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転生の軌跡~Regrowth for you~  作者: 進化する愚物
第三章 魔眼転生
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第四十六話 表情

最近、話別アクセス数なるものを知りまして、それを吟味した結果、最新五話までは前回のあらすじを残しておく事に決めました。

「ベルジーも魔王だよ。召喚魔法の使い手さ。じゃ、頑張れ!」



 道化が次の対戦相手の情報を簡単に、本当に簡単に説明し、戦いの火ぶたは切って落とされる。

 魔王ベルジーは両手を地面につけ、唱えた。



召喚(サモン)、アーミー」



 無詠唱など当たり前だといわんばかりの短い言葉とともに、闘技場の真ん中に巨大転移陣が出現する。


 わらわらと、無数のゴブリンが転移してきた。

 それぞれの手には、


 剣剣弓槍石剣ボウガン斧槍槍盾


 と、さまざまな種類の武器が握られており、小隊単位で陣形を組んでいる。


 サイドから後ろに回り込んでくるゴブリンまでおり、役割が分担されているように感じた。

 ゴブリンたちの動きは、訓練された騎士団のそれだった。

 勘弁してくれと叫びたい。


 数えられるだけで千体はいるだろうか。

 そのすべてのゴブリンが、自分のすべきことを理解し、迅速に殲滅を実行しようとしている。


 まずは斥候部隊が特攻をかけ、反応を見る。

 シルバはナイフで襲い掛かってきたゴブリンを、すべて超高圧水流で()った。


 次に盾部隊が陣形を組んでサナとスケアリーを包囲し、弓部隊が盾の間から矢を射る。ボウガンも一緒だ。

 スケアリーに迎撃を命じると、スケアリーはアビリティ「曲芸」でわかりやすいデザインの爆弾を取り出す。爆弾には火のついた導火線がついており、表面には「Illusion(イリュージョン)」と書かれていた。

 スケアリーが爆弾を新しく取り出したハンカチで隠すと、爆弾が消える。

 一拍置いて、盾部隊の包囲網の一角が爆発した。


 飛来する矢を新しく覚えた結界で防いでいたサナが、スケアリーに興味深そうな視線を送る。

 その手足は忙しなく動き、崩れた包囲網を襲撃している。


 ひと段落したサナは、前々から考案していた技術を実験してみることにした。

 握りしめた短刀に魔力を纏わせ、結界の要領で固形化する。あとは短刀のラインに沿って魔力を伸ばしていけば、即席長剣の完成だ。

 サナは即席長剣を振りかぶり、横に思い切り振りぬく。


 斬撃に魔力が形を与え、直線状に飛んでいく。

 魔王エクレルの結界を参考にした魔力変換は成功したようで、直線状にいたゴブリンすべての首と胴が泣き別れする。


 サナは成果のほどを確認すると、魔力を纏った斬撃を高速で、次々と飛ばしていく。

 二十三度目の斬撃ですべてのゴブリンが崩れ落ち、地べたで首と胴が感動の再会を果たす。

 見ると、魔王ベルジーの首もゴブリンのものに混じって転がっていた。

 本人は弱かったようだ。



「勝者~! サナ・グランハート~!」


 

 道化が試合終了の合図を出す。



「いや~。強いね~。今の魔王、集団対集団だと最強って言われてたんだよ? 本人は弱かったけど」


「どうでもいい。次に行きたい」


『おいサナ。そろそろ休もうぜ? 俺はもうクタクタだ』


「アンデッドは疲れない。道化、早く次に飛ばして」


「はいは~い!」



 またしてもシルバの意思など関係なく、転移陣は一行を次の階層へと飛ばした。


 転移した先はまたしても闘技場だ。

 円を描いて闘技場を囲う観客席の前、控室から出てきた男はやはり角が生えており、彼もまた魔王であることが窺える。

 

