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転生の軌跡~Regrowth for you~  作者: 進化する愚物
第三章 魔眼転生
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第六十一話 ハーピーの卵(あらすじ、登場人物紹介)

 お久しぶりです。身の回りが一段落したので、またちょこちょこ書いていこうかな、と思っています。

 二、三ヶ月もあれば絶対に話の内容を忘れていると思いますので、これまでのあらすじと登場人物紹介を簡単に載せておきました。本当に淡々と羅列しただけですので、覚えている方はスルーしてください。


※作者の鳥頭を頼りに書いておりますので、事実と異なる場合がございます。


前話までのあらすじ

 魔神を討った英雄シルバは、ある理由から、自らの不滅を願った。神はその願いを聞き届け、シルバに死ぬたびに能力を引き継いで転生する能力を与え、獣人に転生させる。転生した先で、シルバは不死鳥族の少女、リエナと共に幼少期を過ごすが、人間と獣人との戦争に巻き込まれ、命を落としてしまう。

 次に転生した先は、サウス大陸の樹海にいるダンジョンモンスター、スライムだった。シルバは樹海で、駆け出しのモンスターマスターであるラインと、出自不明の精霊テラリアと出会い、ともにモンスターマスターという職業を広めるため、旅をする。が、一つ目の町で、ラインがエルフの皇太子であることが発覚。エルフ領の防衛戦争に巻き込まれ、今度は無事、エルフを守ることに成功する。そして、エルフの首都から旅立ってすぐ、勇者にシルバが魔物であることがばれてしまい、不意打ちで殺されてしまう。

 その次に、シルバはダンジョンモンスターのイビルアイに転生する。付近のモンスターを殺し、進化してパラサイト・アイとなったシルバは、血まみれで横たわる人間の少女、サナを発見した。サナは、傷を治療して修復しきれなかった右目に寄生したシルバの思惑通り次々とダンジョンを突破していき、その過程で芽生えたシルバとの絆と、連携の力でダンジョンを突破する。ダンジョンボスを倒したサナの前に現れたダンジョンマスターは、サナにダンジョンマスターになることと、魔王になることを持ち掛けてきた。魔王になることは拒み、ダンジョンマスターとなったサナとシルバは、お互いの生み出したダンジョンを併合して相乗効果を得ようとするが、シルバの操作ミスにより、ダンジョン・ポイントをほとんど消費して、ダンジョンを浮遊大陸に変えてしまったのだった。


