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アゾット

自宅に帰っていつものように食事を作りつつニュースをかけていると、また高校生殺人のニュース。

今度の被害者は秋本翔太。

ゴッドセイバー以外は本名を知らないので、インしてから参加者の数を数えるしかない。


8時を待ってインすると、ユートからパーティーに誘われる。

アオイもタッチの差で先にきてて、しばらく待っているとフロウもインしてきた。


外に出るとモンスターに絡まれたりもするので、大抵のプレイヤーは街中でログアウトする。


その中でも街の中心で、商店街にも外へ出るのも近く復活ポイントもある噴水前でログイン、ログアウトする人間がほとんどだ。

ここで待っていれば大抵の人間がログインしてくるのが確認できるだろう。


ということで、経験値稼ぎに行こうという仲間達に

『あ~…ちょっと今日は待ってくれ』

と、声をかけた。

『コウ…?どした?』

と聞いてくるユートに

『いや…悪いな、リアル事情で30分ほどキャラ放置するから。なんなら3人で先行っててくれ。』

と、答えると、

『じゃ、ここでおしゃべりでもしてお待ちしてますねっ。みんな一緒の方が楽しいですし♪(^-^』

とフロウがいつものぽわわ~んとした口調で言って噴水の端に腰を下ろした。


勘の良いユートから即

(リアル事情…じゃないよな?)

とウィスが入ったので、秋本翔太が参加者なのか確認したい事、それをアオイやフロウに言って動揺させたくない事などを伝えて納得してもらう。

そこで続々と他の参加者もインしてくる。


結局30分後、最初の殺人が起こってメグがメルアド交換を申し出たタイミングで、危険だからゲームを放棄すると宣言したショウとメルアド交換をスルーしたヨイチ以外の参加者全員ログインしてくるのを確認できたので、離席から戻ったふりをして狩りに出かける事にした。


秋本翔太…ショウという事はないだろうか…そうだとすると一番の容疑者は…

色々と考えつつ進んでると、ふいにメッセが届く。

アゾットからだ。


『こんばんは。参加者のアゾットです。

なんとなく気にしていらっしゃる方もいるとは思いますが、今日の昼過ぎに秋本翔太君という高校生が殺害されたというニュースが放映されました。

参加者の一人、イヴさんによると、殺された秋本君は元このゲームの参加者のショウさんらしいです。

親しかった相手が二人とも殺害された事でイヴさんも非常にショックを受けていますし、犯人の男の次のターゲットが自分なのではと、とても怯えてもいます。

もちろん僕を含めて全ての参加者がそのターゲットになりうるわけですから誰しもが他人事ではありません。

そこで下手に相手の事を知らないまま不安を抱えるよりは、一度全員街の広場に集まってどういう参加者がいるか顔合わせをしませんか?

現在僕はイヴさんと共に街の広場の噴水前にいます。

来られる皆さんはぜひ、噴水前までお願いします』


意外だった。

秋本翔太=ショウという事実がイヴの口からでるとは思っても見なかった。

他が知らないであろうショウの個人情報を知っていたと断言するような事を言えば、当然疑いはイヴに向く。

そのくらいはいくら考え無しだったとしてもわかるだろう。

とりあえず…アゾットの人柄も気になっていた事ではあるので、街に戻る事にする。



コウ達が街に戻った時にはすでに他に4人の参加者が噴水周りに集まっていた。

イヴと…隣にいるのは男のプリースト、アゾットだ。

黒いロングコートはウィザード、エドガー。

もう一人はシャルル。アーチャー。


メルアド交換を唯一スルーしたヨイチが来てないのはまあわからなくはないのだが、あれほど他との接触を求めてメルアド交換を提唱したメグが来ていないのが気になる。


「やあっ!君達いつも一緒にいるよね。

仲いいの?」


コウが考え込んでるといきなりシャルルが近づいてきた。

そしていきなり後ろにピタっとはりつく。

なんとなく気味悪くて距離を取ると、またピタっと寄り添ってきた。


な…なんなんだ??

なよっとした感じはあるが男キャラだ。

それが自分が見ても多分誰がみても可愛らしい少女キャラのフロウとかをスルーして自分に張り付いてくる意味がわからない。

背筋に寒いものを感じてまた距離を取るとまた距離をつめてくる。


その様子に、アオイが呆れたように

「コウ、いい加減にしなよ、大人げない」

というので、

「ほっとけ」

と返したのだが、そこで何故かシャルルがいきなりアオイに

「そうだよ、君には関係ないでしょ?馴れ馴れしいな」

と矛先を向けた。


自分の仲間にいきなり向けられた悪意的な言葉にコウはカッとした。


「ふざけるなっ!

馴れ馴れしいのはお前だっ!

