第4話──ティル。コワイ子
村に入った俺はティルに素直に感謝の言葉を伝えた。
「改めてここまで連れてきてくれてありがとう。ティルがいなかったら俺はここに来ることが出来なかった。感謝してる。借りはここにいる間に返すよ。困った事があったら言ってくれ。」
「感謝されるとなんか照れるな…えへへ…どーいたしまして!あ、借りとか別に作ったつもりないから大丈夫だよ!」
(さて、言うことは言ったしそろそろ行くか)
「いや、俺は自分が借りだと感じたものは必ず返す主義だからな。返すものは返す。じゃあ俺はもう行くから」
そう言って歩き出す滄多を「え!?ちょっと!?」と、ティルは慌てて呼び止める。が、面倒くさそうなので俺は構わず歩き続ける。
「ちょっとまって!?一緒に行動しないの?」
「なんで一緒に行動する必要があるんだ?」
「だって一緒にいればこの世界のこと色々教えてあげられるし、戦闘でも1人より2人のほうがいいでしょ?」
確かに彼女といることで情報なども色々得ることが出来る。だがそんなものは数日あれば村から入手できるものばかりだろう。
それに戦闘でも俺の異世界能力について調べるときにハッキリ言って邪魔だ。
「悪いけど1人で充分だ。それにティルは俺をここまで送っただけじゃないか。どうしてそこまで一緒に行動したがるんだ」
「……っ」
俺が何気なくそう言うと、急にティルの表情が暗くなった。
(ん?)
「おい、どうし…「借り!!!」
暗くなったと思えばこんどはいきなりティルは叫びだした。
「借りがあるでしょ?その借りを返すって意味で私と行動して!」
「はぁ!?」
何を言い出すんだコイツは。
「断る!」
「別にいいでしょ?その返し方でも」
「……さっき借りは作ってないって言ってなかったか?」
「自分が借りだと感じたものは必ず返す主義なんでしょ?」
「………それとこれとは話が別だ。」
「何が別なの?」
「だからそれは…」
「……………そんなに私と組むのがイヤなの?)ウワメヅカイ
「っっ!!…だぁぁぁぁ!もう分かったよ!!組むからやめろ!」
「やったぁ!」
ティルは滄多から許可を貰い、ガッツポーズをして喜んでいる。
(はぁ…まさか俺が言ったことを逆手に取るとはな…)
「ただし俺がこの村にいる間だけだ。そしてお前が組むのをやめたいと少しでも思ったらすぐやめてくれていい。」
「うん!分かった!じゃあソウくんよろしくね!」
「ちょっとまて。ソウくんってなんだ」
「え?親しみやすいでしょ?」
「やめろ」
この先が思いやられる。俺は本当に大丈夫なんだろうか…王国へ行く前に死んだりしないよな…?
そろそろ夕方だし考えるのは明日にしよう。俺は宿を探すことに決めた。
そして、宿を見つけたのだが…
「はい。二部屋で銅貨2枚です。」
……銅貨?
「そういえばこの世界の金を持ってなかった…」
「私と組まなかったらホントにどうやって今日過ごすつもりだったんだい…」
返す言葉もない。
結局ティルが払うことになった。
が、「私、銅貨1枚しかないから、一部屋でお願いします!」
「なっ…!!」
「分かりました。ではどうぞ。」
そうしてティルは一部屋分の鍵を受け取る。
「おい!」
「文句言わないの〜!私が払ってるんだよ?」そう言うティルはどこかごきげんだ。
「くっ…!」
改めて俺は思った。ティルはなかなか性格が悪いと。