これまでの登場人物


シルバ

・本作の主人公。

・生粋の魔法使いで、痛みにはめっぽう弱い。

・獣人になったり、スライムになったり、よくわからない目玉になったりするが、そのたびに脈絡のない理不尽な死を迎えている。

・リスクなしの転生と、能力引継ぎができるので、結構なチート。

・転生前は、膨大な魔力を持つ勇者として各地を巡っていた。出身地は不明。

・好物は甘いもの。


リエナ

・一章のヒロイン。

・不死鳥族令嬢にして、シルバの婚約者。

・小さい頃から武術を習っており、再生能力とあわせて近接戦闘を行う。

・お菓子が好物。あと傲慢。

・容姿は赤色の髪に釣り目。見た目年齢は十二歳くらいで固定。


ライン

・二章の仲間。

・サース大陸で生活していたが、エルフの王子である事が判明。

・本人に戦闘能力は皆無だが、テイムで得た従魔を使役して戦う。

・性格が英雄譚の主人公そのものである。あと、たまに天然が入る。

・容姿は金髪にイケメンフェイス。


ポチ

・ラインの従魔。神獣の子であり、神聖な力を使う。

・シルバと仲がよく、故にひどい目に合わされる。

・尊大口調。

・容姿は……犬。額に魔石がついている。


テラリア

・二章のヒロイン。

・シルバに同行し、エルフの国で過ごした。

・容姿は青い髪、手のひらサイズの妖精ボディ。

・かわいい。

・料理は下手糞。



サナ

・三章ヒロイン。

・魔眼が発現しなかった事でダンジョンに捨てられ、魔法で瀕死の重傷を負わされる。そのショックで表情が出なくなった。口数は少ない。

・魔眼以外の才能はトップレベルで、シルバの魔法を見て覚えた。

・容姿は亜麻色の髪に無表情。魔眼があるため、シルバ込みでオッドアイ。

・戦闘能力が抜群に高い。

・唯一の服である異世界の制服は、着たまま洗っている。前まではシルバが洗っていたが、最近は洗わせてくれなくなった。


スケアリー

・三章の登場人物。

・もともとはリッチーの配下だったが、シルバの配下になることでリッチーの死による消滅を免れる。

・ダンジョン最奥での戦いで異次元に飛ばされる。


作者

・前書き、後書きにたびたび登場する。

・停止中に総合評価が減るどころか増えてて、なんか居た堪れなくなっている。


↓本編

 サナは微睡(まどろ)んでいた。夢の代わりに、欠けて曖昧な記憶が流れていく。

 それは、昔の話。実母の葬式が終わった翌日の、父の言葉。


 ――サナ、君だけは知っておかなくちゃならないことがある。これは、お前の母さんも知らなかったことだ。

 親父――君にとってのおじいちゃんが勇者の家系で、昔この一帯を戦で勝ち取ったというのは話したね。

 実は、魔眼は親父じゃあなくて、お袋の能力なんだ。

 魔眼の勇者の英雄譚は、みんなでたらめだ。親父は確かに勇者だった。でも、お袋は****だったんだ。

 ああ、大丈夫。見た目ではわからないよ。でも、教会にだけは行ってはいけない。あそこはお袋の血を引く私たちにとって、最も危険な場所だ。

 ……願わくば、君に先祖返りが起こらないことを。






 石造りの小屋。牢屋を思わせるような武骨な作りの部屋に、たった一つの窓から陽光が差し込んでいる。



『閃いたぞっ!』



 突然響いた念話。石でできた柱に背を預けるようにして寝ていた少女――サナは、ゆっくりと目を開けた。露わになった双眸は、右目だけが銀に染まっている。

 転生して魔眼となった体を活かし、失明した右目の代わりをしているシルバは、「不眠」のアビリティを存分に駆使して導き出した考えを、得意げに語り始めた。






 シルバの痛恨のミスによりダンジョンが地上から隔絶されてはや二日。相も変わらず、シルバたちが踏みしめている大地は雲よりも高い場所に位置しているようだった。

 一度結界を足場にして地上へ下りようと試みたが、ダンジョンの領域の境界に見えない壁が張られており、どうすることもできなかった。おそらく、ダンジョンマスターがダンジョンから出られないと言うのは、あの見えない壁のせいだろう。


 樹海の動物たちを探知の魔法を駆使して狩ることができるので食料には困らないが、それでもいきなり地上から隔絶されてしまったせいで、DPが伸び悩んでいた。

 無理もない。通常のダンジョンなら地下に土地を広げて冒険者を誘い込むなり、地上に広げて野生動物からDPを入手したり出来るのだが、この浮遊大陸は土地が限られている上に、どの方向へ領域を広げてもそこは何もない中空である。

 おまけに、DPは魔力が少ない生物からは入手しづらい。ためしに手近な猿を仕留めてみたが、DPは一しか入らない。この周辺には魔獣などは居ないため、当分大量のDPが入ることはなさそうだった。


