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転生の軌跡~Regrowth for you~  作者: 進化する愚物
第三章 魔眼転生
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第四十八話 同調

「勝者~! サナ・グランハート~!」


 道化の宣言を聞き、サナは短刀を故魔王オルテウルから引き抜くと、スケアリーのほうを向いた。

 道化が転移陣の準備をしている。



「スケアリー」


『ん?』


「行こう」


『おう』



 サナはいつものように歩き出す。スケアリーが追いつくまでゆっくり歩き、スケアリーとともに転移陣に乗った。


 今度もまた、角の生えた魔族がいた。

 しかし、ここには魔王が二人いる。

 今まで一人ずつだった魔王が、二人いるのだ。



「彼らは五代目魔王カル&コル。紹介は……彼らが自分でしたいみたいだね。任せよう」



 二人の魔王が前に進み出て、互いに腕を組む。

 その年齢は両方十五才くらい。

 二人の顔は似通っており、一見しただけでは区別がつかない。

 唯一違うのは、二人の性別。解析してみたところ、片方が男子で、もう片方が女子だ。

 二人ともアビリティは魔法のみである。



「ワタシはカルなの。魔王よ。コルも魔王なの。二人で魔王やってたの」


「ボクはコル。魔王さ。ボクたちよく似てるでしょ? 実は血もつながってない赤の他人なのさ。それどころか性別も違うんだよ? これは運命に違いないのさ」



 魔王二人は顔を見合わせて、笑う。



「「魔王カル&コル! 推して参る!」」



 二人で左右対称になるようなポーズを決め、魔王カル&コルは駆け出した。

 その速度は龍をスピードで翻弄したサナと同程度で、瞬く間に距離を詰められる。

 魔王カルはスケアリーを、魔王コルはサナを狙って攻撃を繰り出した。


 魔王カルの攻撃は掌底。

 繰り出された掌底からは魔力によって生まれた衝撃波が放たれ、スケアリーを吹き飛ばす。


 魔王コルの攻撃は物理フィールド。

 手から結界とは異なる力場が発生、展開し、サナを強かに叩いた。


 二人が使った魔法は、そのどちらも名称魔法である。

 魔王カルは攻撃、魔王コルは防御。どちらも強力ではあるが、種がわかってしまえばなんてことはない。



『サナ。魔王カルを叩くぞ。集中的に攻撃して、あとでじっくり魔王コルを料理してやればいい』


「わかった」



 シルバの立案に賛同したサナが、スケアリーの元に駆ける。

 当然魔王コルが邪魔をしてくるが、シルバの読心の魔眼により行動を読まれ、足元に設置された小型結界に足をとられてしまう。


 これで二対一。魔王カルはわからないが、魔王コルの名称魔法は遠距離攻撃ができるタイプではない。

 魔王コルが転んで遅れた分の時間で、魔王カルを削る。

 そういう作戦だ。



「これは不味いの」


「まさにその通りなのさ」


「だから、協力するの」


「遊びの時間は終わりさ」



 二人の魔王の間で交わされる高速のやり取り。

 魔王カル&コルの魔力が増大し、指向性を持っていく。



「「名称魔法、ピンチヒッター」」



 魔王カル(・・)の両手から物理フィールドが展開し、サナとスケアリーの攻撃を防いだ。

 魔王コル(・・)の両手から衝撃波が撃ち出され、サナとスケアリーを打ち据えた。



「驚いたの? この魔法は互いの場所を入れ替える魔法なの」


「転移には劣るさ。でも、コストパフォーマンスと発動速度なら負けないさ」



 魔王カルが立っていた位置に魔王コルがいて、しゃべっている。

 魔王コルが立っていた位置に魔王カルがいて、しゃべっている。


 二人は何の前触れもなく、動き出した。


 スケアリーに攻撃しようとした魔王コルに、スケアリーを後ろに飛ばせることで対処する。

 しかし手から放たれたのは衝撃波で、後ろに飛んだスケアリーを追撃する。


 魔王カルがスケアリーに衝撃波を打った隙を狙って短剣を振り下ろしたサナ。

 いつの間にか魔王コルに入れ替わっていて、物理フィールドで防がれる。


 スケアリーの後ろに回り込んだのは魔王カル。遠距離から衝撃波を発射し、サナの注意がカルに向いた瞬間に背後のコルと入れ替わって、また衝撃波を放つ。

 サナが剣を振り下ろすころには魔王コルに入れ替わっており、物理フィールドで防がれた。


 攻撃しては入れ替わりで防がれ、攻撃されては入れ替わられの攻防が続く。



「はあっ、はあっ」


『クソッ』



 不休のアビリティを持っているスケアリーはともかく、サナに疲労が見え始めた。

 シルバ本体の魔力も減っている。

 今は休憩として結界を張っているが攻撃が続いているため、破られるのは時間の問題だろう。



