水平線とゾウとカメ
「わあ、きれいな水平線……」
「ええと、南はこっちか。ほらごらん、こっちの方角が、アメリカだよ」
「ふうん、じゃあブラジルはあの辺かしら」
「いや、ブラジルはむしろ、こっちかな」
「やだ、ブラジルが地面の下なわけないじゃない。いくら私が生まれて一度もパスポートを作ったことがない、日本から一歩も出たことがない人間でも、ブラジルが太陽の下の国だってことくらい知ってるわよ」
「いや、そうじゃなくて、地球は丸いから……」
「だいたいね、地面の下にはゾウとカメしかいないんだから、ブラジルだろうがアガルタだろうがペルシダーだろうが、地底王国なんてありえないのよ」
「……そうか、すまん。どうやら俺の勘違いだったようだ」