 このままいけば死ぬ事はなさそうだが、変化のない日々が待っているだろう。地上に降りられるのも何年後になるかわからない。

 それはとても退屈な事だし、付き合ってくれたサナにも悪い。そして何より、シルバが困る。

 現在の日時を知らない以上、正確な事はわからないが、そろそろ彼女(・・)が目覚めるはずなのだ。

 この生をサナの為に使うとは言ったが、何年も拘束されるのは避けたい。


 昨夜、シルバはメニューを開いて、DPを確認した。



――――――――――――――――――――――――

名前 :魔眼の迷宮

タイプ:侵食・天空複合型

DP :43

・ダンジョン管理

・内部確認

・その他

――――――――――――――――――――――――


 森は広い。二日間の間でいくつもの命が捕食されるなり寿命を迎えるなりして吸収されたためか、DPが少しだけ増加している。


 ダンジョン内で死にさえすればDPが入るようなので、効率を考えると、自分たちで狩るより成長させて子供を産ませて寿命で死んでもらったほうが良い。

 サナと話し合った結果、浮遊大陸に生息する動植物は必要以上に殺さないことに決めた。


 ならば、ダンジョンマスターとしてシルバたちができることは何か。


 まず考えるのは、現状の打破。ダンジョンの拡張である。

 DPを消費して少しずつ下へ下へとダンジョンの領域を拡張していき、地上にさえ到達できれば入手DPが加算され、ネズミ算式にDPが増加していくはずだ。

 しかしこれは現実的な手段ではない。ダンジョンの拡張はもともと、潤沢な生命資源と定期的に訪れる侵入者から入手できるDPによって少しずつ、少しずつ行われていくものだ。必要なDPは尋常ではなく、今のDP入手ペースでは何年もかかりそうである。

 幸いなのは、天空型ダンジョンが上空域を取得する際、必要DPに補正が入ることだろうか。道化から入手した知識にある必要DPの相場、その半分近くまで下がっている。

 この分では、侵食型ダンジョンにも何か補正がありそうである。後々サナと一緒に確認をしてもいいかもしれない。


 天空型ダンジョンの恩恵をもってしても手が届かないことには変わりないが、それでも、踏み台を用意すれば届きそうな位置ではある。

 そしてその踏み台こそが、ついさっきシルバが思いついた案なのである。



「つまり、ダンジョンモンスターを育てようということ?」


『ああ、そうだ。とりあえず試験的に育ててみようぜ』



 道化の「モンスターを用心棒兼家畜にする」という言葉。そこから、知能の高いダンジョンマスターがどうやってDPを稼いでいるかの検討がついた。


 昨日の時点で、DPを使って生み出したモンスターを殺してもDPを入手できることはわかっている。入手できるDPが通常の動物の数倍から数十倍に及ぶこともだ。

 ただし、入手できるDPよりも消費するDPのほうが大きいため、生み出してそのまま殺していてはDPが赤字になってしまう。

 なので、ダンジョンモンスターを育て、その数をDPを使わずに増やすことができるのではないかと考えたのだ。



「でも、何を育てるの?」


『それはもう考えてる。……こいつだ』



 シルバがメニューを操作してサナの正面一メートルの地点に生じさせたのは、ダチョウのそれよりも大きな卵だった。白い殻の表面には毒々しい(あい)色の(まだら)模様が浮かび上がっており、どことなく邪悪な雰囲気がする。



「これは?」


『ハーピーの卵だ。ダンジョンが併合した後に項目が増えてたし、侵食型ダンジョンのモンスターだと思ったんだが』



 ――サナも知らねえってことは、二つのダンジョンの特性が合わさってできたのかもな。

 シルバはそう続けて、ハーピーについてシルバが知っていることをサナに聞かせた。


 ハーピーは、半女半鳥のモンスターだ。四肢と下半身は青い羽毛に覆われており、鳥のように空を舞うことも、人のように地を駆けることもできる。人と同等の知能を持つ一方で、非常に食欲が強いことで知られており、その矛先は人にも向けられるため、人間と共存することは出来ない。

 性別はすべてメスで、他種族との交配のほかに、無性生殖によっても繁殖することができるので、その繁殖力は非常に高い。



「シルバ。私は人間。ハーピーの食糧で、敵」


『わかってるさ。それを差し引いても、増えやすいってことはそれだけDPが貯まりやすいってことだ。それに、一匹一匹が強いから、戦力にもなる。ある程度ものを教えれば、世話する手間もかからねえだろ』


