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エルフ公爵は呪われ令嬢をイヤイヤ娶る  作者: 江本マシメサ


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続全裸エルフとポメラニアン

 ハイドランジアとヴィオレットは、ポメラニアンの力によって戻ってくる。


 精神世界に入る前は、魔法陣の上に寝転がっていた。しかし今は、転移魔法で戻ってきた時のような状態でいる。姿も、精神世界の中と同じ状態でいた。

 ヴィオレットは猫の姿で、ハイドランジアは腰にブラウスを巻いただけの姿だ。

 ハイドランジアは左手にヴィオレットを、右手に水晶杖を、そして脇には竜の卵を抱えていた。


 魔法陣の上に下り立つと、寝転がっていたスノウワイトが顔を上げる。

 ヴィオレットを見て、顔をすり寄せてきた。


『ス、スノウワイト、そんなに大きな体ですり寄ってきて……こ、困りますわ。毛の中で、溺れそう……!』


 ヴィオレットにすり寄るスノウワイトだが、彼女を抱えるハイドランジアにももふもふの恩恵があった。

 白い毛並みは、驚くほどなめらかで触り心地は極上だ。

 ヴィオレットが苦しそうにしていたので、スノウワイトが届かない位置まで上げる。すると、ハイドランジアに一瞬恨みがましい視線を投げて下がっていく。一言、「ぐるっ!」と唸ったら、ヴィオレットに「こら!」と怒られてしょんぼりしていた。


 スノウワイトと入れ替わるように、ポメラニアンがやってきた。


『戻ったか、全裸エルフよ』

「なんだ、その呼び方は」

『間違いないだろうが』


 ポメラニアンはクッションを用意していたようで、それを前足で差し出す。

 ハイドランジアは胸に抱いていたヴィオレットを、優しく丁寧にクッションの上に下ろした。


『おい、全裸。そこに置くのは嫁ではない。脇に抱えている竜の卵だ』

『そうですわ。ハイドランジア様、わたくしを下ろすのは、床の上でかまいません』


 ふかふかのクッションの上にいる猫のヴィオレットは震えるほど可愛かったが、すぐに上から退いてしまう。

 ハイドランジアは溜息を一つ落とし、竜の卵をクッションに置いた。


『これが……竜の卵か』

「ポメラニアンよ。今、どのような状態かわかるか?」

『そうだな』


 ポメラニアンは前足の肉球で竜の卵を押し、耳を寄せる。


『ふむ。心臓の音は聞こえる。いつ生まれるかはわからんが、生きていることは確かだろう』

「そうか」


 真剣に話をしていたが、ここで思いがけない問題が発生する。


『おい、ハイドランジア!!』

「ハイドランジア様!!」


 ポメラニアンとヴィオレットは、ハイドランジアの背後を見て瞠目していた。

 何かと思い、ハイドランジアは振り返る。

 そこにいたのは──大きな白い猫、スノウワイト。


 何を思ったのか、スノウワイトはハイドランジアの腰に巻き付けてあるブラウスに噛みつき、引っ張ろうとしていた。


「なっ!?」


 スノウワイトは恨み言を言うように、「うううう!」と低い声で唸る。


『お前が、嫁の匂いがする服を身につけているのが、面白くないのだろう』

『スノウワイト、ハイドランジア様のブラウスを引くのはお止めなさい!』


 スノウワイトは興奮状態で、ヴィオレットの声も届いていない。

 ハイドランジアもブラウスを取られまいと握っていたが、幻獣の力に人が勝てるわけがなかった。


 スノウワイトがブラウスを強く引いたのと同時に、ハイドランジアは対策に出る。

 高速詠唱を行い、転移魔法を展開させた。

 ブラウスを取られた瞬間、ハイドランジアの体は転移する。


「危なかった……!」


 ハイドランジアは全裸で、私室に降り立った。

 世話妖精が、命じる前に服を持ってきてくれる。


 シャツに腕を通しながら、ふと思う。

 なぜ、竜の精神世界で猫になってしまったのか。


(──それは嫁が、幼少期に出会った猫がお主であってほしいと願っていたからだ)

(願望が、魔法となって私を変化させたのか?)

(まあ、そうだな)

「なるほど──って、ポメラニアン!!」


 直接脳内に話しかけてくる声に、ハイドランジアは反応する。

 振り返ると、ポメラニアンがいた。


「お前は……!」

『いいから服を着ろ。見苦しいぞ』

「お前なんぞ、年がら年中全裸ではないか」

『毛皮という美しくとも繊細で、完成されたこれ以上なき服を着ているではないか』

「ああ言えばこう言う!」

『お主もな』


 さらに言い返そうとしたら、くしゃみが出てしまった。早く、服を着なければ。

 世話妖精の力を借り、身支度を整えた。


『それにしても、お主ら、上手くやりおったな』

「まあな」


 ヴィオレットの誠実さと、血の契約が効いたのだろう。


『それから、お主の愛の告白もよかったぞ』


 ポメラニアンに言われて、ハイドランジアは思い出す。

 そういえば、そんなことも言っていた。

 今振り返ると、とんでもなく恥ずかしいことだ。なぜ、あの場では臆面もなく言えたのか。じわじわと、顔が熱くなっていくのを感じた。


『これから、どうするのだ?』

「トリトマ・セシリアを始めとする、古代の転生者に好き勝手はさせない」


 スノウワイトも成獣になり、戦力に数えてもいいだろう。

 ヴィオレット自身も、実戦で戦えるような度胸と立ち回りを確認できた。

 あとは、竜と分離したことによって、どう変化しているのか。


『戻ってきた嫁は、猫化していたが──』

「そうだな。竜と分離しても、大きく変化しているようには見えなかった」


 確認する必要がある。ハイドランジアは執事を呼び、ヴィオレットを部屋に連れてくるよう命じた。


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