるかもしれない。
でもね?魔力だって資源なんですよ。
転換率のいいエネルギーと言ってもそれは『使用すれば魔力へと還元されるサイクルがあって』のことであって、存在維持のために魔力を喰らう植物なんて創ったら、他の『魔力を元に生きている生物』の命を脅かしかねない。
僕等が『奈落』で生きていられるのはある意味で『魔力』があるからともいえるわけで、その貴重なリソース源をわざわざ消費する生き物を創る理由なんてどう考えても有り得ない。
かといって普通の生き物を創るとなると世話の問題もあってかぁさまがごねる。
加えてあげるなら、いくら危険な進化要素を抑制したところで『生命』として生み出す以上『突然変異』が誕生する可能性はゼロじゃない。
どちらかと言えば有り得ない筈のその可能性が一番高い。
なんせここは『奈落』
他の世界の『理』を持ち込まれた世界のゴミ捨て場なのだから。
有り得ない、という事が得てして起こり得るのが『現実』の厳しいところである。
「あ、あれぇ~?
植物ってそこまで恐ろし気な生物じゃないよね?
フラヴィの話を聞いてるとすごく怖い何かに聞こえるんだけど」
「怖いんだよ。
植物って比較的生体構成がシンプルだから変異も起きやすいんだけどさ?
どんな謎変異を起こすか、悪いけど僕には予想がつかないよ。
それと『奈落』の緑地とかするのは別に構わないけど、かぁさまが自分の身体を草木にまで提供してあげたいって考えるほど慈悲深い女神様だなんて考えても見なかったよ、流石は創世神だね、自己犠牲のレベルが僕なんかじゃ及びもつかないよあっはっは」
「い、いやだなぁ~、流石のボクでもそこまではしないよ!?
というか何でボクの身体が苗床になる前提なのさっ!?」
「え、そんなのこの辺に植える→繁殖する→かぁさまの身体が栄養にされる→謎進化。
ほら、分かりやすい顛末じゃない」
「そんなのイヤアアアアアアアア!」
どこに植えようと緑化が進んだらそういうオチになるに決まってるでしょうに、ねぇ?
この後もああだこうだと色々話を詰めたわけだけど。
「う~~ん、う~ん、いっそのこと創るのをあきらめた方がいいのか?
でもなぁ、創造の力を活かせる方法って絶対なにかしらあると思うんだよなぁ」
なかなか出ない最適解に延々と頭を悩ませる。
「生命なんてものは軽々しく創るものじゃないからねぇ。
沢山悩んで、納得がいく答えを見つけるんだよ?
……って、痛い痛い!
なんでぐりぐりするのさぁっ!?」
悩ませている根源が気楽にそんな事を言うのでこめかみをぐりぐりしてやった。
さらに数日。
「う~ん」
「なかなかいいアイディアはでない?」
「いや、あるにはあるの」
「あれ、そうなんだ?」
「うん」
かぁさま的には自分を脅かすような愛玩キャラを創られたくないわけで、僕としてはこれぞ『生命』と呼べる何かを創りたいわけだ。
そして『生命』として生み出す以上、この『奈落』という過酷な環境でも生きていけて、かつ相応の成長なり進化なりをしていける存在であって欲しいという希望もある。
加えて、ボッチなのは嫌だろうから単体で完結した生命ではなく出来れば複数個体で社会性を持つ生き物にしたいかな、とも思う。
これらの条件を踏まえ悩み続けた結果、僕はとある一つの結論に達する。
「ケイ素生命体を作ってみようかなって思う」
「ケイ素生命体……?
なんだいそれは??」
「端的に言えばシリコンって物質でできた生命なんだけど……」
・地球上の生命は炭素を中心として構成されているが、これは炭素の持つ原子価が四つであり、多様な結合が可能であるからである。
・SF世界においては、炭素と同族で原子価が四つであり、『生命のようなもの』が出来うるのではないかという観点から、ケイ素が注目された。
・実際、地球上のケイ素のほとんどは二酸化ケイ素の形で、鉱物質だが、人工的にはシリコンゴムのような有機物的な高分子も作られている。
・ケイ素生物に対し、地球上の生物のような炭素を中心に構成された生物を「炭素生物」と呼ぶ。
(以上、WIKIぺでぃあ先生からの抜粋)
「噛み砕くとその辺の石を生き物にしてみたらどうだろうって話」
「ま、また随分と妙な事を考えるねぇ?」
「別に僕がオリジナルで考えたわけじゃないから。
サイエンスフィクションではよく出てくる幻想生物だよ」
「話を聞く限りゴーレムなんかとどこが違うのかなって思わなくもないけど」
「ゴーレムは無機物に疑似的に生態ベースの行動をプログラムするいわゆる魔法的なロボットでしょう?
ケイ素生命体はケイ素構造の『生命体』だから鉱物みたいに見えても思考もすれば生命活動もするんだよ。
問題があるとすれば、僕ら『炭素生命体』に分類される『生命体』と意思の疎通、共存が可能なのかって事なんだけども」
「それって結構重要な問題じゃない!?」
「やっぱりそう思う?」
「だってその辺の石と同じなんでしょ?
石の考える事なんて分かると思う?」
「それを言ったら草木の気持ちが分かるのかって話になるんじゃない?」
「うっ……!」
意思の疎通が出来なければ隣人とだって分かり合えないというのは別に異種族に限った話じゃないから重要な問題ではあっても致命的な問題ではないと思う。
それに、『生命体』として意志を持たせるのであれば群体を形成した際に必ず共通言語を求めることになるわけで。
『生命』としてデザインする際にその辺も織り込んでおけばいいかなぁ、と思わなくもない。
「……とまぁ、これこれこんな感じで織り込んでみたらどうだろう?」
「なるほど~、んじゃこの辺の問題はどうするの?」
「ここはこんな感じで……」
こういうのは一旦方向性が決まると後はとんとん拍子で話が進んでいくものだ。
気が付けば僕とかぁさまは夢中になって『ケイ素生命体』の構想を詰めていた。
初めて僕が生み出す生命。
まさか、最終的に『あんな』生き物になるとはこの時点では予想すらしていなかった……。
フィオ「うわぁっ!こういう引きは狡いと思いまーす!」
フラヴィ「キリのいいところで話を切るとこうなるんだから仕方がないだろう?
それにせっかく読んでくれるんだ、どんな変なものを創るんだろう?とかどうせこういうオチだろうとか、読み手の方にもイメージしてもらう余地が必要だろう?」
フィオ「実はまだネタが決まってない、とかじゃなくて?」
フラヴィ「『決まってるよっ!』って作者が怒ってるぞ?
そういうメタな発言してかぁさまの出番減らされても知らないからな?」
フィオ「それは嫌っ!
じゃあさっさと次回予告だよ!
次回かみぐらしっ!『第15話 誕生!不死身の鉄壁』
……うーん、不安しかないタイトルだね……?」