 もはやパターン化しだしたプロセス。

 この戦いも容易く勝利して終わるだろう。

 弱体化した魔王など成長し続けるシルバたちの敵ではない。



「この子は七代目魔王、アーリー。死霊魔法の達人だよ」



 アーリーと呼ばれた魔王は、優雅に一礼した。

 短刀を構えるサナを、まあ待ちたまえ、と制止する。



「戦う前に、すこし話をしようじゃあないか。君と一緒にいた三人の事で」


「なぜおまえがそれを知ってる?」


『サナ、耳を貸すな』



 平坦な口調で問うサナ。その雰囲気はとても穏やかではなかった。



「簡単な話だよ。私は死霊魔法が使える。その魔法でもってリッチーを生み出したなら、彼を通して墓地エリアの様子がわかる。彼に指令を出すこともね」


「まさかっ……!」


『サナッ!!』


「ああ、そのまさかだ。……そうだ、知っているかね? 死霊魔法は死ぬ瞬間さえ見ていれば、ここに死体がなくてもアンデッドが作れるんだ。よし、証拠として、デモンストレーションも兼ねて見せてあげよう」



 魔王アーリーは手を地面に着け、グイと引き上げるまねをする。

 三つの棺桶が、地の底からせり上がるように出現した。

 サナが二十七階層に埋めた、グレイブ・ディガーの亡骸が入った棺桶だ。



「墓を、暴いたのか……!」


「それは心外だな。死霊魔法使いにとって、死体の調達はいわば木剣を作るために木を伐るようなものなのだから。では、お披露目といこうか。どーれ、いくぞ──『死ねえええぇぇぇぇぇーーーーーー!』



 情報過多の念話(おおごえ)で注意を惹き、スケアリーを向かわせる。

 魔王アーリーの注意がスケアリーに向いた瞬間に、シルバは超高密度の魔力弾を連射した。


 濃密な魔力が吹き荒れ、流れ弾が地面で爆発したことによる砂塵が視界を覆う。

 スケアリーにはただ単に「アーリーを殺せ」とだけ命じてある。砂塵の中でもアンデッドであるスケアリーには関係がないはずだ。砂塵に紛れてアーリーを始末したならよし、出来なかったなら何としてでも三人の蘇生は避けなければならない。


 死霊魔法の本質は、死体から記憶を読み取り、そこから疑似的な脳を再現、作った疑似脳に体を操らせるというものだ。そこに魂など存在せず、生み出される人格は劣悪だ。


 魔王アーリーがこのまま三人を死霊魔法で蘇らせたなら、サナと親しい人間の無残な劣化コピーが三体誕生してしまう。それをサナに見せるわけにはいかない。


 しかし現実は非常である。

 砂塵が晴れたとき、魔王アーリーは悠然と立っていた。


 三体の悪霊を引き連れて。



「少し危なかったな。うむ。盾としてステルススケルトンを出しておいてよかったよ」



 不敵に嗤う魔王の足元には、体が金剛石(ダイヤモンド)のように透き通ったスケルトンと、スケアリーが力なく沈んでいる。



「スケアリーッ!」


「死霊魔法使いにアンデッドを差し向けても、無力化されるだけだと習わなかったのか? 安心したまえ。死んではいない。このアンデッドは少し興味深いのでね。実験材料に使わせてもらうよ」



