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第一話 「初めての生配信と放送事故」

今日、日刊ランキング見たら1位で目玉が飛び出そうになりました。




「えっと、こんな感じで大丈夫かな」




あの出来事から数日後、とある昼下がりの中、冷房の効いた室内にて、私は自分に言い聞かせるように独り言をボソリと呟く。


そして、そんな独り言を呟くと同時に空いた右手でマウスを巧みに使い、動画を放送できる一つ前のページを開く。こうもスムーズにパソコンを使えるのも上司のおかげだな、と心の中で思いながら、私は自身の緊張を抑え込もうと大きな深呼吸を一度行う。


そして私は、そんな情けない自身の精神に呆れながら、ぼんやりと目の前のパソコンに写る『ニカニカ動画』と書かれた文字をなんとなくじーっと見つめてみる。


ニカニカ動画――それは、日本の動画投稿サイトの中で一番利用者の多い圧倒的なシェアを持つ大型投稿サイトである。それ故に、このサイトでは数万人近く配信者たちがしのぎを削っている。そのため、このサイト内で人気になるためにはどれだけ他の配信者が持っていないオリジナルの武器を使いこなすかということが大きな鍵となっている。


そこで、私は数日間自身の魅力を一番引き立たせることのできる方法を考えた結果、生放送を主に利用するいわゆるライバーと呼ばれる配信方法を取ることにした。


もちろん、動画をコツコツ投稿していこうと考えてないというわけでもないのだが、やはり初心者が動画編集をするのはとても大変な上に、あまり質の良くない動画になってしまう可能性があったので、今の段階では毎日投稿をするのを断念した。




「マイクよし! 録画ソフトも良し! BGMも準備完了!」




そんなことを考えている内に、着々と時間が過ぎていくのを感じた私は急いで準備を終わらせて、配信を行う用意を整える。




「よし、これでバッチリなはず! あとは放送ボタンを押すだけっと……」



そう確認するように呟くと、私はゆっくりとマウスカーソルをボタンへ合わせていき、まるで未知の大地に踏み込むかのようにゆっくりと、そして慎重にボタンをカチャリとマウスをワンクリックする。


そして、私は無意識に口元に純粋そうな笑みを浮かべながら、配信者(ヒカリ)としての一歩を踏み出すのであった。



「はい、というわけで皆さん初めまして! 今日から生放送を主に活動します、ヒカリと申します! これからどうぞよろしくお願いします!」




私は初投稿ということもあるので、当たり障りのない無難なセリフをハキハキと呟きながら視聴者数の書かれた画面に目を写すと、そこには15という初めての配信にしては奇跡と言わざるを得ない数がはっきりと記入されていた。




「え!? なんで視聴者数こんなにいるの!」




そして、その驚きはどうやら声にも出ていたらしく、私は急いで口を手で塞ぐ。しかし、それも遅かったようで、画面上にはたくさんのコメントがスーっと写しだされる。




『初見です』『アホっぽそうな声ですね』『いきなりどうしたしW』『情緒不安定で草』『照れてるの可愛い』



「ちょっと、そんなこと言わないで下さいよ! 私も一応乙女の端くれなんですからね」



まぁ、数日前までは男だったんだけどなぁ、と心の中では思いつつも、コメントに対して文句を溢すと、再び画面上がコメントによって埋め尽くされる。



『はいはい、可愛い可愛い(棒)』『なんか、声優に成りきれなかった人の声みたいで草』『乙女?』『やっぱり情緒不安定でW』




「……ゴホンッ! まぁ、今回はこれで許してあげましょう。はい、というわけで茶番は置いといて、早速本題に入りましょう!今回、初配信ということもあるので、皆さんと仲良くなれるゲームを用意しました!その名も――私の好きなこと当てるクイズ!いぇい!』




『???』『どうしたし笑』『本性表したね』『これがニカニカ動画の闇なんだよなぁ』『わしの寛大な心でチャンネル登録したわ』




「えっと、多分理解してる人はあんまりいないと思うので、ルールを説明します! ルールは簡単で、私が例えば『好きな食べ物は何ですか』と聞いたら視聴者の皆さんは今から画面に表示される四択から私の好きなものを予想して答えるというものです!」




『なるへそ』『クソゲーで草』『発想もアホで草』『つまりこれはヒカリちゃんのプライベートを解き明かす鍵に……』




私はそんな、流れてくるコメントを横目に見つめながら、話を続ける。




「いや、変な妄想しないで下さいね。というわけで、早速ですが、試しに一問解いてみましょう! それでは第一問、私ことヒカリが配信者を始めたきっかけはなんでしょうか?」




私がそう呟いた瞬間、あらかじめ設定していたものを起動させ、画面上に選択肢を四つ表示させる。




「ちなみに、制限時間はあと一分もないので早めに答えを出しちゃって下さいね」




『ここはやっぱり金の為なんだよなぁ』『わしは一流のネットアイドルに一票かけるわ』『ろくな選択肢が無くて草』




「はい、というわけで時間切れです! みなさんはちゃんと答えることができたのでしょうか。では、皆さんお待ちかねの正解発表です! 正解は……一番の『お金がないから』でした。正答率も60%とかなり高いですね」




『欲望にまみれてて草』 『あっ(察し』 『ふーん……成る程ね』

『ヒカリちゃん貧乏人説』




私はそんなコメントに少し恥ずかしさを覚えながら、マイクに向かって言葉を発し続ける。



「まぁ、そんなことは置いといて、続いての問題に移っていきましょう! 続いての問題は……」




そして、そんな他愛もない雑談を繰り返して四十分、そろそろ配信を切ろうと、私は締めの挨拶を喋りだす。




「はい、というわけで私の配信はいかがだったでしょうか? 今回は雑談配信でしたが、これからはゲーム配信などもやっていきたいなと思っています! 次回の配信もぜひ来てくださいね! バイバイ!」




『チャンネル登録しました』『隠しきれないアホのオーラで草』『バイバイ!』『私あなたの声好きです』『なんかちっちゃい子供が背伸びして大人になろうとしてるみたいでてぇてぇ』





「ふぅ……」




私は配信を終えたことを確認すると、再び近くに置いてあったベッドにダイブする。そして、いつもと同じように輝く白熱電球を見ながら思うのであった。



「配信者って、思ったよりなんか楽しいなぁ」



そんなことを呟いた私は、お昼後に訪れる強烈な眠気に耐えきれず、胸にスマホを抱えながら眠りに就くのであった。



……実はパソコンの画面がバグっており、まだ生配信が続いているのを彼女が知るのは少し先の出来事である。



※数時間後

のちに、ヒカリちゃんが焦って急いで配信を消したのは言うまでもない。




これからも駄作ですが、楽しく読んで頂けると嬉しいです。

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