「ここは天空。戦力をそろえる理由がない。繁殖させるなら、スライムでもいい」


『……あー。そうとも言い切れねえんだよ』



 シルバが試したときは失敗したが、この浮遊大陸の高度など転移を使える魔法使いたちにとって、あってない様なものだ。魔法で一個軍隊を転移させてきたとき、サナ一人では――……戦えないこともない気がしてきたが、それはそれ。万全を期しておきたいのが、保護者気取りの本音である。



『まあ、とにかく、もう卵ができちまったんだ。増やすかどうかは育ててから決めようぜ』

 

「わかった」



 とは言ったものの、ハーピーが卵から(かえ)るまでは、何もやることがない。手持ちのDPでは卵しか産みだすことができなかったからだ。

 あとで元を取ることができるとはいえ、今できることは、卵を野生動物から守るくらいだ。


 シルバが何をして時間をつぶすか考えている間にサナは立ち上がって、魔法で掌の上に火を灯した。

 次の瞬間、火球を握り潰したかと思うと、今度は正四角錐の火を灯した。

 時間を掛けてこれを繰り返すうちに、だんだんと火は洗練され、より複雑な形の炎が生み出される。


 どうやら、サナは魔法の練習をしているらしい。彼女の場合下手にアドバイスするよりも、放っておいたほうが上達することを、シルバはダンジョンでの生活で理解していた。

 ならば、シルバも自主練に励むしかない。


 肩慣らしはもう十分だと判断したのか、サナは魔法の火を短刀に纏わりつかせて、素振りを始めた。


 シルバは心眼の力、全方位視野をオンにして、じっとサナの動きを観察した。

 不思議な感覚だ。少し試しただけでは気づかなかったが、心眼には半径約一メートル限定で透視能力が備わっているらしく、サナの後頭部を透かして背後の景色を見ることができる。

 そして、見ようと思えばサナの体内、筋線維を構成する数多(あまた)の運動単位のそれぞれの躍動まで、余すことなく「視る」ことができた。

 ただ、それを十秒でも続けると、徐々に視界が霞んでいく。限界を感じてシルバが視野を元に戻しても、焦点が合いづらかった。同時に、意識が少し遠退(とおの)くのを感じる。



「シルバ、どうしたの? 右目が霞む」


『ああ、なんでもねえ。ちょっと新しい能力を試してただけだ』



 サナにはシルバの見ていた光景が伝わらなかったようで、唐突に起こった視力の変化について不思議そうに聞いてきた。

 負荷がサナに及ばなかったことを喜ぶ反面、サナが能力の恩恵を受けられなかったことを残念に思う。


 少しすると、視力が戻ってきた。後々残りそうな後遺症はなさそうだ。

 だが、限界まで目を酷使すると、その限りではなさそうである。失明、などということにならなければいいが。


 待てよ、眼しかない生物が失明したら、どうなるんだ? …………死んだりして。


 シルバは自らのあまりに無茶苦茶な憶測を、鼻で笑った。

 目の奥がふいに、ズキリと痛んだ。






 ――異世界から来た少年は、ヒーローになりたかった。


 小さいころ憧れたヒーロー。少しでも近づきたいと、拾った箱に封印されていた魔神に願った。

 魔神の言う通りに動けば、全てが上手くいった。

 言われた通りにものを言って、言われた通りに殺した。

 特に、悪人は血縁者まで皆殺しにした。そうすればヒーローになれる気がした。

 異世界人に与えられる加護、SS(ステータス・システム)の力で、殺せば殺すほど強くなる。

 いつしか少年は勇者と呼ばれていた。

 そして、魔神はまた少年に教えてくれる。

 ウェスト大陸に、悪がいるようだ。


 悪は退治されるべきだ。

 少年が殺すべきだ。

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