帝月龍星、母を語る
帝月龍星
・山田太郎が通う高校に転校してきた謎の男の子
球麦大地
・帝月龍星のクラスメイト、バカ
山田太郎
・主人公になれなかった男の子
その日の昼休み、球麦君は転校生の帝月君と当たり前のように昼飯を食べていた。
球麦のヤツ、なんというコミュ力だ。すっかり主人公キャラの親友というおいしいポジションをゲットしやがって・・・
球麦「おっ、みかちゃんの弁当美味しそう!これ全部手作りなのか?」
帝月「うん、妹が毎朝作ってくれてるんだ」
球麦「妹いるのかよ!いいなー!」
ちゃんと妹もいるのかよコイツ!しかも毎朝お弁当を作ってくれるなんて優しすぎるな!
球麦「お母さんは弁当作らないのか?」
あっ、コイツ考えなしに危ない質問しやがったな!こういうタイプの主人公はたいてい親が死んでいるか行方不明になってるって相場が決まってるんだよ!
妹が弁当作ってる時点で察しろよ!きっと親を亡くして今まで妹と二人三脚で生きてきたんだよ!
帝月「お母さんは・・・そんなことより今日はいい天気だね」
誤魔化すの下手すぎるだろ!ていうか誤魔化すってことはやっぱり何か人には言えない事情があるんだな?
球麦「めちゃくちゃ雨降ってるけど、何を言ってるんだ?」
雨降ってんのかい!!!もっとまともな誤魔化し方をしろよ!!!
この主人公この先大丈夫なのか?世界は本当にこの帝月龍星を主人公として認めてもいいのか?
山田「・・・俺が考えても無駄か・・・所詮モブだしな・・・ちょっと外の空気でも吸いに行くか」
そう思って教室から廊下へと出た俺は、教室を覗いている謎の女子生徒を目撃した。
女子「帝月くん・・・やっと見つけた・・・」
この女の子は・・・誰だ?
帝月君の知り合い?やっと見つけたということは探していたということなのか?
過去にこの2人の間に何かあったのだろうか?
ていうか明らかに怪しい挙動をしているのにどうして誰も気付いていないんだ?
そう思っているとクラス委員長の水蜂さんがその異変に気付いたようで・・・
水蜂「木ノ宮さん、いったい何をしているのですか?」
どうやら不審な女の子の名前は木ノ宮というらしい。
しかし水蜂さん、ちゃんと声をかけるなんて偉いなぁ。
水蜂「何か用でしたら私が伝言を・・・って木ノ宮さん!?どうして逃げるのですか!?」
あっという間に木ノ宮という不審な女の子は逃げ去ってしまった。
水蜂さんはそれを不審に思いながらも教室に戻っていった。
いったい何の理由で木ノ宮さんが帝月君を見ていたのかは分からなかったが、あの様子からして過去に帝月君と何かあったことは予想できる。
つまり帝月君が主人公のこの世界においては、彼女は間違いなく主要な登場人物になるはずなのだ。
山田「なんかどんどん風呂敷が広がっていくな・・・」
続々とこの物語に重要な人物が集まり始め、俺は徐々に物語の外野へと追いやられていく、そんな気持ちがしていた。
この世界がこの先どうなっていくのかは全く予想できない。
もしかしたら主人公・帝月龍星が偶然黒いノートを手に入れ、リンゴが大好きな死神と契約をしてしまうかもしれない。
田舎の女子高生と中身が入れ替わり、村の危機を救ってしまうかもしれない。
そうなった場合、あの主人公にそんな大役が務まるのか?
そう思いながら俺は教室にいる主人公に目を向けた。
帝月(お母さん・・・か・・・)
あ、モノローグの時間ですね、了解でーす。
帝月(まさか1日中家でゴロゴロしてて家事をしようとしないから代わりに妹が弁当を作っているって言えるわけないよな・・・)
普通に家にいるのかよ!心配して損したわ!
ていうか帝月君のお母さーん!たまには弁当作ってあげてー!
今回の新キャラ
帝月龍星の妹
・毎朝お弁当を作ってくれるらしい
木ノ宮
・帝月龍星のことを知っている様子の女の子
帝月龍星の母
・家事はあまりしない