 機嫌よく話している魔王アーリーの前に、三人の霊が移動する。

 その顔にはよく見覚えがあった。


 体中が欠けたエルド。

 首が不自然に曲がったヘック。

 胴のひしゃげたバニエタ。


 みんな、サナが墓に埋めた格好のままだ。



「おっと。彼らが話したいようだ。私は口を閉じよう」



 魔王は口を閉じてチャックを閉める動作をすると、一歩下がる。その顔は醜く歪んでいた。



「みんな……」


「黙れ!」



 突然バニエタの霊が怒鳴った。



「アーリー様から聞いたわ。あの時、あんなにも魔物が増えたのはあなたのせいだってね」


「君さえ現れなければ、僕らはまだ生きていたかもしれないのに。僕はバニエタと二人、幸せに暮らしていたかもしれないのに!」



 バニエタの言葉に、ヘックの霊が続く。

 その眼には狂気と、深い憎しみが宿っていた。

 彼らを消す資格は、シルバにはない。

 皆、口々に呪詛を吐いていく。

 シルバにはそれを止められない。



「お前のせいだ」


「呪ってやる」


「死んでしまえ」


「お前のせいだ」


「恨んでやる」


「消えてしまえ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「お前のせいだ」


「死ね」

 「死ね」   「死ね」

「死ね」  「死ね」  「死ね」

  「死ね」

「死ね」  「死ね」

 「死ね」「死ね」 「死ね」

「死ね」  「死ね」

「死ね」 「死ね」

 「死ね」  「死ね」

「死ね」「死ね」

「死ね」

「死ね」

「死ね」

「死ね」

「死ね」


「うるさい」


「「「は?」」」



 サナの体が消えたかのように錯覚するほど、それは素早く行われた。

 短刀に魔力を纏わせ刀身を伸ばし、足を身体強化して三人の元に移動、すれ違いざまに斬る。

 勢いを殺さず魔王アーリーの元に走り込み、反応できていない魔法使い(もやし)を断頭した。



「魔王アーリー。あなたは一つ勘違いをしている。私はこいつらに罵られようが、なんとも思わない。どうでもいい」



 アーリーは答える暇すら与えられずに、命の灯を消した。


 サナの元にスケアリーを駆けよらせる。

 サナは相変わらず無表情のままだ。


 見ると、霊たちが地に落ち、消えていくのがわかる。



「サ……ナ……ちゃん……」



 三人の霊は消えていく。

 言葉を発したのは、エルドだった。

 彼だけは、呪詛の言葉を吐いていなかった。もしかしたら、何か別の力が働いていたのかもしれない。



「ごめんな……あんなこと言って。本当は……これっぽっちも……思っちゃいねえんだ。ほかの二人も……同じだと……思う」



 エルドはサナに向かって手を伸ばす。が、その手は空を切った。

 サナはエルドの元へと歩み寄った。



「へへ、ありがとうよ……。……実をいうとな、サナちゃんは……死んだ娘に、瓜二つなんだ。五年、前の……飢饉で、母親と一緒に、衰弱しきって……死んじまった。…………………ああ、早く、会いてえなあ」



 死霊魔法は劣化コピーを作る魔法。そこに魂など存在しない。


 いや、そもそも魂とは何なのだろう。

 魂を持っていなくとも、彼はここにいる。存在しているのだ。

 エルドの残骸はサナを見て、呟いた。



「やっ……ぱり、綺麗な、目だ……」



 彼は途切れ途切れに言葉を紡いだ後、細かい粒子となって消えていく。

 サナをそれを、黙って見ていた。

 サナは相変わらず無表情のままだ。


 シルバはスケアリーを起き上がらせ、サナに寄り添わせる。

 いくら他人を寄り添わせたところで、シルバにはその温もりを感じることはできない。

 寄生のネットワークから伝わってくる「感情」という名の情報を、共有することができない。


 せめて話をしよう。それしかできることはないのだから。



『サナ、大丈夫か?』



 サナは唇を少し震わせただけで、結局何も答えなかった。



 サナは相変わらず、表情を変えることはなかった。

これを書きながら思った事。

魔王アーリーが棺桶を召還する仕草。こう、地面に手をついて引っ張り出すアレ。

人づてに聞いた話では、SPECなる映画に登場した能力者にこんなことする奴がいたらしい。

作者はSPEC見てないけど……。だっ、大丈夫だよね? かぶってないよね?


ちなみに。

死霊魔法

 死体からアンデッドを作り出す。言う事を聞かせるため、作り出したアンデッドには強力な洗脳が施される。


魔眼(傀儡)

 洗脳系のアビリティ。目視したものを意のままに操る事ができるが、自我の強い者には効果が薄い。

 同じ洗脳系のアビリティである魔眼(魅了)を吸収し、常時魅了効果が発動している。



話数に比例して、緩やかに、ゆるゆると読者数が増えていってます。

お読み頂き、ありがとうございます。

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