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転生の軌跡~Regrowth for you~  作者: 進化する愚物
第三章 魔眼転生
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第六十六話 支配者の産声

実家に帰省しています。

「だいろくじゅうろくわ」が「第六十六羽」に変換されるあたり、ほんと実家です。


前回のあらすじ

ヒナが狂った。

謎の異世界人が出てきてサナを瀕死に追い込んだ。

サナも狂った。

 サナが睥睨すると、なんの変哲もない針葉樹が怯えすくんだように震え、その根を宙に浮いている、おそらくヒナが狂った元凶であろう剣に巻き付ける。


 意志を持たない植物が、サナに従っている。

 植物限定ならシルバにも同じようなことができるが、サナの場合、首のない自分の体を動かしたことといい、先ほどまで剣を握っていた少年の頭を爆散させたことといい、どうにもその対象に制限はないらしい。


 アビリティ「魔眼(支配)」。

 サナが後天的に獲得した魔眼だ。いや、覚醒したといった方が正しいかもしれない。

 細かいところまでは見られなかったが、サナの右眼に寄生した時に記憶を覗き見たとき、サナは代々魔眼を受け継ぐ家系に生まれたことを知った。

 今まで目覚めていなかった魔眼が、膨大な魔力と生命の危機に反応して発現したのだろう。


 それは良い。むしろ喜ぶべきことだ。

 問題はサナが、はっちゃけた言い方をするなら、あっぱらぱーになってしまっていることである。

 ヒナといいサナといい、揃いも揃って、なんなのだろう。恥ずかしくはないのだろうか。

 誰が正気に戻すというのか。


「イユ杜Rカz・?ク;ォュ)比藝・ュH)@ャx3コ」

『ああくそ、頭トんで覚醒とか、痛々しいんだよっ』


 それで本当に強くなってしまっているから、たちが悪い。

 根が剣を締め付ける力はだんだんと強くなっていく。

 刃で根を切られることがないように、剣の腹に重点的に圧力をかけているようだ。

 このまま折れるかと思った時である。


≪うっとうしいなあ≫


 剣が、先ほど頭を吹き飛ばした少年とは別の黒髪を生み出した。

 今度は十八歳ほどで、平たい顔つきをしている。

 先ほどの少年もそうだが、どことなく師匠を連想させた。


 解析。


 

------------------------------

ソウマ・クラモリ 20才

種族 人間


魔力 0



アビリティ

 SS


称号

 異世界人

 転移者

 繁華街の英雄(ヒーロー)

 帝国軍第二部隊副隊長


状態:被支配

------------------------------



 この青年を支配している人物はいまだ、姿を見せない。

 遠隔操作されていると思われる剣から、異世界人を排出し続けるだけだ。


 青年――クラモリは締め上げられている剣を掴むと、力任せに引き抜いた。そのまま剣を高速で振るい、根を細かくカットする。

 サナがクラモリを見据えるが、何も起こらない。


「はは、無駄無駄。あんたの魔眼、見たかんじ魔力で作用するタイプのやつっしょ? この体、「防御」が高いから、魔力に対する耐性も高いんだわ」

「Zケ姑」


 蝙蝠の羽が広げられ、大きく空を打つ。

 直後、クラモリにいくつもの風の刃が飛来した。

 クラモリが見えざる空気の刃を切り裂く。

 それは魔法によって起こされた空気の流れによって発生する、かまいたちのようなものだ。剣ごときでどうにかなる代物ではないのだが、剣に触れた瞬間、風の刃は霧散して消えてしまった。


『魔法無効か!?』

「正解♪」


 それ自体は別に目新しいものではない。転生する前にも、ほんの数回であるが戦った経験がある。

 対処法は、魔法以外で戦うか、無効化の許容量を超える魔力をぶつけるか。

 単純で、故に対処が難しい。以前は苦労させられたものだ。

 しかし、今は違う。


------------------------------

シルバ 0才

種族 ダンジョンズアイ


魔力 73328

妖気 696



アビリティ

 転生(転生数3)

 魔法

 妖術

 進化

 通知

 魔眼(吸収)

 寄生

 魔眼(傀儡)

 不眠

 魔眼(増殖)