『サナ、提案がある』


「提案?」


『魔王カル&コルの強さは連携にある。あの高度な連携に対応しようと思ったら、こちらも連携をとらなきゃいけない。だから、少し魔法の力を借りないか?」


「魔法って?」


『これだよ。今俺がしゃべってるやつだ』



 厳密には魔法とも違う。妖術である。



「わかった。どうやるの?」


『ちょっと待て、今送る』



 念話は一人が持っていたら相互通話が可能だ。

 そのやり方を念話でイメージとして送る。



『こう?』


『そうだ。じゃあ、反撃開始と行こうか』



 念話の利点は二つある。

 相手に会話の内容を知られないことと、情報伝達を一瞬で行えるということだ。

 つまり、今まで滞っていた情報交換を円滑に行うことによって、高度な連携を行えるようになっていた。



『右後方から敵』


『右前方とで挟み撃ちする気か。じゃあ俺は後方をやる』


『私は前方』



 サナはスケアリーと背中合わせに戦っており、警戒範囲を三百六十度から百八十度に減らしていた。

 サナの向いている位置を中央前方とし、方位を八方向に分けることで対処している。

 戦闘センスが壊滅的に足りないシルバだが、読心の魔眼によって辛うじてサナの動きに合わせることができた。



『お、後方の奴コルだ。防御しやがった』


『じゃあ前方がカル』


『たぶん同時攻撃なら片方防げないぞ』


『タイミングを合わせる』


『おうよ』



 リアルタイムで情報を共有したシルバとサナは、入れ替わりを行う魔王カル&コルに冷静に対処していく。



『一人そっちに行ったぞ』


『大丈夫。結界で防げる』


『……』


『……』



 次第に念話がなくとも己の役割がこなせるようになり、余裕ができたらサポートも加え始める。

 息の合った攻撃は魔王二人に、特に防御ができない魔王カルに傷を負わせていく。



「やりにくくなったの」


「カル、大丈夫なのさ?」


「まだまだいけるの」


「無理するのは良くないさ」


「大丈夫なの」



 魔王カル&コルの連携が、シルバたちに通用しなくなっていく。

 それに比例して防御が出来ない魔王カルの傷だけが増えていき、魔王コルの顔が悲痛になっていく。


 シルバたちの息は合い、連携の完成度が上がっていく。二人の魔王は寄り添い、魔王コルがカルを物理フィールドで護る。


 均衡がついに崩れ、飛ぶ斬撃が物理フィールドを突き破り、魔王カルを切り裂いた。



「カルッ!!」


「コル……前を向くの……」



 ばっと振り返った魔王コル。

 スケアリーが空中に多数の球体を放り投げ、地を蹴って飛び上がる。

 球体を足場に、スケアリーが不規則な軌道で飛びかかってくる。



「くううっ!!」



 魔王コルは物理フィールドで防ごうとするが、サナが斬撃の第二派を飛ばし、ガス欠気味の魔王コルが形成した物理フィールドを破る。

 スケアリーはどういう原理か手袋から人の丈ほどもある刃を突出させると、魔王コルを薙ぎ払った。



「がはっ!」


「コル……ッ!」



 スケアリーは刃を完全に手袋から出すと、その柄を握る。



「カル……」


「何なの……? コル」


「今までありがとうさ……」


「……こちらこそなの」



 二人の魔王は寄り添い、ぎゅっと目をつむる。


 スケアリーが振り下ろした刃が、紅く染まった。


<魔王カル&コルを殺害>



「勝者~! サナ・グランハート~!」


「ねえ、道化」



 ぱちぱちと拍手をする道化に、サナは問いかける。 



「ここで死んだ魔王はどうなるの?」


「それはつまり、もう一度生き返らせないのか、ということかい?」



 サナは頷く。

 道化はにこりと笑ったマスクをこちらに向けて、言った。



「生き返らせないよ。僕はエコなんて言葉が大嫌いだからね。()()()()()は受け付けないんだ」


「ふうん」



 サナは興味を無くし、短剣をケースにしまう。

 血だまりの中で沈む魔王は、手を繋いでいた。

お読みいただきありがとうございます。


カル&コル。書いてて何度もごっちゃになったキャラ。


スラムで必死に食いつなぐ女顔の少年、コル。彼はパンを盗んで逃げる途中、自分と瓜二つの少女、カルにぶつかってしまう! 超いい所のお嬢様で、自由に憧れる彼女に目を付けられたコルは、今日一日入れ替わって生活しようと提案されて!? かくして、カルとコルの入れ替わり生活が始まったのだった――!!


↑こんな感じで出会って、そのまま間違って誘拐されたコルをカルが助けたりしてるうちに、魔王までなりあがっていたとかいなかったとか。

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