気味悪いっ!!」

こいつらは俺の仲間だから馴れ馴れしかろうがいいんだっ!

それを見ず知らずのお前にグダグダ言われる筋合いはないっ!!」

思わず叫ぶ。


コウは基本的にぶっきらぼうではあるが、本来別に敵を作りたいわけでもない。

仲間が出来てからは自分に向けられる敵意が自分の所属する団体、一緒にいる仲間に向けられる可能性も出て来るので、なるべく言葉には気をつけているつもりだったが…ついついキレてしまった。


自分が原因で自分の仲間に不快な思いをさせるのがあまりに嫌だった。


やってしまったという気持ちと、言ってやったという気持ちが複雑に混じり合う中、一瞬の沈黙ののち、シャルルはいきなり

「コウってさ、すごぃ男らしいよなっ!

そういう奴って僕超好きだよ!」

と、なんだか嬉しそうにまたピタっと距離をつめた。


ええっっ?!


「リアルもさ、そんな感じ?

服とかどんなの好き?

リアルでも背そこそこ高い?

体格は?

コウって鍛えてはいそうだよねっ。

制服は学ラン?ブレザー?

コウのイメージだと学ランって感じだけど、ブレザー着崩したりとかもなんかいいねっ。

シャツのボタンはずしちゃったりとかしてさ…

寝る時ってさ、パジャマ?Tシャツ?

それとも着ないで寝ちゃったりとか?

あ、でも意外なとこで着物とかも似合うかもっ。

あ~、そだ、トランクス派?ブリーフ派?………」


なんなんだ?こいつはっ!!!

何を言ってるんだ?!!

わけわからんっ!!!

もう宇宙人の会話だっ!

何故そんな事をきいてくるんだ?!!!


リアルを特定しようとしてる…にしてはなんだかずれてる気がするし…からかわれてる??!!

思わず逃げに走った。

それでも追いかけてくる。


逃げてる間にもアゾットにはチラリと注意を向けてチェックをいれる。

いかにも優男といった感じで、泣きの入っているイヴを慰めてる様子は、特別へそ曲がりとかにも見えず、むしろ癒し系を演じている。

もう一人気になるのはイヴ。

仲間が二人殺されればまあくじけるというのはあるかもだが、女王様然としていた今までとは一転しおらしいか弱い風なキャラクタに変わっているのが不自然な気がした。


エドガーというウィザードは探偵もどきっぽい風で、殺された二人と親しくショウのリアルを唯一知っていたであろうイヴが怪しいという様な事を言って詰め寄っていて、それに対してアゾットが本当に犯人なら自分が真っ先に疑われる様な殺し方はしないはずと言い返している。


メルアド交換すらしてないショウのリアルを知る機会があったのもゲームをやめたはずのショウと連絡を取れたのもイヴだけだとさらに詰め寄るエドガーに、イヴはショウはメルアドは送っていてやめるとも言ってなく、メグに確認を取っている最中だったと、また気になる話を始めた。

しかし、それを確認しようにもメグは今ログアウトしているらしい。

アゾットがウィスを送っても届かないと言っている。


確実な事はメグがいないとわからない…。

だが…斜に構えているというわけでもなく、いかにも癒し系という感じに見せている時点でアゾットは怪しい…とコウは思った。

水晶という透明な宝石の中に封じられた悪魔。

…たぶん…表面上のピュアさの中に潜む悪を表現したつもりなのだろう。

アゾットの意味なんて普通に知ってるレベルの知識ではない。

表だって野心や邪悪さだしたらまずいという理性と知性、その一方で誰にもわからないところでは悪に興じる自分を主張したいという強い自己顕示欲の持ち主……。


そして…そのアゾットと一緒にいる人格の変わったかのようなイヴ…。

今までのイヴと同一人物ではなくなっているという可能性はないだろうか…。


イヴ自身がすでに情報を引き出された上で殺されて、別の人間が成り代わっていると言う可能性も否定はできない気がする。

そして…成り代わっている人間はアゾットの関係者…。


一億を取れる可能性を考えれば、身代わりをやる人間がいても不思議ではない。

操ってる本人は、最終的に参加者の身元が割れている以上、イヴキャラで魔王を倒しても自分に一億が入る事はないわけだし、アゾットに協力して一億の中から分け前をもらうしかない。


そう考えれば…最終的にアゾットが一億を取って、イヴキャラを捨てる事になるため、イヴキャラがいくら疑われるような状況になろうと痛くもかゆくもないし、今の状況も全てつじつまがあうのではないだろうか。


とにかく…はっきりするまではとにかく仲間をアゾットとイヴには近づけない様にしなくては…。

コウはとりあえずそう結論づけた。





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