 迷宮

 心眼



称号

 転生者

 義眼

 臆病者

 声優

 ダンジョンマスター

------------------------------


 シルバには、魔法以外の攻撃手段がある。


 シルバは魔法でテニスボール大の火球を大量に作り、その中にいくつか、妖術で作った狐火を混ぜ込んだ。変化を駆使して、両者の外見は全く同じにしてある。

 一斉に打ち出すと、それに反応したクラモリが剣を構えなおし、魔法の火を片っ端からたたき落としていく。だが、魔法無効化の剣は妖術を無効化することができず、狐火だけがガードをすり抜け、クラモリの顔面に着弾した。


「うわっ」


 衝撃で体が吹っ飛ばされ、仰向けに倒れる。


『やったか!?』


 余計なフラグを立てたせいか、クラモリはゆっくりと起き上がった。顔は少し焦げ付いており、鼻が曲がっている。


「何今の? 魔法じゃない? もしかして、あんたも異世界人? 目玉のくせに? なら、余計に悪いやつだね、あんた」


 やはり威力が低い狐火では倒しきることができない。が、効いていないわけでもないようだ。

 あとは、物量で押していけばいい。


「C駑智i%!範Jvワ鑪E{陥タョ ワウ酷」


 喉を掻き毟るサナに回復魔法をかけながら、また同じように大量の火球を作り出し、狐火を混ぜて飛ばす。

 シルバは妖術の練度が低いので、魔法で弾数を水増ししているのだ。


「残念! テレポーテ~ショォーン!」


 電源を切られたブラウン管のテレビ画面のように、ちゅんと音を立ててクラモリの姿が失せる。


「ばいば~い」

『ッ!?』


 背後からの声。

 サナが驚異的な反応速度で後方に蹴りを放つと同時に、シルバが妖術の結界を張る。

 攻と防。意思疎通の(すべ)なく行われたそれらの結果は、サナが自分を守る結界を破壊することによって表れる。

 結界を破壊した事により蹴りの威力は完全に殺され、スニーカーがクラモトの腹を弱く押す。

 振り下ろされる剣。シルバがとっさに短距離転移をすると、サナは足場の違和感に体制を崩した。


 連携ができていない。

 今までの連携が、寄生のネットワークと念話に支えられていたことを痛感する。

 クラモリが突撃をしてくる。

 今の状態では勝てない。サナを正気に戻さなければ。


「にがさんよォ~! とう!」


 クラモリが消えたと思うと、サナの胸から血が噴き出した。

 シルバがリザレクションを使って、破壊された心臓を修復する。

 サナの反撃は届かず、またアナログテレビが切れる音がして、背後から背中を刺される。

 致命傷には至らない。魔力消費の小さい回復魔法で治す。


 シルバの魔力はずいぶんと増えたが、無限ではない。

 傷を治せるのはあと十回といったところ。致命傷なら、さらにその半分になる。

 サナが暴走して連携が取れない以上、このままでは確実に殺される。


 サナを正気に戻す方法は一つだけある。寄生の経路(パス)を再びつなげ、話をすればいいのだ。

 しかし、狂気は伝染する。それをしてしまうとシルバの精神まで汚染される恐れがある。

 シルバは転生という強力な能力を得たが、転生でリセットされるのは肉体と、周りの環境のみだ。心的外傷を追ってしまった場合、元に戻るのは難しいだろう。


 だが、このままではサナが、ヒナが、殺されてしまう。

 シルバは覚悟を決めて、サナとの経路(パス)を繋ぎ直した。

 良い機会かもしれない。隠し事は、もう終わりだ。




 暗く深い闇が、そこにあった。

 上も下もわからない、ただ真っ黒な空間に、膝を抱えたサナが漂っている。

 シルバは闇を掻いて、サナの傍へと泳いで行った。


「サナ」

「……誰? あなたは」


 サナがこちらに眼も向けずに聞いてくる。

 そこで、シルバは自分が人間の姿になっていることに気づく。

 自分がまだ精神が人間であることに、いくばくかの安堵を覚えた。

 シルバは警戒させないように、慣れない笑みを浮かべる。


「シルバだよ。魔眼の」

「ようこそシルバ、死後の世界に。あなたも死んだ?」


 サナは少し勘違いをしているようだ。

 まずはそれを正さなければ。


「死んでねえよ。二人とも生きてる。でもな、いつまでもこんなとこに閉じこもってたら、今度こそ殺される」

「そう、この際本当かどうかはどうでもいい。私はとても悲しいから、一人でいたい。向こうに行って」

「そんなこと言うなよ。なんでそんなに悲しいんだ?」

「あなたには関係ない」

「あるさ。俺はお前の眼であり、相棒なんだから」


 言っていて少し恥ずかしくなってきた。

 シルバは目をそらす。


「私は一人でいたいと言った」

「居させねえよ、一人でなんか」

「うるさい。聞き分けのないひとは嫌い」

「嫌い、か。サナには嫌われたくねえな」

「だったら」

「でも、嫌われてもしょうがねえとも思ってる。俺はサナに、重大な嘘を()いてるんだよ」

「……」


 緩慢に、サナがこちらに顔を向けた。

 銀でも紅でもない、鳶色の双眸。魔眼ではない本来の目は、亜麻色の髪によく映える。

 言わなければならない。隠し事をしている相手に命を預けることは出来ないのだから。


「俺はお前の魔眼じゃない。潰れた眼に寄生した、ただのモンスターだ」


 シルバは話した。転生に関すること以外の、魔眼になってからサナに寄生するまでの経緯を。

 サナは黙って聞いていたが、最後にこう尋ねた。


「どうして私に寄生した?」

「移動手段が欲しかったからだ。あのままじゃあ、とてもダンジョンを抜けられなかった。だから、利用したんだ」

「じゃあ、どうしてダンジョンを抜けてからも一緒にいる?」

「……お前が好きになったからだ」


 ダンジョンの生活を通して、シルバの中でサナはかけがえのない仲間となっていた。

 そして同時に、娘のようにも思っていたのだ。情が湧いたと言ってもいい。

 愛しい娘のためなら、精神汚染のリスクなど、喜んで負える。


「そ、そう」


 サナがまたそっぽを向いた。

 まあ、それはそうだ。そんなに都合よく許してもらえるはずがない。

 耳がちょっと赤くなったサナが再び口を開く。


「……私も、シルバに言っていない事がある」

「なんだって?」


 少し、意外だった。

 最初に寄生したとき、サナの人生の一部が流れ込んできた。強く印象付けられたような出来事は大抵知っているが、代々魔眼を受け継いでいるだけの、普通の貴族の半生だったと思う。


「父上が昔一度だけ、母上の葬式の後で話していたのを思い出した。私は魔王の子孫。私の魔眼は、魔王の能力」

「魔王? 迷宮で戦った?」

「そのさらに後の世代。十三代目の魔王、アイズ。それが、私の曾御爺様。父上は何かと理由をつけて、絶対に私を教会に連れて行こうとしなかった。魔族を検地する魔導具に引っかかる可能性があったのだと思う」


 どうしてそんな大事な事を忘れていたんだと聞こうとして、やめた。

 幼いサナは、死んでしまった母親の事で手一杯だったのだろう。

 そして、継母が来てから、サナの父は容易に魔王の話題を出すことが出来なくなった。

 それでも話す機会はあったが、当の本人はそのことを忘れていて、家中には他にも真実を知らない貴族の娘である継母と、その従者達がいる。教会にだけは行かせないようにして、黙っていたのだろう。


「私は、人間じゃない。物語の主人公にも、ヒロインにもなれない。私に許された役割は、主人公の剣に貫かれる、邪悪な魔王だけ」

「何もせずにひっそり暮らすのも手だと思うぞ?」

「それは出来ない。私の中の魔王は既に目覚めてしまった。今も、もう一人の私が、殺せ、殺せと囁きかけてくる」


 サナは抱えた膝に顔を埋めた。

 シルバは彼女の頭を、そっと撫でた。


「いいんじゃねえか? 邪悪な魔王でも。顔も知らない人間に嫌われるかも知れねえけど、それ以上に仲間から好かれれば、それでいいだろ」

「そんな簡単に――」

「いくさ。少なくともここに一人、魔王サナに忠誠を誓った仲間がいる。役職はそうだな、魔王補佐でどうだ?」


 サナが顔を上げた。僅かに眼が見開かれていた。


「どうしてそこまでする?」

「言ったろ? お前が好きになったからだ」


 前述の理由で、ここでサナに死なれては寝覚めが悪すぎる。

 彼女には生きて欲しい。


「まあ、まずは目先の事から片付けようぜ。……協力してくれるか?」

「……うん」


 サナが頷いて、闇が晴れていく。

 意識が引き戻される感覚。


 その日、一人の魔王が生まれた。

ストックが尽きたよ!?

とりあえず明日、もう一羽仕上げます。

今月中には三章を完結させ、新しい章に入りたいです(願望)。

それではまた明日。

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